ボローニャ「森の家」暮らし

新しい季節、新しいスタート。心と身体を整え育む9月。

いつまでも続くかと思われた眩しい太陽の季節は過ぎ、日差しは和らぎ昼と夜の時間が同じくらいになるとともに、秋めいた日々がやって来た。

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9月半ばになり、たっぶり3カ月半の夏休みが終わった。長女のゆまは中3、次女みうは5年生、末っ子たえは小学校1年生に。

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イタリアでは入学式も卒業式もなく、大きなイベントだという雰囲気はまったくない。それでも初日はぴかぴかの一年生と親が教室に一緒に行き、小一時間一緒に過ごした。

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2018年に出来た新しい校舎のこの学校は、木材を全面に使用し、たくさん自然光が入る作りでとても気持ちがいい。周りに遮るものは何もないので、どの教室からも大きな窓からは丘や山々の景色が広がる。

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イタリアの小学校は5年制。この学校は1学年2クラスずつあり、ひとクラス15~22人くらい。たえの学年は27人で、生徒数が30人に達しなかったので2クラスにならず、学校でいちばん大人数のクラスとなった。それでもベテランの先生たちは工夫して教科によっては2クラスに分けて、丁寧に授業をしてくれている。

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初日、緊張して朝ごはんのテーブルで涙をぽろぽろ流していたたえ。気を取り直してその日は元気に登校。でも2日後から学校に行きたくないと言うようになり、1週間後、学校の前で断固として入らないと泣き、早速休校。幼稚園で遊んでいる方がずっと楽しかったよう。学校にちゃんと行ったらスケジュールが合う日は学校の隣にある公園に行く約束をして、なんとか毎日登校するように。上のふたりの一年生の時を思うと進んで学校に行っていたので、予想外だった。

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初日のおやつに持たせた自家製パンは他の子が持って来るおやつに比べて「恥ずかしい」と言うので、ダメかなーと思いながらおにぎり作ってあげようか?と行ったら、「うん!のりも巻いてね!」と言うので、おにぎりがおやつ。ゆまとみうにもはじめの頃はおにぎりを持たせていたけれど、誰かにからかわれたのかいつしかおにぎりを嫌がるようになった。でもたえが持って行くのを見て、特にゆまはおにぎりを持って行くように。周りでK-popやマンガが流行って、おにぎりがクールに思えたのかもしれない。良いことだ。きっとそのうちブームはすぎるけれど、いろいろ工夫して試したい。(毎日お弁当や間食を家族に作っているお母さんお父さん、ご苦労さまです!)

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子どもたちを学校に送ったら、畑に。いわゆる雑草が生えたい放題になっていたのを整備して、秋冬の野菜や土壌を豊かにする植物の苗や種を植えた。畑のあちこちに生えている2メートルを超えるヒマワリには、小鳥が種を食べに来るのでとても可愛い。

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平地の畑の雑草は手で抜いた。ノーディッグガーデニングで土の上に柔らかいコンポストを敷いているので多くの雑草は簡単に抜ける。それからブロッコリーやケールなど主にアブラナ科の冬野菜の苗を植えたり、土を豊かにする豆科の種を巻いたり。

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畑より下の斜面になっているところには果物の木をたくさん植えてあり、夏の間一度も芝刈りをしていなかったので無法地帯に。ようやく刈払機で刈り、すっきり。写真右側が刈る前、左側が刈った後。

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そして雑草の種がなさそうな芝の部分を集めて、野菜の苗の周りに敷いてマルチング。自然農法で耕さない私の畑は、自家製コンポスト、韓国の画期的な有機農業技術JADAM、銅線と枝を使って大気エネルギーを集めて作物の収穫量を増やすエレクトロカルチャーなど様々な方法を試している。

