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タイ・イサーン地方の、食を支える女性たち。

「タイの原風景」と呼ばれるイサーン地方。この地方の郷土料理は辛さも酸味も強烈で、タイ料理の真髄が凝縮されている。イサーン地方の食をめぐる旅の後編は、イサーンの食文化を支える女性たちをフィーチャー。

特集 / February 18, 2019

コミュニティをサポートする、女性オーナーの小さな食堂。

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カオヤイの素敵な食堂、「アニ・ヤン・コー・ダイ・バイ・ペン・ラオ」。シンガポールにオープンした新店はミシュランの星を獲得した。

イサーンの食事情をめぐる中で印象的だったのは、真摯に食と向き合う女性たちの存在だ。例えばこの人、南イサーンのナコーンラーチャシーマー県カオヤイの食堂、「ペン・ラオ」のオーナー、パンチャナさん。自身もイサーン地方の出身で、子どもの頃からイサーンの味覚に慣れ親しんだ。10年前、カオヤイの地元コミュニティを盛り上げるため、イサーン料理に特化した食堂をスタートさせた。
「当時、カオヤイはツーリストにほとんど無視されていたから、活気があるのは1年でほんの4ヶ月だけ。残り8カ月間のオフシーズンをなんとか乗り切るためにボランティア・システムを採用したの」と、パンチャナさん。
 パンチャナさんが始めたのは、カオヤイでの滞在先を提供する代わりに日中はレストランで働いてもらうという、WWOOFの食堂版のような仕組み作りだ。まずはスタッフの家族や友人に声をかけてみたところ、これがうまく機能した。

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料理を教えてくれた「アニ・ヤン・コー・ダイ・バイ・ペン・ラオ」の女性ヘッドシェフ、マイミーさん。

 現在、バンコクやシンガポールなど全部で5店舗を展開する「ペン・ラオ」。地元に根ざした小さな食堂はシニアの活躍の場としても機能しており、スタッフのおよそ20%が高齢者だといい、70代の女性も積極的に店舗運営に参加している。かつて職業訓練を行った子どもたちも次々と独り立ちし、シンガポールで活躍するスタッフもいるとか。昨年からは新しいプロジェクトとして聴覚障害者のためのトレーニング制度がスタート。食堂で働いてもらうかわりに、聴覚障害者が自立できるよう、手話のトレーニングを無料提供するという。

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「アニ・ヤン・コー・ダイ・バイ・ペン・ラオ」の定番メニュー。上から時計回りに、「トムセップ」、「ラープムー(豚挽き肉のスパイシーサラダ)」、イサーンの名物焼きそばの「パッ・ミー・コラート」。

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カー、レモングラス、バイマックルーなど、イサーン地方に特徴的なハーブがずらり。

 パンチャナさん曰く、イサーン料理の面白さは「シンプルな食材&調味料使い、盛りだくさんのハーブで醸す滋味深さ。発酵商品と川魚の味わい」にあるという。
「タイ全土の1/3を占めるイサーンには3,000万人以上もの人が暮らしているの。資源に恵まれていないから生活レベルは高くないけれど、農村地帯ゆえに豊かな食材があり、食文化はどのエリアよりも発達しています。ハーブや食材の使い方も独特なイサーン料理はタイ料理の中でも特別な存在だから、世界中の人々に発信したいと思って」
 
「イサーンといえば発酵食品。中でも『プラーラー』(川魚を使ったアンチョビのような調味料)は私たちの故郷の味わい。ぜひ、試してほしいわ」

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オーナーのパンチャナさん(左)と共同経営者のジンダヌンさん(右)。福島の食品メーカーで働いた経験のあるジンダヌンさんは日本語がペラペラ。

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都市と農園をつなぐファーミング・リトリート。

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プーさん(右端)とメキン一家。

 中部イサーンのコーンケーンに、女性オーナーが営むオーガニックファームがある。大学で政治学を学んでいたプーさんは、食をきっかけに有機農法に興味を持つようになった。いつかは自分のオーガニックファームを持ちたいと、ロンドンで働きながら資金を貯め、3年前、サトウキビ畑だった土地を開墾して5エーカーの「メキン・ファーム」を立ち上げた。両親、妹と営む小さな農場だ。
「サトウキビを育てていた土地というだけあって、土壌が乾燥していて野菜の栽培に適していなかったの。3年かけて土壌を改良して、昨年からようやく実をつけるようになったわ」

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少量多品目のハーブや野菜を育てる農園。

「メキン・ファーム」のコンセプトは、野菜、ハーブ、エディブルフラワーなど、料理に使えるものだけを少量多品目で栽培する「スモール・キッチン」。香りのあるハーブやチリを効果的に配して植物本来の特性を生かして害虫を防ぐ、水やエネルギーを循環させるなど、パーマカルチャーを意識したエコシステムを取り入れているが、プーさん自身が最も影響を受けたのは、ラーマ9世がかつて農村開発プロジェクトで採用したセオリーだとか。

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放し飼いで野性味たっぷりに育てられている「メキン・ファーム」のニワトリ。

 ファームでは、プーさん一家が飼育しているフリーレンジの鶏の「ガイヤーン」と自家製のもち米、旬の採りたて野菜の「ソムタム」のランチを振舞ってもらった。昨年からはこのような収穫とランチ、あるいは食と収穫体験をセットにしたファーミング・リトリートのプログラムを、欧米や日本からのツーリストへ向けて提供している。敷地内に張られたアウトドアテントでの宿泊も可能だ。タイではオーガニック食品の需要はそれほど高くなく、国内の認証機関も整備されていないが、海外のツーリスト、特に欧米と日本からの注目度が高いそう。

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プーさんが振舞ってくれた、自家製野菜のソムタムとガイヤーン、バタフライピーのハーブドリンク。パンダンリーフの中にはカオチャオが。

「このファームを、都市と農園をつなぐ体験型プラットフォームにしていきたい」というプーさんは、アグリツーリズムという視点でイサーン地方に新たしいムーブメントを巻き起こそうとしている。
「ヘルシーな体と心って、食が育んでくれるもの。安心・安全な食材と食体験をたくさんの人に提供して、周辺の人たちの食に対する意識を変えていきたい。そしていつかは、コーンケーンを農と食文化の聖地に!」

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自家栽培の野菜とフリーレンジチキンの卵の農園ランチ。

Un Yang Kor Dai by Pen Lao
アニ・ヤン・コー・ダイ・バイ・ペン・ラオ
128/3 5Tambon Mu Si, Chang Wat Nakhon Ratchasima 30130 Thailand
+66-83-461-3666
営)7:30〜22:00
Mekin Farm
メキン・ファーム
Unnamed Road, Chorakhe, Nong Rua, Khon Kaen,40240 Thailand
+66-61-695-9926
https://www.facebook.com/mekinfarmkhonkaen/

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photos : MIDORI YAMASHITA realisation : RYOKO KURAISHI collaboration : マンゴツリージャパン、タイ国政府観光庁

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