ウイルスと闘う世界のいま。#15 病院やスモールビジネスを支援する、アーティストたち。
Travel 2020.04.23
文/長谷川安曇(在ニューヨークライター)
新型コロナウイルス感染者数の増加が鈍化してきたニューヨーク。アンドリュー・クオモ州知事は経済活動の再開に向けたプランを練っていると発表し、ロックダウンが5月15日以降も延長されるか、注目が集まっている。依然として、新たな感染者数は多いものの、少しだけ光が見えてきたように感じる。
私が住むブルックリンの若者たちは、ルーフトップを新たな「スタジオ」として活用し始めたようで、屋根の上でさまざまなことに従事しているのが窓から伺える。
まずは読書。ここ最近は気温が上がってきたので、日向ぼっこしながらの読書は気持ち良さそうだ。続いてヨガ。ストレスが溜まりがちなロックダウン生活では、これも納得。ただ、隣人は音楽を大音量で流しながらのヨガを嗜む。こちらとしてはちょっとうるさいものの、ただでさえ不安なパンデミック状況下なので許したい。
そして「新しい」のが散歩だ。エクササイズや散歩は、ソーシャルディスタンシングを守れば許可されているが、近所の若者は屋根の上で「散歩」をすることにしたらしく、毎日、屋根の四つ角を回るように、かなり長い間ぐるぐる歩いている。彼が「ターン」をするたびに姿が視界に入ってきて、少しおかしいけれど、最近の若者はちゃんとソーシャルディスタンシングを守ってえらいなと感心する。ただ、そこはブルックリン。近所の人々はみんな顔見知りだったりするので、屋根の上同士、お互いを見つけては、ほぼ叫び声でおしゃべり。会話は全部丸聞こえ。これもちょっとうるさいけど、外出していないことには変わらないので、エライ!
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また、病院やスモールビジネスをサポートしようとする動きも活発だ。クイーンズ区のエルムハースト総合病院をサポートするためのチャリティープロジェクト、「Pictures for Elmhurst(ピクチャーズ・フォー・エルムハースト)」が、4月20日まで開催。同病院は多くの新型コロナウイルスの患者を抱え、対応に追われている。187名のフォトグラファーが立ち上がり、全作品のプリントを1枚150ドルで販売し、売り上げ金をエルムハースト総合病院に寄付する。フォトグラファーのなかには、ペトラ・コリンズやチャド・ムーア、デイヴィッド・リンチなどそうそうたる面子が含まれている。プロジェクト終了時点で138万ドル(約1億5000万円)も集まったという。
クロエ・セヴィニーを写した、ブリアナ・カポージの作品。photo: Brianna Capozzi Courtesy of Pictures for Elmhurst
世界的に人気なフォトグラファー、ペトラ・コリンズの写真。photo : Petra Collins Courtesy of Pictures for Elmhurst
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「Merch Aid(マーチ・エイド)」は、ニューヨーク市内にある12件のローカル小売店のため、12人のデザイナーやアーティストがTシャツとエコバッグをデザインしたプロジェクト。ロックダウンが続くなか、スモールビジネスは窮地に追いやられ、このままでは閉店を余儀なくされてしまう。80年代から続く、チャイナタウンのコーヒーショップ「New Kam Hing Coffee Shop(ニュー・カム・ヒン・コーヒー・ショップ)」や、クイーンズ地区にある「Astoria Bookshop(アストリア・ブックショップ)」のため、マルチに活躍するデビー・ビルマンや、ダウンタウンのアートシーンの中心人物であるクロエ・ワイズなどがデザインを提供。すべてのシリーズが完売し、この収益は全額が小売店に寄付される。
地元の人々に長い間愛されてきた、スモールローカルビジネスをサポートするため、デザイナーやアーティストがデザインを提供。ロックダウン中で臨時休業しているが、オンラインでサポートできるシステムはうれしい。photo : Merch Aid/Courtesy of Merch Aid
パンデミック状況下で誰もがつらい思いをしているが、ソーシャルディスタンシングをちゃんと守る若者や、誰かをサポートしようと立ち上がるアーティストに心が温まる。
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texte : AZUMI HASEGAWA, title photo : alamy/amanaimages