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夏の間麦やひよこ豆などが育てられていた農地は、秋になりトラクターで耕され、次の穀物を植える準備をしている。以前は何とも思わなかったこの景色、自然農法について知れば知るほど土の中の構造、微生物の住環境を崩さないことの大切さがわかり、土がひっくり返されせっかくの構造が壊されてしまうことが実にもったいなく思えるようになった。庭師でヨガの先生のガブリエレは、当初私の農法には半信半疑だったものの、今ではクライアントの畑をトラクターで耕しながらその行為を疑問に思うようになり、徐々に自然農法的アプローチを提案しようと思っていると言う。

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自然に寄り添った庭造りの達人と言えば、カゾンチェッロの庭園のガブリエッラ。この春は大雨の土砂災害などで、50年以上手塩にかけて作ってきた庭園は多大のダメージを受けた。それで、寄付金を集めるチャリティーイベントが行われた。

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夏に姪っ子たちと遊びに行くわね、と言っていたけど、滅多に庭園から出ることがないガブリエッラ、車で3分の距離も億劫で、約束はまだ果たされていない。久々に会えたけれど、元気そうでよかった。

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夫で絵師のルーチョは、流石の筆使いで水彩画のイラストをどんどん仕上げていた。

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庭園のミニツアーをしてくれた農学者のニコロは、この庭園で大学の卒業論文を書いたという。このあたりは砂地で栄養分が希薄なので、コンポストのほか草刈りをした草や落ち葉などの有機素材で常に土壌を覆っておくことで、微生物の働きで砂地も徐々に肥沃な土になることを説明してくれた。

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カゾンチェッロの庭には立派な竹林がある。竹は気をつけていないとどんどん広がって育ってしまうけれど、根は浅いので、年に一度境界線から出た部分を切断すればいいという。竹林の地面に光はほとんど届かないけれど、シクラメンのような球根の植物はそれでも問題なく増えていくという。竹林にシクラメン。イタリアとは思えない風情ある景色。

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緑が好き、ガーデニング好きな人には楽しみなイベント、ジャルディーニ・ダウトーレが、この秋もリミニで開催された。去年はローマ時代の橋がかかる公園で行われ、私も作品で参加した(その様子は去年9月のブログに)。今年は15世紀の城、カステル・シズモンドの周りで行われた。

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春と秋に行われるこの祭典、普段見かけないような品種のハーブや種、バラエティに富んだ蘭、柑橘類、エアプランツや食虫植物、ドライフラワー専門店ほか、エプロン、テーブルウェア、家具、エクステリアの素材など、イタリア各地から幅広いカテゴリーのショップが出店してとても楽しい。

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去年もたくさん果物の木を買った植木屋さんを見つけて、今年も苗を買った。

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探していたのはブルーベリー。

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過去3年間、毎年ブルーベリーを植えているけれど、すべて枯らしてしまった。ブルーベリーは酸性の土を好むので、酸性の土の一回り大きい鉢に植え替えて、鉢ごと土に植えるといいとアドバイスをもらった。このシベリアのブルーベリーはニュートラルな土で問題がなく、寒さにも暑さにも強いという。実はブルーベリーと名前がつくものの、ブルーベリーはスノキ属で、シベリアブルーベリーはスイカズラ属で別物。ブルーベリーと違って同じ系統の異なる品種を2株以上植えないと実がつかないというので、ちょうどいい苗を二本買った。それに、去年は売り切れだった黄色いラズベリーの苗も。赤よりずっと甘くて美味しいと聞いて気になっていたのだ。

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ランチは、チェゼナティコの砂浜にあるレストラン、マレの期間限定レストランへ。

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センスのいいグリーンの演出は、リミニを拠点に幅広く活躍する友だち、カルロッタのチームによるもの。

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メニューはソットコスタ(沿海の)とベジターレ(野菜の)の二種類。どちらも繊細な料理が魅力のシェフ、オーマーのセンスが光る。

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ドルチェはチョコレートとヘーゼルナッツとバターがたっぷりのトルタ・バーチョ(キスのトルタ)。別のイベントがあった時に子どもたちにとシェフがお土産に持たせてくれたこのトルタはやみつきになる美味しさ。

