<南西フランス・ガスコーニュの古城に、ビュリーの菜園の香りを訪ねて その2> ビュリーのレ・ジャルダン・フランセ、野菜が香りに。

Beauty 2023.07.12

オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリーの新しいオー・トリプルのコレクション<レ・ジャルダン・フランセ・ドゥ・オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー>。この発表の舞台にメゾンのブランドディレクターであるヴィクトワール・ドゥ・タイヤックが選んだのは、フランス南西部ガスコーニュで彼女のファミリーが所有する14世紀建築の館だった。その庭で彼女は10年前から野菜を栽培している。

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菜園の香りが生まれるきっかけとなった、100種以上の種子を詰めた19世紀の園芸学校の木箱。楕円の小さなボックスひとつひとつに、丁寧なカリグラフィーで品種名が書かれていた。

菜園の近く、姉マリーエレーヌがデザインしたというマーガレットの花畑を背景に、ヴィクトワールは新しいコレクションについてこう語り始めた。

「夫のラムダン(共同創立者)はアンティークのコレクターで、自宅用にオフィス用にといつも何かしら掘り出しものを探しているんですよ」と。ある日、彼がボナパルト通りのブティック近くの骨董商で見つけたのは、19世紀にスイスの園芸学校が当時収穫した100近い種類の種をそれぞれ詰めた、小箱が入った大きなボックスだった。

「色さまざまな楕円の小箱にはそれぞれ美しいカリグラフィーで名前が書かれていて、まるで種の図書館という感じ。これらの種から芽が出て……と、自然の豊かさに思いを馳せました。基本的にクラシックな香水を好まないラムダンはこれらの小箱を前にして、香りの魔法で種に再び生命を授けるのはどうだろうかというアイデアが湧いたんです。“野菜の香りをメインに、フルーツやハーブなどをミックスした料理のレシピのような香水って、おもしろいんじゃないだろうか”って」

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ヴィクトワール・ドゥ・タイヤック、マーガレットの花畑を背景に。photo:Mariko Omura

コレクションの全6種の中で彼女のいちばんのお気に入りは、ビーツとルバーブという思いがけない組み合わせの香りだ。どれも、なかなか何の野菜かを当てるのは難しいけれど、その原料を知るほどに楽しさが増してくる。ひとつひとつの香り名がいささか長いのは、ペルーのトマト、アフガニスタンのニンジン、サルデーニャのパセリというように野菜それぞれの発祥の地や有名な品種が名前につけられているからだ。香りをひとつずつ紹介していこう。

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左: オー・トリプルのいつもの白いボトルではなく、菜園の香りはグリーンのボトルで。 右: レ・ジャルダン・フランセ・ドゥ・オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー オー・トリプルには6種の香り。ベトラーヴ・ディラク・エ・リュバーブ・デジプト、クレッソン・ドリオン・エ・ペルシ・ドゥ・サルデーニュ、グロゼイユ・ドゥ・スカンジナーヴ・エ・トマト・デュ・ペルー、ヴェルヴェーヌ・デザンド・エ・バジリック・ドゥリュ、コンコンブル・ダンド・エ・マント・ドゥ・シリィ、パタットドゥース・デ・カライブ・エ・キャロット・ダフガニスタン 各75ml 各¥24,200/以上 ビュリージャパン

ベトラーヴ・ディラク・エ・リュバーブ・デジプト。根菜ビーツの甘さと土の香り、それに野生ルバーブの葉の酸味が爽やかに組み合わされた思いがけないグルマンな香り。パチュリとムスクが洗練を添えている。

クレッソン・ドリオン・エ・ペルシ・ドゥ・サルデーニュの香りを、ヴィクトワールは“イノセントなグリーン”と表現する。クレソンの軽い辛みと摘みたてのパセリのパワフルな香りだ。ゼラニウム、ベチバー、コリアンダー、そしてムスクが名脇役を果たす夏の香りを。

グロゼイユ・ドゥ・スカンジナーヴ・エ・トマト・デュ・ペルーは夏そのものの香り。トマトの実、茎、葉の香りにグロゼイユの酸味が混じり合う。ほかの組み合わせに比べると驚きは小さいかもしれないけれど、爽やかさが美しい。

ヴェルヴェーヌ・デザンド・エ・バジリック・ドゥリュは、バジルを効かせたとてもフレッシュなグリーンノート。レモンのように爽やかなバーベナがシダー、ミントと混じり合い陽気で溌剌とした香りに。

ラムダンのお気に入りだというコンコンブル・ダンド・エ・マント・ドゥ・シリィは、フルーティでミネラル。暑い夏に、キュウリとミントの瑞々しいグリーンの香りは清涼をもたらしてくれる。

パタットドゥース・デ・カライブ・エ・キャロット・ダフガニスタン。ウッディでグルマンなニンジンとサツマイモの香りを肌に! スパイスとベチバーのブレンドから深みのある魅惑が匂い立ち、「その良い香りは何?」という会話が始まるカンバセーション・ピース的役割を果たす。

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左: 後方に小さく館が見える敷地内の一角でヴィクトワールがコレクションを発表した。 右: 各9ml入りの6種の香りを詰めたレ・ジャルダン・フランセ・ドゥ・オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー ラ・シゼーヌ・パルフュメ ¥16,900/ビュリージャパン

「香水の歴史において、野菜がコンポジションの一部として使われたことも過去にあったけれど、このレ・ジャルダン・フランセのように野菜が主役の香りではなかった。これは野菜を使って、バラやチュベローズのように洗練された香水を!ということから生まれたものなのです。ラムダンは料理のレシピのように野菜の組み合わせを考え、調香師と一緒に仕事をした15種の中から、最終的にこの6つの香りに絞りました。オー・トリプルの白いボトルをこのコレクションでは、インテリアにしっくりなじみそうなグリーンに。とても綺麗な色ですね」

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editing: Mariko Omura

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