ものづくりに触れる金沢の旅。#02 ワークショップで、オリジナルな九谷焼を手に入れる。

Travel 2018.10.19

“工芸の集積・発信地となるポート(港)”としての都市を目指し、金沢市が2016年から開催している「金沢21世紀工芸祭」をはじめ、街を挙げてものづくりの活性化を図る試みが盛んな金沢。第1回で紹介したように、アトリエを兼ねたショップやギャラリーも多く、作り手との距離が近いのも特徴だ。彼らと言葉を交わすうち、自分にも創作欲が芽生えてくる……かも?

今回は構えず気軽にものづくりにトライすることができるスポットを2軒紹介する。歴史ある伝統工芸に親しむための、まずははじめの一歩。奥深い世界の入り口へ軽やかにいざなってくれるワークショップやイベントが多数行われている金沢。実際に自分で手を動かしてみれば、ものづくりへの眼差しも変わること請け合いだ。

クタニシールショップ/八百萬本舗

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ひがし茶屋街にほど近い、浅野川のほとりに佇む八百萬本舗。明治時代から続く金物屋をリノベーション。

“八百萬(やおろず)のヒト・モノ・コトが集まる場”を掲げ、6店舗と座敷のレンタルスペースからなる複合ショップ「八百萬本舗」。その一角に直営店を構えるのが「クタニシール」。クタニとは、360年以上の歴史を誇る石川県の伝統工芸、九谷焼を指す。九谷焼の特徴である華やかな色絵は、本来職人が手描きするもの。現代になって広まった転写という技術を、低コストと量産のためではなく、より九谷焼を身近な存在にするために活用したのがこのブランドだ。

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八百萬本舗内のクタニシールショップでは毎日ワークショップを開催。所要時間は約90分で、10時30分〜、12時30分〜、14時30分〜、16時30分〜の1日全4回/要予約。費用はうつわによって異なり、¥2,000〜3,000程度(送料別)。うつわは全6種類。対象年齢は小学5年生以上。

転写だからこそできるユニークな表現を“遊ぶ”のがクタニシール。白い九谷焼の器に九谷五彩と呼ばれる5色(赤、紺青、紫、黄、緑)に黒を加えた全6色のシールを自由に切り貼りしたのち、窯で焼成したものが約1カ月後に手元に届くという流れ。絵柄のほかに文字や数字のシールも揃い、メッセージを入れることも可能。絵心がなくても手先が器用でなくても楽しく九谷焼を“遊ぶ”ことができる、ワークショップを軸にした画期的なブランドだ。

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クタニシールのオリジナル商品も販売。転写シールならではのポップでかわいらしい絵柄にファンが多い。

店内では1点物を含むオリジナルのうつわのほか、石川県・加賀市の丸八製茶場とコラボレーションしたティーバッグ、奈良の中川政七商店と作った麻小物など関連グッズも販売。猫とねこじゃらしを描いた「ネコ・ジェラシー」シリーズなど、遊び心たっぷりの絵柄が九谷焼をぐっと身近に感じさせてくれる。「九谷焼について何も知らない」「ろくろを回したり、絵付けに挑戦するのは敷居が高い」という人も、まずはここから楽しく“はじめの一歩”を踏み出してみてはどうだろう。

クタニシールショップ/八百萬本舗
石川県金沢市尾張町2-14-20
tel:076-213-5148
営)10時〜19時
休)水
kutaniseal.com

※九谷焼への興味が湧いたら、“九谷焼のまち”能美へ足を延ばしてみよう。クタニシールの母体といえる「上出長右衛門窯」では、無料で窯元見学を受け付けている(1週間前までに要予約。平日と不定期の土曜開催)。明治12年の創業以来手描きを貫く、歴史ある窯を覗く貴重な機会だ。見学の詳細はウェブサイトで確認を。
www.choemon.com/access

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アトリエ&ギャラリー クリーヴァ

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藩政時代の風情を残し、観光スポットとしても人気の長町武家屋敷跡界隈に位置する「クリーヴァ」。入ってすぐに広がるのはショップ&カフェスペース。奥に陶芸工房、奥左側にギャラリーを備え、別棟にはモダンタイ料理レストランを併設。

「九谷焼の絵付けに挑戦してみたい!」という人におすすめなのが、築100年の蔵を改装したギャラリー/陶芸工房/ショップ&カフェ/レストランからなる「アトリエ & ギャラリー クリーヴァ」。「create=創る、clay=土(粘土)、va=場」を意味する造語「クリーヴァ」を店名に冠した、ものづくりをテーマとする複合型アート施設だ。

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陶芸工房の様子。ショップで販売するオリジナルのうつわはここから生まれる。

ものづくりの楽しさを広く伝えるべく、陶芸工房では九谷焼の絵付け体験レッスンを開催。数種類から好みのうつわを選び、コースは九谷五彩(赤、紺青、紫、黄、緑の5色を使用)、赤絵金彩(赤と金の2色を使用)、染付(藍色を使用)の3つ。「今後はうつわの種類を増やすなど、より内容を充実させていく予定。まったくの初心者やひとりでのご参加も多く、和やかな雰囲気なのでお気軽にご参加ください」とは、陶芸工房マネージャーの藤丸枝里子さん。

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九谷五彩体験の模様。所要時間は3コースとも約90分で、火〜木、土・日開催。11時〜13時〜、15時〜の1日全3回/前日までに要予約。費用はいずれも1点¥4,000(送料別)。

図案のスケッチから始まり、うつわに描き終えた後はスタッフが仕上げ作業と焼成を行い、約2カ月後に完成したものを配送。完成品を手にすれば、絵の具と仕上がりの色の違いに驚くはず。予期せぬ色みや質感との出合いも、実際に体験してみてわかるものづくりの神秘と醍醐味。

アトリエ&ギャラリー クリーヴァ
石川県金沢市長町2-6-51
tel:076-231-4756
営)11時〜17時
休)月(祝日の場合は営業し、翌日火曜休み)
creava-kanazawa.jp
※体験レッスンの最新情報はウェブサイトで確認を。

●本記事内で紹介した店舗について、掲載時の価格や営業時間、休業日などは掲載後に変更される場合があります。最新情報は各店舗にお問い合わせください。

photos:TOMOKO OSADA (KUTANI SEAL SHOP), MARC AND PORTER (ATELIER&GALLERY CREAVA), réalisation:NAOKO MONZEN

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