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9月はじめにシェフを訪ねて1時間半車を飛ばして砂浜のレストランに行った。先月のイベントで会った時に、一年はご無沙汰だったので、近々お店に顔を出すからと言った約束を果たしに。朝食の時間帯で、人参と生姜のスムージーとベリーたっぷりのグラノラをいただきながら、わざわざいつもより早くお店に来てくれたシェフとおしゃべり。初対面でお互い様子を見ながら話していたのが、いつの間にか深い話に展開し、すごく分かり合えて何か同士を見つけた気がすることがある。シェフとも去年初めて会ったとき、そんな感覚を得た。シェフは、目が回るほど忙しい毎日、少しでも時間を抽出して好きなことに費やすようにしたいという。本当にやりたいのは、自転車。今は時間のほか重量の問題もあるけれど、昔は時間ができるとすぐ自転車に乗って丘の上を何十キロも走っていたそう。

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この日ベジターレのメニューをいただきながら、何かシェフに作りたいなと思っていた。それで食事の間に作ったフォークに入れた文字は、「inforca la bici」自転車に(フォークで)刺す=乗る、という意味を持つ言い回し。シェフは、息をのみ、一息置いてからにっこりして、モチベーションが上がったよ、大切なメッセージをありがとう!と喜んでくれた。

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シェフとお話をしている間にたえはお城の池で遊んでいた。たえを見てほかにも小さい子たちが「大きな水たまり」をはしゃいで渡りだして、微笑ましかった。

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リャマやアルパカなど可愛い農場の動物がいたり、大人も子どもも楽しめるワークショップがあったりして、海辺の町の緑の祭典を1日満喫。日が傾いてきた頃、お城の門を出て車に乗って帰り道に立ち寄ったのは、ファエンツァ郊外のファームハウス、カ・ディ・ヴィアザドゥール。

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うちの町で夏祭りがあった時、変わった野菜や野菜のパウダーなどユニークなものを売っている店があって、若いオーナーのアンドレアに話しかけて意気投合。秋にファームハウスでイベントをするので是非遊びに来てねと誘われたのだ。

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インパクトのあるポップな赤カブのロゴもユニーク。

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アンドレアは若干29歳。ひいおじいさんの代から代々ここで農家をしていたそう。5年間サンフランシスコなどアメリカで過ごし、4年前から自分が農場を引き継ぎ、自然農法をしながら独特な野菜の品種を栽培してみたり、加工品にも力を入れ、インパクトのあるグラフィックでユニークなファームハウスを築いて来た。

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今日は農場祭り。フードやドリンクのスタンドほか、アーティザンの作品、ヴィンテージ、ライブミュージック、シアターなどさまざまな提案があって、午後6時ごろ着いた時にはブドウ畑を使った駐車場はいっぱいだった。

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刺繍の作品を眺めていたら、「あなたに作品頼んだことあるの!」と作家のマリアグラッツィアにニコニコ声をかけられた。ボローニャのアトリエで作品を作っている彼女、旦那さんの会社のロゴを立体で作ったことがあったのだ。世の中実に狭い。

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こちらはすべてビスケット。食べるのが勿体無いくらい。

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出店者、来場者ともに年齢もスタイルも幅広く、演出もいろんなセレクションもセンスが良く、アンドレアやるな!と思った。

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野菜たっぷりのベジバーガーも赤カブドリンクもとても美味しかった。

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インダストリアルデザインでモダンな雰囲気のファームハウス、イタリアにはそうそうない。そう、サンフランシスコの風が感じられる。アンドレア自ら週一度ボローニャの顧客にベジボックスをデリバリーしていて、マリアグラッツィアは毎週新鮮な野菜が届くのが楽しみだという。こんな新世代ファーマー、心から応援したい。

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ここはボローニャにある友だちのレストラン、パスト・ノマデ。遊牧民の食事という名の通り、無国籍のベジタリアン、ヴィーガンの料理を、自然農法の契約農家の野菜で作っている。それを、インドのお弁当箱、ダッバーで提供。テイクアウトやケータリングから始まり、いまではイートインでも楽しめるように。

