Paris City Guide - Eat Restaurant

パリのグルメ速報! 幸福感をもたらすおいしい食事を、9区のレストラン「アカチャ」で。

2026.10.29

パリ滞在中、レストラン選びは間違いたくないと誰もが思うはず。とは言え、おいしかった!と幸せな気持ちの笑顔で後にできる店を見つけるのは簡単ではない。だから、9月に正式オープンしたレストラン「Akatcha(アカチャ)」はとても貴重な存在だ。料理は裏に秘めたハイレヴェルの技術をひけらかすことなく、誠実なおいしさが魅力で、サービスもとても感じが良い。

シェフは誰?と気になるところだ。9区のヴィクトール・マセ通りで人気のワインバー「228 Litres」は、ワインだけでなくお料理もとてもおいしい!という評判だった。そこで料理を担当していたのが、いまアカチャで腕をふるっているシェフの樋渡直久(ナオヒサ・ヒワタシ)である。彼の腕前はワインバーの料理を超えるもの。バーのオーナーの3人組が彼と共同でガストロノミー・レストランのAkatcha(アカチャ)を開いたのだ。ちなみに樋渡シェフは2023年に閉店した話題のレストラン「Abri」のエグゼクティブ・シェフを務めていた人物である。その彼の料理、それに続くミシュラン1つ星のレストラン「Granite」経由のシェフ・パティシエ狭間絵里(エリ・ハザマ)のデザートを味わうことなくパリ滞在を終えてしまうことのないように。

左:店名にたがわず赤茶色の外観だ。 右:最強の美食コンビ、シェフパティシエの狭間絵里(右)とシェフの樋渡直久。photography: 左 Mariko Omura、右 Haejo Nam

食事はコースメニューのみで、ランチタイム(水〜金)は48ユーロ、ヴェジタリアンメニューも48ユーロ。ディナー(月〜金)はデギュスタシオンメニュー72ユーロだ。どれにもワインのペアリングが可能。アカチャではテーブルにつくと、革表紙の立派なワインメニューが登場する。近々リストには700種が揃うという。ペアリングではなくワインメニューから選ぶもよし、もちろんワインなしでも、食事のおいしさに変わりはない。もし、1杯ぐらいあってもいいかな、と思ったらソムリエに相談を。肉にも魚にも合うワインを一杯!という面倒なリクエストにも、素晴らしいチョイスをしてくれる。

左:ガストロノミーレストランといっても、カジュアルなインテリア。居心地の良い空間だ。 右:9区のヴィクトール・マセ通りにLa Cave Pigalle、228 Litres も経営するピエール、ルイ、ロビンのトリオ。グルメファンはシェフを信頼するこのトリオに感謝を! photography: Haejo Nam

食材と料理に対するリスペクトと愛情を感じさせるシェフの料理。一皿一皿に素材のセレクションへの拘り、調理法の完璧さ、それに加えて食材の組み合わせの妙がある。料理が登場するごとになされる複雑な情報には驚きを覚えずに入られいないけれど、口の中で料理が奏でるハーモニーに驚きは喜びに変わる。

ある日のランチメニューから、アミューズブーシュ3種。手前は梅干しのように見える冷たいほうじ茶とジンを包んだ発酵リンゴの球体、後方左はカボチャとゴルゴンゾーラのタルトレット、後方右は海藻のチュロスだ。photography: Mariko Omura
左:コースの一皿目。イケじめしたマスのグラヴラックス、カリフラワーのクリームとざくろの煮詰め。深い味わいの魚の塩漬けが色鮮やかに登場。 右:トウモロコシとスペルト小麦のパンに合わせる、シェフパティシエによる発酵ぶどうのパウダーをまぶしたバター。photography: Mariko Omura
2皿目は2品からのチョイス。オイスターリーフが味わいを添えるシャンパンのムースに囲まれた牡蠣のプランチャ(下)。あるいはプラス25ユーロで甲殻類ならではの甘い香りと新鮮な素材ならではの食感がたまらないブルターニュ産のブルー・ロブスター、リゾット添え(上)。これはオシェトラ・キャビアを乗せたロブスターのジュレとアーティチョークのクリームに浸して。photography: Mariko Omura
3皿目も2品からのチョイス。左は、キノコのコンソメの中にグリルした舞茸を乗せたタラ。上に乗っているのは食感が快適なアマランサスの葉。添えられる柚子胡椒をコンソメに適量溶き入れて味わう。右は、高品質のChallansの小鴨。古代麦のリゾットが下に、ココとシトロネルと鴨汁のムース添え。アニス風味のアガスターシェの葉が超マッチ。photography: Mariko Omura

4皿目となるシェフパティシエ狭間絵里によるデザートは「レーズン」だ。ぶどうの搾りかすの活用やローリエのアイスクリームとの組み合わせなどで、レーズンの旨みを生かしたデザートだ。ぶどうの粒を描いた透明の飴細工がとてもチャーミング。テーブルに登場した瞬間その愛らしさにノックアウトされる。いまの季節、昼夜ともにデザートはこれ。ただし、プラス14ユーロで「チョコレート」を追加することが可能。デサート2品?とためらうのは時間の無駄。彼女の経歴を知ったら、これを食べずには食事が終わらないと思うはずだ。彼女はフランスで製菓修行後、日本でピエール・エルメ・パリ青山店で働き、シュガーアートのコンクールに出場し、またカカオ豆からチョコレートを扱う技術も学び……。樋渡シェフの料理と同じく、素材を生かした繊細で丁寧な仕事が生きたデザートだ。アカチャに来たのであれば、是非とも彼女の「チョコレート」でコースを締めくくろう。なお食後のカフェには忘れがたい食感のホームメイドのチョコレート・マシュマロが添えられる。

次はヴェジタリアンメニューのランチを試してみようか? などと、アカチャは再び訪れたくなるレストランだ。

左:淡いグリーンのローリエのアイスクリームを隠したピンク色のデザート「レーズン」。ぶどうのアイスクリームやブドウのエマルジョン、赤ワインのソースとブドウづくしだ。 右:「チョコレート」はチョコレート・ムースと単に片付けられない絶品。カシスのシャーベット、レッドフルーツとティーのアイスクリーム、レッドフルーツのコンポート、チョコレートのクランブルなど様々な食感が口の中で一体となり軽やかなハーモニーを生む。photography: Mariko Omura

Akatcha
5, rue Louise-Emilie de La Tour d’Auvergne
75009 Paris
営)19:00〜21:30(月・火)、12:00〜13:30、19:00〜21:30(水~金)
休)月・火のランチ/土・日
https://www.akatcha.com/

大村 真理子

madameFIGARO.jpコントリビューティング・エディター

東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。2006年から「フィガロジャポン」パリ支局長を務めた後、フリーエディター活動を再開。主な著書は『とっておきパリ左岸ガイド』(玉村豊男氏と共著/中央公論社刊)、『パリ・オペラ座バレエ物語』(CCCメディアハウス刊)。

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