東京美的デザイン空間案内。 過去と未来が美しく調和する、ビュリーの特別な空間。
Beauty 2018.06.28
建築、内装、そこで働く人が作り出す、美しい空間。そこに足を運べば、ショッピングだけではない特別な体験ができる。 パリ発のオフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーの東京1号店には、いつまでも浸っていたくなる特別な空気が流れている。
いにしえとスーパーモダン、パリと東京、ふたつをひとつに。
オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー本店
実際訪れると2枚の写真ではないことに驚き、魅了される。歴史を感じる重厚な空間とモダンなコンクリート空間という対照的で異質な要素を、キャビネットの扉とコンクリートの窓枠のアーチがつなぐ。
1803年創業のパリの総合美容薬局、オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー。現在、世界7都市にある店はいずれも遠い時代へとイメージトリップさせてくれる場所。なかでも日本1号店の東京の本店は特別。クラシカルな要素と、無機質で植物工場のような時代もスタイルもかけ離れた要素が、唐突に貼り合わさった空間は風変わり。しかし奇をてらっているわけじゃない。過去への眼差しと未来への眼差しをどちらも大切にするビュリーのビジョンが、シンボリックに表れているのだから。
職人ごと、パリを持ち込む。
ビュリーには古いものと先進的なもの、ふたつの顔がある。古くから美容に使われてきた自然由来のオイルやクレイなどを世界各地の厳選された生産者から仕入れている商品。そして先端の美容科学をもとにビュリーが独自に開発、改良していくスキンケア商品。これらは持ち帰ることのできるビュリー。一方で、店は持ち帰ることができないビュリーだ。
「商品はもちろん、スタッフの物腰、商品を置く店という環境すべてがビュリーの世界を語るうえで大切なんです」
こう語るのは、ヴィクトワール・ドゥ・タイヤックとともにビュリーのオーナーで商品の企画からパッケージや店舗にいたるまですべてをディレクションするラムダン・トゥアミ。
窓には商品の成分に使われているアルガンの実やバオバブの枝、ラベンダーなどを植物標本のようにアクリルに閉じ込めた。
そのため、店作りには徹底してこだわった。商品を“主役”に、古くから変わらない方法で作られるオイルやパウダー類には、歴史を背負ってきたような15世紀から19世紀ヨーロッパの装飾様式を取り込んだ空間を背景にした。遠い時代の薬局を想起するように。ここにはフランス産ウォールナット材の商品棚、床に敷き詰めたイタリア製タイルなど昔と同じ技法で特注したものを運び込み、フランスの職人を呼んで取り付けた。そして先端技術を取り入れたスキンケア用品のためには、現代の東京にあるラボラトリーをイメージしたというコンクリート空間を用意した。過去と向き合い、未来を見つめるビュリーのものづくりの姿勢を雄弁に語る空間だ。
パウダーやクレイのディスプレイ容器は、台東区で明治45年から理化学用器具を作る小泉硝子製作所に別注。古い薬局のよう。
ここまで作り込む理由はほかにもある。「生産者たちが手塩にかけて作ってくれたものを、最も美しい環境で見せたいから」と、ラムダンがウィンクしながら話してくれた。
購入した商品にはスタッフが西洋カリグラフィで名前を記してくれる。こうしたサービスもビュリーの世界を作る要素。
この思いが、5月にオープンする京都店にも引き継がれることだろう。
Officine Universelle Buly
東京都渋谷区恵比寿西1-25-9 B1F
営)11時~20時
無休
0120-09-1803(フリーダイヤル)
www.buly1803.com
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*『フィガロジャポン』2018年6月号より抜粋
photos : YASUYUKI TAKAGI, réalisation : KANAE HASEGAWA