パリ街歩き、おいしい寄り道。

セーヌ川岸でボブンランチから、今年最初のクープ。

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今週のパリは真夏らしい。
夏至にはどうしてもスタートさせたい!と準備していたことがあった。
どうにか日曜にそれをアップして、少しホッとした。
4月に入ったくらいからほとんどノンストップでここまできた。
1日、いや半日でいい、休みたい。
でもその時間を確保する前に、ひとまずちょっとでいい、何も考えずに過ごしたい。
それで、セーヌ川岸で日向ぼっこをしながらお昼を食べることにした。
これまで、ひとりで川岸ランチをしたことはない。
でも、誰かと一緒にという予定を組むよりも待ち合わせをするよりも前に、ぽけ〜っとしたかった。
セーヌにすぐに出られるところで、テイクアウトのできるお店。
外出規制が解除されてからサンドウィッチをよく食べているから、サンドウィッチじゃないもので、何かあるかな、と考えをめぐらせた。

このブログの番外編でも書いたCircus Bakeryの隣に、小さなさなベトナム料理屋さんがある。
その小ささゆえに、店には冷凍庫がない。冷蔵庫もとても小さい。
だから作り置きができない。その日に出す分は、その日に作っている店だ。
外出規制は緩和されたけれど、まだレストランの通常営業再開は許可されていない時期に、Circus Bakeryにオンライン注文したパンを取りに行ったある日。
「大丈夫かな、営業再開が可能になった時に再オープンするかな」と、そのベトナム料理店Fraternité(65, rue Galande75005 Paris)の様子をうかがった。
すると窓に、”vente à emporter”(お持ち帰り用販売)の張り紙があった。
それを見て、「あ〜テイクアウトをやってるんだ〜」と、心底ホッとした。
いまはもう通常営業が再開されているだろうけれど、確か元からテイクアウトも可能だった気がする、と思い、行ってみることにした。

店はちゃんと営業していて、そしてテイクアウトもやっていた。
それで、ボブン(細い米麺に牛肉やミントやタマネギが具の和え麺。揚げ春巻きがのっていることが多い)を注文。
これまで店では、揚げ春巻きを単品で食べたくて頼んでいたから、メインの麺は別のものにしてボブンを食べたことがなかった。
待っている間に、隣のCircus Bekaryに顔を出して、挨拶する。
Circusのスタッフたちも、お昼はFraternitéで食べることにしたらしい。ラストオーダーの時間を前に、注文していた。
ほどなくして、持ち帰り用のアルミ箔の容器に入ったボブンを受け取り、川沿いへ。
木陰でランチタイムの人たちがちらほらいる。
どのあたりにしようかと思っていたけれど、ひとりだし、いちばん足を運ぶことの多いなじみある場所に向かうことにした。
シテ島の先端に近い、ポン・ヌフとポン・デザールの間にあるところ。
ポン・ヌフから階段で川岸に降りると、右側は遊覧船の乗り場で、左側に行くと日向ぼっこできる。
消防隊の船を向かいに臨んで、腰を下ろすことにした。
ボブンの容器の蓋を取って、感動してしまった。
熱でミントの葉も少し変色して、一面茶色で、地味だった。
まるで家から持ってきたかのような、それは本当に、お弁当のようで、全体からものすごい手作り感があふれていた。
こんなテイクアウト、いまどきなかなかない。
私がたまたま持っていた手ぬぐいが使い古したもので、色あせていて、それを敷いてその上にまた置いたものだから、もうその風情は、お弁当以外の何物でもなかった。
まだほの温かいアルミ箔の器を手に持って、ぎっしり詰まった米麺を、具を落とさないように気をつけながらほぐして、食べた。
前の船では、消防士さんが操縦席の窓拭きをしていた。
私から15メートルくらい離れたところにいる、フランス人の若い女性が立ち上がり、帰り支度をし始めたのが目に入ってそちらに顔を向けると、彼女のすぐ近くに、鴨が2羽いた。
いつの間に!と思って観察していたら、私の前を通過して移動し、少し行ったところで止まると、仲間たちがどこからか飛んできて合流した。
日差しはどんどん強くなり、胸元に汗をかいて、あまりの暑さに身体は緩んだ。
ほんの小一時間で、少し遠出したくらいに、気持ちが解放された。
立ち上がると、腿の裏に汗をかいていたのか、服が少し湿っていた。
気温は30度まで上がっていた。


家を出る前から、デザートはクープを食べに行くつもりだった。
昨年か一昨年にもブログに上げた、Le Bac à Glacesへ。
食べるものも決まっていた。それも昨年と同じ。
店に着いて、空いていたのでテラス席に座り、スタッフの男性に「確かクープ・マドモワゼルっていったと思うんですけれど、ありますか?」と聞いたら、「わかりました」と言って店内に戻った。
すると、店のマダムが出てきて「マドモワゼルって、どれのことを言ってるかしら?」と聞かれた。
「イチゴののったクープで…」と言い始めたら「あ〜メルバね。メニューじゃなくて黒板に書いてあるやつね。今日は書いてないけれど」と言うので「あ、ないですか?」と聞いたら、「もちろん、大丈夫ですよ」と答えて行きかけ、店内に入るところで振り返り「バニラ・バニラ・フランボワーズ? それとも、バニラ・フレーズ(イチゴ)・フランボワーズ?」と聞いてきた。
「バニラ・フレーズ・フランボワーズでお願いします」
そうかアイスは3つなのだな、とその質問で思い出した。
今日もまた学校の終わる時間に差しかかり、下校途中におやつでアイスを買う親子連れが店の前に列を作った。
そして私は(というか、私が注文したクープは)、何人ものちびっ子たちから羨望の眼差しを浴びながら、溶けないうちにと急いで食べた。
食べ終わるまでずっとおいしくて、食べ終わった後味もおいしかった。

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*お知らせ1*
この街歩きの景色を動画で撮影したものを、
noteの定期購読マガジン「パリへの扉」にアップしました。
今回は無料公開です。ぜひ、ご覧ください。

*お知らせ2*
Podcastを始めました。タイトルは「今日のおいしい」。
初回はCircus Bakeryで新発売のクリーム・バンのお話です。
よかったら、一度聞いてみてください。10分ほどになります。
アプリなどは必要なく、下記のURLからページを開き、エピソードのタイトルが書かれたところの▶️をクリックしていただくと、始まります。
https://anchor.fm/akikokawamura

川村明子

文筆家
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
朝の光とマルシェ、日々の街歩きに日曜のジョギングetc、日常生活の一場面を切り取り、食と暮らしをテーマに執筆活動を行う。近著は『日曜日はプーレ・ロティ』(CCCメディアハウス刊)。


Instagram: @mlleakikonotepodcast「今日のおいしい」 、Twitter:@kawamurakikoも随時更新中。
YouTubeチャンネルを開設しました。

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