笑顔を届ける口紅、ルージュ ディオールの素敵なフィルムって?

Beauty 2021.03.08

クリスチャン・ディオールが、香水ミス ディオールを発表したのは1947年。その3年後、彼はルージュを創り、1953年に世に発表した。2021年1月、新生ルージュ ディオールが発売されるにあたり、色彩としての「赤」と「口紅」、ふたつの「ルージュ」を巡るクリスチャン・ディオールの歴史と物語を、いま一度振り返りたい。まずは、この素敵なフィルムをチェックしよう。その後、ブランド ヘリテージ&パトリモニー ディレクターのフレデリック・ブードゥリエの言葉に耳を傾けて。

 

 

10年以上も前からパルファン・クリスチャン・ディオールのヘリテージの責任者を務めるフレデリック・ブードゥリエは、ルージュ ディオールの歴史を知り尽くした人。
「何よりも好きなのは、新しい資料や写真、古い時代のプロダクトなどを発見すること。昔のメゾンを知る証言者たちとの出会いもさまざまなことを教えてくれます。ヘリテージを司る仕事のおかげで、過去と自分の関係が変化しました。過去は重荷ではなく、常に前進するためのテコであり、エネルギー源なのです」
2021年1月15日、デザインも一新してアップグレードするルージュ ディオールは、まさにその歴史を糧に、前進し続けてきた伝説的なアイテム。誕生から70年、創業者クリスチャン・ディオールの時代から奏でられてきた歴史を紐解いてみよう。

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モードに、リップスティックに。クリスチャン・ディオールのルージュは、特別な物語を奏でる。左:1947年秋冬オートクチュールの「イスパファン」ドレス。白と黒を背景に、真紅のドレスが浮かびあがる。ルネ・グリュオーのイラスト。© SARL René Gruau 右:1953年、ブリティッシュ・ヴォーグに掲載されたクリスチャン・ディオール・リップスティックの広告。ルネ・グリュオーのイラスト。© SARL René Gruau

――クリスチャン・ディオールの口紅は、いつ、どのように誕生したのでしょうか。

メゾンの資料に最初の記述が登場するのは1949年12月のことですが、発表は50年7月、1950–51年秋冬コレクションのショーの時でした。色は「ルージュ ディオール」と「ローズオルキデ」の2色。350点が作られ、ブティックで販売されたか、大切な顧客に贈られたようです。
当時、クチュール コレクションの中で、ルージュ(赤)という色はすでに特別な存在でした。このショーでは、口紅に合わせて「ルージュ ディオール」と「ローズ ア レーヴル」という名前のルックも発表されています。1947年の「ニュールック」のショーで、クリスチャン・ディオールは香水「ミス ディオール」をロンチしましたが、その3年後に「コスメとクチュールはともにある」というメッセージを発信したわけです。その後3年の準備を経て53年、ようやく全8色の口紅ルージュ ディオールが完成して世界に向けて発表されました。

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左:バッグにしのばせるためのシルバー&ゴールドのスティックと、クリスタルのオベリスク形パッケージを説明した1956年の広告。Collection Christian Dior Parfums,Paris 右:1953年に発売された、オベリスク形リップスティックと14本のレフィル入りコフレ。

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――発売当時、クリスチャン・ディオールの口紅は、女性たちにどのように迎えられたのでしょう?

50年代半ば、口紅のマーケットは激しい競争下にありました。ゆえに、クリスチャン・ディオールは差別化と革新を行ったのです。バッグにしのばせるためのゴールドとシルバーのケース、簡単に付け替えられるレフィル、そして自宅のドレッサー用には、オベリスクの形をした贅沢なクリスタルのケース、というオリジナリティあふれるトリオの提案です。これによって、それまで個人的なアイテムだった口紅に対し、クリスチャン・ディオールのトリオは贈り物になりえるアイテムに昇華しました。
8色のルージュ ディオールは瞬く間に大成功をおさめ、メゾンには注文が殺到します。57年には新しい3色が加わりました。59年には29色まで増え、その後、赤を巡る24色に落ち着きます。毎年クチュールコレクションのトレンドに合わせて半分がリニューアルされましたが、バリエーションは常に、赤、ローズウッド、オレンジ系の赤。そこに、エフェクトとしての効果が取り入れられました。  

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左:ルージュ ディオール、オリジナル8色のカラーチャート。1954年。Collection Christian Dior Parfums,Paris 右:1968年のカラーパレットは24色。上が口紅、下がネールラッカー。

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ディートリッヒ、グレース・ケリー、ジョゼフィン・ベーカー、そしてエディット・ピアフなど、たくさんのスターがプライベートでも舞台でも、ルージュ ディオールを愛用。この写真は女優のジェーン・ラッセルが54年にパリを訪れた際、クリスチャン・ディオールが自らコフレをプレゼンテーション。彼女はどの色を選んだのだろうか。DR / Collection Christian Dior Parfums, Paris

――クリスチャン・ディオールは、クチュールと口紅の関係をどのように考えていたのでしょう?

