知っておきたい泌尿器科の話 vol.2 女性は特に注意! 夏場の膀胱炎、予防のポイントは?

Beauty 2023.06.22

フェムケアが普及して、婦人科関連の情報は増えてきたけれど、まだあまり語られていないのが尿をつくりだす「泌尿器」の話。身近でありながら知られざる疾患やお悩みを、泌尿器科の専門医・乾将吾先生がわかりやすくお伝えします。今回は、女性にとっては身近な「膀胱炎」を詳しく解説してもらいました。


甘く見てはならない!? 膀胱炎ってどんな病気?

こんにちは。「いぬいクリニック」院長の乾将吾です。連載第2回となる今回は、泌尿器科の疾患の中でも比較的その名前が広く知られている、膀胱炎についてお話ししていこうと思います。

“お手洗いに行くタイミングを逃し、尿を我慢するとかかってしまう”などというイメージのある膀胱炎。そのメカニズムは、主に腸内の常在菌が尿道から膀胱に侵入し増殖することで、膀胱の内壁が細菌に感染して炎症を起こすところにあります。通常、尿道にいる菌は尿によって定期的に体外に流し出されますが、排尿を長時間止めてしまうと、尿道内から膀胱へと細菌が逆流して入ってきやすい状態に。だから、尿を我慢することでかかりやすくなってしまうんですね。免疫力の低下も、膀胱炎をきたす主な原因となります。睡眠不足や心身の疲れなどで抵抗力が弱まっていると、膀胱内に侵入した細菌に抵抗することができず、膀胱炎を発症しやすくなります。

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photo: shutterstock

膀胱炎は、泌尿器科で診る尿路感染症の中では患者数が多く、比較的メジャーな病気。たいして深刻ではないと思って受診しない方もおられます。ところが放置すると、細菌が尿の通り道を逆流し、尿管から腎臓に感染が及び、腎盂腎炎へいたる可能性が……。もしも菌が血中にまで入りこみ重症化すると、敗血症などの重い病気へ結びついてしまうことも。風邪をこじらせれば肺炎になってしまうように、膀胱炎も甘く見てはいけません。治りきらないままに放置すれば繰り返しやすくもあるので、しっかり治療しておきたいです。

旅行時などの短期間でも患ってしまう可能性はあります。うちのクリニックは京都という土地柄もあるかもしれませんが、海外からの観光客の方などもたまに膀胱炎の症状を訴えて来院されますよ。旅は楽しいけれど、いつもより動き回って疲れたり、慣れない土地で言語もわからず、なかなかお手洗いに行けなかったり……という事態は我々にも起こり得ることなので、ぜひ気をつけたいですね。

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女性は特に注意! 早期に気付くためのサイン。

膀胱炎は、複数の症状が同時に起こるので罹患を認知しやすく、“知らない間に症状がひどくなっていた”というようなことは少ないと思います。具体的な症状としては排尿時の痛みや、ピリピリ・ムズムズするような違和感、臭いや色の変化、また頻尿が起こる場合もあります。血尿にも要注意です。

実は膀胱炎は、女性の身体のほうがかかりやすいとご存じでしたか? 尿道が短い身体の構造上、男性と比べてどうしても外から入ってくる菌に感染しやすくなってしまうんです。風邪と同じで、冷えが厳しく免疫力が下がりやすい冬場のほうが患者数は多いのですが、熱中症と合併して発症することもあるので、夏場も気を抜けません。

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photo: shutterstock

夏の膀胱炎を予防するポイントは?

