カルティエが大阪・関西万博を通して伝える、女性の未来。

Society & Business 2025.03.31

大阪・関西万博の開催を間近に控えた2025年3月6日、カルティエは内閣府、経済産業省や博覧会協会とともに共同出展するウーマンズ パビリオンの概要を発表した。「女性が輝けば、人類・社会全体が輝く」という理念のもと長きにわたってジェンダー平等を支持し、世界の課題に取り組んできたカルティエが万博のテーマとしたのは「ともに生き、ともに輝く未来へ」。ジェンダーの枠を超えて対話を広げ、共生と持続可能性の相互作用を考察する場を提供する。

このパビリオンでグローバル アーティスティック リードを務める舞台美術家エズ・デヴリンに話を聞いた。

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パビリオンに使われた木々は大阪近郊の山から持ち込まれ、展示終了後は自然に戻される予定。photography: VICTOR PICON © Cartier

個人の物語から普遍的な世界へ、地球規模での語り合いの場を提供

ウーマンズ パビリオンを形づくるのは2020年ドバイ国際博覧会でも大きな話題となった建築家・永山裕子による組子ファサードだ。コンパクトに解体できる建材がドバイから引き続き再利用されるほか、館の内外に植えられた木々は自然の再生サイクルの象徴として万博終了後、大阪の山々に返される予定だ。

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7,000以上のパーツからなる建物の部品はQRコードで管理されていて、ドバイとは全く異なる形状で再構築された。photography: VICTOR PICON © Cartier
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町屋を参考にしたというパビリオンは、奥へと続く細長い設計が特徴。photography: VICTOR PICON © Cartier

光、音楽、言葉を巧みに操りながら、見たことのない世界へ観客を連れ出し心を揺さぶる舞台美術家のエズ・デヴリン。ドバイ万博での英国館や、ロンドンのテートモダンの庭で繰り広げられた「カム ホーム アゲイン」は大きな反響を呼んだ。エズは今回の大阪・関西万博を「ユニークな楽器コレクション」にたとえる。「各パビリオンがさまざまな楽器として、世界という舞台で6ヶ月にわたりメッセージを発信する場です。私たちのウーマンズ パビリオンでは、ジェンダー平等に対して核心を突くような視点の転換を目指します。来場者には私的なストーリーへ導きながら内省を促し、最終的にはその体験を普遍的な世界の問題へとリンクさせます」

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建築家の永山裕子(左)とエズ・デヴリン(右)。公私共に付き合いのある二人が大阪・関西万博でもタッグを組んだ。photography: VICTOR PICON © Cartier

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来場者はパビリオンに入るとはじめに自分の名前を伝える。「名前には個人的かつ普遍的な羅針盤としての力があります。自分の名前が展示内容に反映されることで物語への没入感を高めます」。ヘッドフォンのナビゲートに従って奥へと進むと、建物を構成している三角形の幾何学模様が楕円や曲線などさまざまな形状へと変化し、3つの扉が現れる。オープニング作品はエズと映画監督の河瀬直美が共同制作した3人の女性によるショートムービーだ。続いて来場者は3つの扉のいずれかに進み、3人の女性の人生のストーリーへと入っていく。「このパビリオンは全世界の女性を代表するものですが、一つの声で女性すべてを表現するのは難しい。そこで文化や環境の異なる3名の女性を選びました」。スーダン出身の詩人でダボス会議やグラスゴー気候会議でスピーチを行った女性、24歳の気候活動家、そして日本からは小説家の吉本ばななが登場。ここでは多様なバックグラウンドをもった3人の内面を吐露した、親密で具体的な物語が展開される。

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壁に備え付けられたスピーカーに向かって自分の名前を伝える。これにより自分が物語の一部となり、緊張感を持って鑑賞することができる。photography: VICTOR PICON © Cartier
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3人の女性のストーリーへと導く扉の手前で、ショートムービーが流れる。photography: VICTOR PICON © Cartier
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下町で生まれ育った吉本ばなな。若くして成功したがゆえの葛藤や苦しみ、そして救いの体験が、愛用するメガネの展示とともに語られる。photography: ©FUMIYA SAWA
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吉本ばななの部屋は、ノスタルジーと未来的なイメージが融合した空間。photography: VICTOR PICON © Cartier