50年代にディオールのショーに行くことは、まるでオペラのような本物のスペクタクルでした。光が煌めき、200から250ものルックがディオールのメイクを施したモデルたちによって披露されるショーは、ときには2時間も続きました。赤は、ショーの中に演劇性や驚きをもたらします。香水が香り、花々に埋め尽くされた会場を想像してください。ショーが終わると顧客は、やはり香水の漂う中央階段を降りていく。降りたところにブティックがありました。こうした空間の中では、色、素材と香りの調和が生まれます。
顧客やプレスに渡す文章の中で、メゾンは常に新色について触れていました。たとえば1958年の秋冬には、「新しい口紅ルージュNo.56、ルージュローズNo.52とデリケートなローズパステルNo.23は、コレクションに登場したルージュとローズに調和しています」と書かれています。この伝統はクリスチャン・ディオール亡き後も続きました。

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クリスチャン・ディオールは赤のさまざまなバリエーションを操った。1957年秋冬オートクチュールより、フィリス・ドレス。Collection Christian Dior Parfums,Paris

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1956年、モデルのリュキーに赤い布を当ててフィッティング中のクリスチャン・ディオール。Photography by Bellini.Collection musée Christian-Dior,Granville

――メゾン ディオールにとって、赤の存在は特別なものなのですね。

クリスチャン・ディオールは、赤という色の限りないバリエーションを操ることで、聖なるもの、迷信、権力、アート、リュクス、喜び、誘惑……さまざまなことを語りかけました。彼は、赤は「生命の色」だとも言っています。また、若い頃にギャラリーのディレクターだった彼は、真のカラリストでした。「明日のストリートをいきいきさせる色を想像するのが好き」という言葉も残っています。また先見的なビジネスマンでもありましたから、「女性の微笑みをドレスアップ」する口紅を夢見たと同時に、バッグ、ネックレス、帽子、手袋や香水と同じように口紅をトータルルックの一部にするという考えもあったのです。
メゾンお気に入りの赤は、クリスチャン・ディオールが亡くなった後も健在で、グランドソワレの見事なドレスによく使われました。歴代のアーティスティックディレクターもこの色を追求し、限りなくフェミニンでグラマラスな形に表現しています。2000年代初め、黒と白の非常にピュアな世界を描いたディオール・オムでさえ、エディ・スリマンがシャツや時計のデザインに赤を取り入れています。赤は常に更新される物語なのです。

――クリスチャン・ディオールの時代から今日まで、ルージュ ディオールの変わらぬエスプリとは何でしょう。

それは、今日まで1800色を送り出してきたクリエイティビティにほかなりません。セルジュ・ルタンス、ティエン、そして現在のピーター・フィリップスにいたるまで、クリスチャン・ディオールを引き継いだ色のクリエイターやアーティスティックディレクターは皆、赤のパレットの限りない側面を見事に発掘してきました。赤という色がどんなにバリエーション豊かで、幅広い可能性を持っているかには目を見張るばかりです。絶え間なく変化するモード、不安定な時代の只中で、その魔力を失うことなく何十年もの時代を生きぬき、変わらず求められるプロダクトが存在することに、私は大きな安心感を得ます。ルージュ ディオールは絶え間なく生まれ変わりながら時代を生き抜いた数少ない物語のひとつ。メゾン ディオールの使命は、これを引き継いで守り、クリスチャン・ディオールの歴史の1ページを、世界中の女性たちとともに分かち合うことです。  

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時代とともにパッケージも進化。1954年オベリスクとゴールド&シルバーのスティックの後、軽く、モダンなものが求められた60年代には、ハードプラスチック素材によるライトグレーのスティックに。68年からは、色番号に加えて、詩的な名前が登場、物語を語り、想像力を刺激するものになった。69年に登場した、アイボリー色に濃いブルーのリングがついたデザインは、87年にティエンのもとで8角形のブルー&ゴールドに変わるまで、20年近くも継続したモデル。この深みのあるブルーは、現在にいたるまでルージュ ディオールのデザインに受け継がれている。

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2021年1月15日、黒に近いほど深みのあるネイビーのリップスティックは、CDのロゴベルトをあしらって、よりクチュールなエスプリに進化。自然由来のフローラルケア成分を新たに注ぎ込み、発色はもちろん、使うたびにしなやかで美しい唇に。ルージュ ディオール 全37色 ¥4,950/パルファン・クリスチャン・ディオール

2021年2月号(2020年12月19日発売)のフィガロジャポンでは、ディオール メイクアップ クリエイティブ&イメージ ディレクター、ピーター・フィリップスのインタビューを通して、新生ルージュ ディオールの魅力を紹介しています。

●問い合わせ先:
パルファン・クリスチャン・ディオール
tel:03-3239-0618
www.dior.com

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texte : MASAE TAKATA(PARIS OFFICE)

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