暑い日にたくさん汗をかいて熱中症ぎみの状態になっている時は、身体の中の水分が減っています。さらに体力も低下しているので、膀胱炎を併発しやすい。だから夏場の水分補給はとても大事なんですね。とはいえ単に水だけを飲んでいても、汗で流れてしまった塩分を補えず、低ナトリウム血症につながる場合があります。ぜひ、経口補水液やスポーツドリンクなどを上手に活用してください。

実は、たくさんの水分を摂取することを心がければ、軽めの膀胱炎ならそのまま治ってしまうこともあるんです。豊富な量の水分を尿として排出することで、生来のデトックス作用により菌を流してしまえるという仕組み。ぜひ、膀胱炎の治療で投薬している期間中にも、しっかり飲水していただきたいですね。

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膀胱炎になる前に、日頃から気を付けたいこと。

膀胱炎にならないためには、まず水をしっかり飲むこと、次にこまめにお手洗いへ行くこと。このふたつが主なポイントです。回数についてはあまり神経質にならなくてもよいのですが、職場環境により排尿も飲水もタイミングが難しいという方もいらっしゃるので、そのような患者さんとは改善策を話し合います。

ほかに予防法を挙げるとすれば、外部からの雑菌が入りやすい性交後には必ずお手洗いへ行くこと。あとはストッキングやタイツ、レギンス、過度な締めつけのある下着など、蒸れたり身体へのストレスが強い衣類の着用を避けることも対策の手立てに。そのほか、トイレでお尻を拭く時は前から後ろに向かってとか、適切で規則正しい食事と運動を心がけるなど……ただこれらは、膀胱炎を繰り返す患者さんにお伝えしている内容。飲水と排尿の習慣のほうが大事です。

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泌尿器科ではどんな治療を行う?

先ほども述べたように膀胱炎にはさまざまな症状があり、それだけでは膀胱炎なのかどうかが判断できません。なのでクリニックではまず尿検査をして、尿の汚れ(膿尿)や細菌尿の有無を調べます。また、どんな細菌が原因でどの抗生物質が奏功するのかを調べる尿の培養検査は、特に繰り返し膀胱炎を発症する方には有効な検査となります。また、年齢や基礎疾患の有無を加味して、超音波やCT検査を行うことも。

膀胱炎と診断したら、抗生物質の投薬治療を実施します。基礎疾患などのない単純性膀胱炎であれば、平均して5〜7日程度の抗生剤投与でほとんどの方が完治します。ただここで気をつけてほしいのが、薬を飲んで2〜3日で症状が落ち着いたとしても、処方された薬は最後まで飲み切ること! 途中でやめると、きちんと治らずに感染症をぶり返してしまう恐れが高まります。それだけでなく、細菌が耐性を獲得しやすい環境を整えてしまうことにもなりますので、抗生物質は最後まで飲み切るようにしましょう。

泌尿器科に来るのが怖い、恥ずかしいという理由で我慢してしまう人も中にはいます。でも、基本的に泌尿器科では非対面の尿検査や、問診、背中とお腹に機械を当てる超音波検査の結果を中心に診断するので、羞恥心を抱かせるような診察は特に必要ありません。問診からだけでもわかることはありますし、膀胱炎などは放置したほうがもっと危ない病気なので、違和感があればぜひ診察に来ていただきたいと思います。

次回は、意外と幅広い方が抱えるお悩みでもある「頻尿」についてレクチャーします。

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乾将吾|Shogo Inui
いぬいクリニック院長、日本泌尿器科学会認定泌尿器科専門医・指導医

2009年、京都府立医科大学卒。卒業後、同泌尿器科に入局。府立医大病院のほか京都市内の複数の病院で勤務後、在宅医療にも従事し、より広範な医療現場を経験する。2022年「いぬいクリニック」を京都の烏丸御池・二条城エリアに開院。クリニックを診療の場としてだけでなく、人々が集うコミュニティへと発展させるべく、フラットスペース「いぬいのいこい」をクリニック2階に設けワークショップなどを開催。「医療と衣料」をかかげ、インスタグラム(@inoui___)で日々のコーディネートも公開中。

いぬいクリニック
www.inucli.com


【連載】知っておきたい泌尿器科の話
第1回:毎日の尿が教えてくれる、身体の不調とは?

text: Misaki Yamashita

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