会場の中程へと進むと、天井が卵型にくり抜かれた空間が現れる。「私はこれまで日常の卵、世界の卵、宇宙の卵について考えてきました。卵の概念は世界中に存在するもので、自分が世界をどのように見ているかを象徴しています。楕円の面白いところは立つ位置によって見え方が変わる点にあります。また卵は子宮の形であり、私たちの誕生を象徴するものでもある。円は終わりがなく始まりもありません。光が周囲をゆっくりと移動するこの空間では、自分が何者でもなく、ただその光の一部であるかのような感覚に包まれるのです」

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天井にくり抜かれた卵型の空間は座る位置によって形を変える。photography: VICTOR PICON © Cartier

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最後の部屋には女性のエンパワメントに取り組んでいるライターで詩人のJJ・ボラという男性の言葉が紹介されている。「女性のアイデンティティは、当然ながら男性のアイデンティティと不可分に絡み合っています。個人的な話になりますが、最近私の夫は職を失いました。理由は彼が十分に職場にいなかったからだというのです。その原因として、私が仕事で家を空けることが多かったからだと思い当たりました。私が不在の間、夫は二人の子どもの世話に追われてキャリアを犠牲にしてしまったのだと。すると彼はこう言いました。『朝食をつくってコーヒーを入れ、子どもたちの制服を用意して学校の昼食を準備する。この一連の流れはオペラの振り付けのようなものだよ。そして子どもたちが学校へ出かけたとき、オペラは幕を閉じるんだ』。人間が種として進歩するのは、誰かのためにケア(世話)することが一つの芸術であると認識したときではないでしょうか。そこに男性・女性の区別はありません。たまたま今回は彼がケアをする側にいたというだけのことなのです」

男性もウィメンズ パビリオンに参加してもらうことが重要だとエズは言う。「働く問題を語るには、働く父親を讃え、父親が父親であることを許容しなければならないと思います」

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景観デザイナーの萩野寿也による地元の植栽を使ったガーデン。この先にWAのスペースがある。photography: VICTOR PICON © Cartier

パビリオンでは「WA」と名付けられたスペースで、来場者に話し合いの場も提供する。「参加型の出会いの場を通じたこのアプローチは、新たな目的や視点を促すいっぽうで、私たち全員を取り巻く気候や文明の危機的問題にも目を向けるきっかけとなるでしょう。ここでの体験が、個人と社会との橋渡しの場となることを願っています」

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女性と男性の社会的格差を統計的に可視化できるフロアも。マハトマ・ガンジーやヴァージニア・ウルフら著名人のメッセージも紹介される。photography: VICTOR PICON © Cartier

最後にフィガロの提唱するアールドヴィーヴルについて話題を向けるとエズは、好奇心と思いやりを大切にすることが人生を豊かにする方法の一つであると即答した。「何かに関心をもつということは、他者をより深く理解し、つながりを感じることでもあります。単に知識を追い求めることだけではなく、共感を育むことが重要ですよね。ただし事実やディテールを追い求めることに夢中になりすぎて、『なぜ』という疑問を忘れてしまうこともしばしばあります。両者を大切にすることが心と頭をつなげてくれるのだと思います」

国や性別を超えて好奇心をもち、相手に対して共感を育むことの大切さを教えてくれたエズ。社会、地域、個人が地球と共生し、環境に対してどのような責任を果たすのか、ウーマンズ パビリオンは私たち一人ひとりが向き合うきっかけを与えてくれるだろう。

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エズ・デヴリン
イギリスの現代美術家。光、音楽、言語を組み合わせた大規模な彫刻作品を制作し、深刻度を増す気候変動に関する人々の理解や行動の変化をうながす。作品はイギリスのテートモダン、サーペンタイン、V&A、バービガン、帝国戦争博物館、トラファルガー広場などに展示されている。エンターテインメントの分野では世界的アーティストやオペラの舞台演出をはじめ、2012年ロンドンオリンピックの開会式、20年ドバイ国際博覧会の英国パビリオンも手がけた。

text: Junko Kubodera

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