「いぬパリ」を連載中のフォトグラファー、吉田パンダがオーストリアの首都ウィーンへ。音楽をテーマに、街の魅力的なスポットを散策。第3回では、ベートーヴェンゆかりの品や資料が見られる博物館や、ベートーヴェンが滞在した場所としても知られるホイリゲ(ワイン酒場)へ!
こんにちは、吉田パンダです。まずは温かいコーヒーでもどうぞ。銀のトレイにのせて出されるところとか、後ろのソファの色とか、昭和感ありませんか? 常々“ウィーンはヨーロッパの昭和”と言っているのは、このあたりのレトロ感からです(吉田パンダ調べ)。ちなみにウィーンのカフェで頼むもの私的第1位といえば、「メランジュ」。エスプレッソに同量のミルクとミルクの泡をのせたもの。カプチーノと同じなんですが、ほかの場所で飲むコーヒーと何か違うんです。そう、香りのリズムがワルツだからかな、、←出ました、言いたいだけ。
Dorotheergasse 6, 1010 Wien
tel:+43 (0)1 512 82 30
営)8時~24時(月~木) 8時~翌1時(金、土) 10時~24時(日、祝)
www.hawelka.at/cafe/de
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さて、今回はトラムに乗ってウィーン郊外(現在は19区)、ハイリゲンシュタットにあるベートーヴェン博物館(Beethoven Museum)へ参りましょう。
当時は温泉保養地だったこの一帯には、自然が多く残されています。耳を澄ませば、木漏れ日の中を歩く黒いロングコートにもじゃもじゃ頭、「田園」のメロディを口ずさむあの人に逢えるかもしれません、、。
博物館は閑静な住宅街の一角に。ベートーヴェンは、難聴の症状を相談した医者からハイリゲンシュタットでの療養を勧められて、1802年の4月から10月にかけてこの地で過ごしています。
気持ちのよい中庭。展示は6つの部屋に分かれていて、時系列の流れでベートーヴェンの生涯を資料や直筆の楽譜(コピー)とともに、追体験することができます。
ベートーヴェンと同時代のピアノ。聴力の衰えをカバーするために、大きな補聴装置が蓋に取り付けられています。
当時この部屋にピアノがあったわけではありませんが、ベートーヴェンがこの場所に暮らしていた時も、窓からこうして冬の陽が床に差していたのかと思うと、もうワタシの胸は、いまにも月光ソナタ←日本語になってないから。
そして、こちらは本物のベートーヴェンの髪の毛。ガイドさんの説明によれば、当時のウィーンで非常に人気があったベートーヴェンは死後、髪の毛も含め身の回りのものすべて「これはベートーヴェンの〇〇」と売られていたらしく、ニセモノの毛髪まで出回っていたそうです。まさに聖遺物ですね。
ふたりの弟たちに宛てて書かれた、有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」のコピー。もちろん、ベートーヴェンが一向に回復しない難聴の症状に絶望して書いた遺書(実際は「芸術のために踏みとどまった」と書かれている)があることは知っていましたが、その全文を読んだことはありませんでした。皆さんは何が書かれているか、ご存知ですか? 自分はこの連載を書くにあたって、実は初めて内容を知りました←ええーーっ、いまさら!?
『ベートーヴェンの生涯』を書いたフランスの作家、ロマン・ロランが全文を紹介していて、それを訳したものが青空文庫にあったので、こちらにリンクを置いておきます。短いので、ぜひ参照してみてください。もうね、涙なしには読めませんよ!奥さん!!ああ、なんてことだ!!ルートヴィヒ!!←馴れ馴れしくなってきたよ、オイ。
いろいろな肖像画や、ベートーヴェンの人となりがわかる知人や弟子の証言、身の回りの愛用品など、ベートーヴェンワールド全体を見て回るにはかなりの時間がかかると思いますので、ゆっくり時間が取れる時にいらしてください。
Probusgasse 6, 1190 Wien
tel:+43 (0)1 50 58 74 7 85173
営)10時~13時、14時~18時(火~日、祝) 10時~13時(12月24日、12月31日)
休)1月1日、5月1日、12月25日、月曜日の祝日
入場料金:7ユーロ(毎月第1日曜は入場無料)
www.wienmuseum.at/en/locations/beethoven-museum
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生涯に60回以上も引越しをした、ベートーヴェン。このハイリゲンシュタットの中でも、あちこちに住んでいます。これから向かうホイリゲもそのひとつ。
着きました。1817年の夏にベートーヴェンが滞在していた場所としても知られるホイリゲ、「マイヤー・アム・プファールプラッツ(Mayer am Pfarrplatz)」の入り口。
石畳、屋根の代わりにブドウの葉。
「ホイリゲ」とは「今年の」という意味で、もともとワインの造り手が新酒をつまみとともに出していたことに端を発します。ログハウスを思わせるような建物に、表のテーブルには赤いタータンチェックのクロス。ドイツ語圏的可愛さに胸打たれますね。
グリュース・ゴット、マダム。赤いシャツがお似合いですね。ハムと唐揚げシルブプレビッテ←何語だよ。
さあ、飲みましょう。オーストリア、揚げ物大国万歳! これと地酒の白ワイン、グリューナー・フェルトリナーの似合うこと。ベートーヴェンもワインが大好きだったそう。ここで新酒を嗜んだのでしょうか。
白もおいしかったけど、特に印象に残ったのがこのロゼ。品種はピノノワール。冷涼ピノの可愛さみたいなものがとても好みで、まさに初恋ワインです。ロゼは恋の味。
オレンジ色の光の中、見上げる空が蒼く染まる頃、君とホイリゲで待ち合わせ。
というわけで、待ち合わせに現れたのはおじさんコンビ。何気にギターは13弦?「喜びは果てもなくぅ〜♬酒と女と歌声でぇ〜♬」ハー、コリャコリャ。よし、パンダさんボトルもう1本追加しちゃうよ。こうして、ウィーンの夜は更けていったとさ、、。旅の写真日記も次回で最終回、ビオマルシェにカフェ、ホテルにB級グルメと、ウィーンの街歩きをご紹介する予定です。どうぞお楽しみに。
Pfarrplatz 2, 1190 Wien
tel:+43 (0)1 370 12 87
営)16時~24時(月~土) 12時~24時(日、祝)
www.pfarrplatz.at/en
ワインショップ
https://shop.pfarrplatz.com/en
※日本から電話をかける場合、オーストリアの国番号43の後、市外局番の最初の0を取ります。オーストリア国内では掲載どおり、かけてください。
※掲載店の営業時間、定休日、商品の価格などは取材時と異なる場合もありますので、ご了承ください。
※ウィーンまではオーストリア航空の成田発直行便で約12時間。(2020年は3月14日から運航開始)
オーストリア航空
www.austrian.com
●取材協力:ウィーン市観光局
www.wien.info/ja
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#02 ホテル・ベートーヴェンからピアノサロン、夢のオペラ座へ。
吉田パンダの「いぬパリ」
photos et texte : PANDA YOSHIDA
写真家。長年住んだパリを離れ、現在フランスはノルマンディー地方にて、犬猫ハリネズミと暮らしている。庭づくりは挫折中。木漏れ日とワインが好きで夢想家、趣味はピアノ。著書に『いぬパリ』(CCCメディアハウス刊)がある。instagramは@taisukeyoshida