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毎週、週に一日、世界の料理をネイティブの人を招いて作ってもらう、シェアードキッチンという企画が人気。

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9月最後の金曜日は和食を私が作ることに。

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3時に着いたら早速お番茶をいただき、ついでにまかないもいただいた。

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シェフのピーナはもう何年来のお付きあい。ベジタリアンの料理本も出版、発酵食品の研究もしていたり、話は尽きない。

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ピーナと一緒に決めたメニューを分担して作り始める。私はガンモドキから。50人分を目分量で作るのはどうなることかと思ったけれど、比較的多い分量を作り慣れているためか、スムーズに作れた。

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ピーナは和食検定も受けていて、ボローニャで和食について教えていて茶道の先生でもあるともみさんにこの日のことを話したら、ちょうど中秋の名月なので、月見団子作りに駆けつけてくれるというので、とても助かった。

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こんなお飾りまで。お月見気分が盛り上がる。

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ガンモドキは長芋も入れてふっくら。枝豆、干し椎茸、人参、ひじきなど具沢山。カボチャとリークの味噌汁は、昆布と干し椎茸の出汁で煮込んでから味噌を溶かした。風呂吹き大根はちゃんと面取りして、米のとぎ汁で下ゆで。こんなに丁寧に作ったことは今までなかったけれど、とても美味しくて、大根が美味しい季節に何度も作りたいと思う。

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茄子田楽は米味噌で。グルテンアレルギーがある人がいるかもしれないからと、レストランでは麦味噌より米味噌をよく使うそう。がんもどきにかけたのは、昆布と干し椎茸の出汁を醤油、みりん、砂糖で味を調節してとろみを出したつゆで。味はまるでめんつゆの甘い版。あるもので簡単にめんつゆが出来ることがわかった。ちなみに普通の醤油にはグルテンがあるけれど、たまり醤油にはグルテンがないそう。知らなかった。

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オーナーのひとりであるアルフレッドは世界的に活躍するグラフィックデザイナーで、このレストランのグラフィックをすべて担当。夜はレストランの手伝いもしている。

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青じそとごま風味の玄米ご飯。お味噌汁の段はご飯の上に重ね、蓋をして食事の最後に提供。ご飯物と汁物を最後に食べるのは、お酒を楽しむ会席料理スタイル。イタリアではまずスープや炭水化物を食べるので、順番を逆に提案するのも、食と文化をシェアするシャードキッチンならではでおもしろいと思った。

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最後は月見団子。餅粉を熱湯で練って作った団子に、練り切りも作るともみ先生作の餡子はとっても美味しかった。それに抹茶餡とカボチャ餡。イタリアでは豆を甘くして食べることはないので違和感がある人もいただろうけれど、みんなきれいに食べてくれた。

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今日のメニュー8品目、みんなのおかげで無事提供することができた。お客さんも満足してくれていたようで、ホッ。またひとつ貴重な経験ができた。

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夜明けが来るのが日に日に遅くなってきた。こんな朝焼けは朝7時過ぎに。

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朝日と夕日を眺めるのは至福の時間だ。機会を見つけては朝日が見えるところに向かい、ヨガやメディテーションを。うちから朝日は見えないので、裏山の向こう側まで行く。

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9月上旬に海にバカンスに行った時は毎朝6時半に浜辺に向かった。

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ピンクに色づいた空は、日が昇るにつれ息を呑むような橙色になり、神々しいものを仰いでいるような気持ちになる。波に映る光はまるで生きているようで、波打際に立っているとその光が足から身体に浸透して来るようで、デトックスとエネルギーチャージを同時にしている気分。

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朝と夕方ヨガを少しでもするのが習慣になった。日中でも気分転換や身体がなまった感じがすると、身体を動かすように。

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夕方のヨガは特にたえが一緒にしたがるように。身体が柔軟で羨ましい限り。私はアーサナ(ポーズ)、プラーナヤーマ(呼吸)を中心に行うハタヨガをメインに、メディテーションを日常的に行っている。ハタヨガのhaは太陽、男性、吸う息、陽(Yang)、thaは月、女性、吐く息、陰(Yin)を意味し、相反するふたつを結び、調和させバランスをとることを原則としている。

