ウイルスと闘う世界のいま。#09 ニューヨーク州のクオモ知事に期待が高まる。
Travel 2020.04.03
文・写真/長谷川安曇(在ニューヨークライター)
新型コロナウイルスの感染者が急増しているニューヨーク州。3月30日には米海軍病院船「コンフォート」がニューヨーク市の港に到着した。船体には約1,000床が設置され、新型コロナウイルス以外の患者を受け入れる。またセントラルパークにも仮設テントが張られ、68床を備えた臨時病院に。こちらは新型コロナウイルスの患者を受け入れる。
タイムアウト誌は一時的に、ロゴを「タイムイン」に変更。
この未曾有の危機下で、人気が急上昇しているのが、ニューヨーク州知事のアンドリュー・クオモ(民主党)だ。新型コロナウイルスへの対応が評価され、ニューヨークのシエナ大学研究所が行なった世論調査(3月30日発表)によると、87%がクオモ知事の対応を評価すると回答。ドナルド・トランプ大統領に対する支持は41%だった。
毎日開かれている記者会見で、感染者数や検査数、入院患者数、集中治療室にいる人数などのデータを発表し、解説。パワーポイントを用いた詳細やまとめがテレビの画面に映るので、非常にわかりやすい。コメントは明確で、口調は厳しいが、頼りになる印象だ。同州のロックダウン発表時には、混乱を招くことは認め「私が全責任を取る。不満や他人を非難したい気持ち、苦情があれば、私を非難してほしい。私以外にこの決定に責任がある人物はいない」と、はっきりと述べた。
ソーシャルディスタンシング(社会的距離を保つこと)に沿った、定例会見の様子。
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「パンデミック・ダディ」と言うニックネームまで付いたが、それまでのクオモ知事のイメージはタフでオールドスクールだった。ニューヨーク市のクイーンズ区の出身で、イタリア系。現在62歳だ。2011年からニューヨーク州知事を務め、同性愛者の結婚を合法化した。父親のマリオ・クオモも3期務めたニューヨーク州知事である。
5人きょうだいの長男で、末っ子のクリス・クオモはCNNのニュースアンカー。クリスとの若干子どもっぽいやりとりは有名で、CNNでもクリスがクオモ知事にインタビューする際に、「お母さんに電話しろ」と言うと、「さっきしたばかり。ちなみに俺はお母さんのいちばんのお気に入りで、お前は2番目だ」とジョークを返す場面も。
ちなみにクリスは、長男が州知事として活躍する傍ら、映画「ゴッドファーザー」シリースのダメな次男にたとえられて、「フレド」と呼ばれた際に激昂したエピソードも(イタリア系にとってはものすごい侮辱なんだとか)。この一件に対して、トランプ大統領は「俺から見てもクリスはフレド。真実とはつらいもの」とツイート。個人的にはクリスがフレドだとは決して思わない。ハンサムでカリスマ性があり、悲しいニュースをリポートする時には涙ぐむような、思いやりのある人格だ(と、うかがえる)。3月末に新型コロナウイルスに自身も感染し、CNNのニュースを自宅の地下室からリポートした。そんな弟をクオモ知事は定例会見で讃えた。
定例会見で話すアンドリュークオモ州知事(左)とクリス・クオモ(右)の写真。弟に対して「アイラブユー」と伝えるところも◎。
見事な手腕の発揮したクオモ知事に対して、次期大統領の呼び声も高い。各メディアは一斉に「クオモは次期大統領に立候補すべきだ」と報じ、クリスがCNNの番組でインタビューするも本人は否定。民主党内の動きはまだわからないけど、このパンデミック下にリーダーが存在するのは、心強いこと。アンドリュー・クオモ州知事に期待したい。
ソーシャルディスタンシングにのっとりピザ店に並ぶ人々。
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texte et photos : AZUMI HASEGAWA, title photo : alamy/amanaimages