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身体と呼吸を整えると、心も整うものだ。学校でこんなテクニックを教えてあげたら、子どもたちはずっと健やかに育つのではないかと思う。

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昼と夜の長さが同じになる秋分の日。ファイヤーサイダーを仕込んだ。免疫力を高める飲み物として、自然療法を好む人たちがよく作っているのをあちこちで見かけ、この日に仕込むときっといいと思い立ったのだ。

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ファイアーサイダーは、玉ねぎ、ニンニク、生姜、レモン、オレンジ、ターメリック、ホースラディッシュほか、ペペロンチーノ、タイムやローズマリーなどのハーブをアップルサイダービネガーに漬け込み、冷暗所で数週間発酵させる。

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近所では生のターメリックもホースラディッシュも手に入らなかったけれど、抗酸化作用が高く、免疫力を向上させると言われ、古くから風邪の予防、緩和に使われてきたエルダーベリーを摘んだり、あるもので仕込んだファイヤーサイダー。

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もう2週間発酵させたら漉して瓶詰め。1日大さじ一杯をコップ一杯のお湯で割って飲んだり、蜂蜜と混ぜたりしていただく。ドレッシングにも便利そう。

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その夜、新しい季節を迎える気持ちでロウソクを灯してメディテーションをした。繰り返し聞こえるメッセージは、いまいる場所、ある状況は、いま自分がいるべき、あるべきところ。どの道を選んでも間違いはない。大切なのは目的地ではなく過程。

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すべては流動的で、物事も感情も何もかも、常に変動しているもの。あの雲やあの海のように。どの川を下って行っても、最後に誰もがたどり着くのは、海なのだ。だからこそ、みんな個々のジャーニーを信じて、楽しもう。

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庭のザクロがいい色になってくると、秋を感じずにはいられない。ザクロは豊穣や子孫繁栄のシンボルとして古くから世界各地で縁起物とされてきた。結婚式や大切な人への贈り物などに、私も好んで使っているモチーフだ。

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先日、夫のパオロの姪っ子の結婚式があった。シングルマザーでいろいろ複雑だったジュリア、パオロのお姉さんダニエラは、ジュリアが結婚することになるなんて思わなかった、と嬉しそう。新郎新婦に投げかけるのは、ライスシャワーの代わりに、ダニエラが6カ月前からせっせと集めて乾燥させたドライフラワー。

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愛おしくてこのまま取っておきたいくらい。

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バージンロード(というのはジャパングリッシュ、英語でもイタリア語でもウエディング通路)をエスコートしたのは、ジュリアのパパ、パオロと息子のマッティア。結婚する前に子どもがいるということはカトリックでは罪とみなされる。それも別のパートナーと。私はもともとのキリスト教の教えにはそんなことは無く、教会が人々に罪を着せてコントロールしやすいようにしたのだと思うけれど、それはまた別の話。カトリックの人がほとんどのイタリア、それでも家族にエスコートされて感無量のジュリアの姿に、来場した家族友だちの多くが胸を熱くしたのではないか。

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三つのザクロは、新郎ヤコポとジュリアとマッティア。辛いことがあるからこそ楽しいことはより楽しくなる。酸いも甘いも一枚のコインの両面でどちらもなくては成立しない。だからこそ、「La vita è bella」~人生は美しい。

小林千鶴

イタリア・ボローニャ在住の造形アーティスト。武蔵野美術大学で金属工芸を学び、2008年にイタリアへ渡る。イタリア各地のレストランやホテル、ブティック、個人宅にオーダーメイドで制作。舞台装飾やミラノサローネなどでアーティストとのコラボも行う。ボローニャ旧市街に住み、14年からボローニャ郊外にある「森の家」での暮らしもスタート。イタリア人の夫と結婚し、3人の姉妹の母。
Instagram : @chizu_kobayashi

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