ボローニャ「森の家」暮らし

夏の始まりは冒険の始まり。ワクワクがたくさんの6月

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うちの向かいのアルファルファ畑がくるくるロールにされた6月早々、子どもたちは3カ月半の夏休みに突入。

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4, 5月があまりにあっという間に過ぎたので6月=夏休みは思いがけなく早く来てしまった感じで心の準備ができていなかった。

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陽が長くなり、遅くなるまで明るいので、トマトやズッキーニなどの苗は晩ご飯の後に畑に植えた。

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すっかり暗くなるまで畑仕事をしていたら、次女のみうと三女たえがテントを持って来て、今夜はここで寝る、と言い出した。電気や着替えや水筒やらを持ち込み、テントの中でしばらくみうが本を読んでいるのが聞こえて、そのうち「おやすみー」というので、本気なのかとびっくり。今までキャンプにも行ったことがなく、野外で寝たのは初めて。このときは、学校が終わる数日前。

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翌朝、4時過ぎにたえは家に入って来たけれど、みうは朝まで熟睡。「夜雨降った?」というので、降らなかったよ、というと、「変なの、テントも草も本も濡れてたよ」。朝露のせいだ。

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ガブリエッラの庭園からもらってきた竹や、柳の枝で作った今年のトマトの支柱。

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暑くなってきてみるみる伸びた草を刈って、苗の周りをマルチング。

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土を覆うことで湿度を保ったり、雑草を生えにくくさせる効果がある。

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2カ月ほどダンボールと絨毯を乗せて遮光しておいたここは、ズッキーニ畑に。

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ダンボールの下の雑草はいい感じに土に還り、ミミズがたくさんいた。

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この畑には、昨年と同様にズッキーニを植えた。苗の周りにはダンボールを敷き、上から古い藁を被せた。

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半月後。

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そしてほぼ1カ月後。

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トマトも順調に育っている。

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ちなみに、畑でキャンプした翌日、みうたちは、テラスでキャンプ。今回は朝露で濡れることはなく、喜んでいた。

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暗くなってくると、たくさんの蛍が。

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蛍と天の川を眺めて大地に横たわるたびに、すべてのものは星くずからできているのね、と、感動する。

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6月の美味しいお楽しみといえば、サクランボ。

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うちの古い桜の大木、ここ数年大風や雪で枝が折れて収穫量はかなり減ったけれど、毎年美味しいサクランボを恵んでくれる。

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3年前に2株植えたラズベリーはどんどん広がり、5月下旬から11月まで甘酸っぱいベリーを楽しませてくれる。

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ブラックベリーやクロスグリもたくさん。

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みうの12才の誕生日、「日本のフルーツサンド、美味しかったねぇ」と言っていたのを思い出し、全粒粉食パンに生クリームとベリーを乗せて、朝からお祝い。

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毎日食べたいと、喜んでいた。

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こちらはアドリア海の町、リミニの近くにあるワイナリー、オッタヴィアーニにあるヴィッラ、イェッパ。それぞれの部屋には地域にいる動物の名前がつき、それをモチーフにした作品を依頼されていた。

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昨年10月に仮オープンし、当時完成していた5部屋には作品を飾り済み。今回はその後完成した2部屋用に作品を持ってきた。部屋の名前は現地で仕上げた。

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新作のキツネと記念撮影。

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1階の部屋のキツネが見上げているのは、キジの羽。

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窓の外には、夢の塩水プール。

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3階の部屋にはキジ。キツネもキジも、ひとつめに作ったものは若干サイズがイメージと違い、新しく作り直した。おかげで1匹目はそれぞれうちにいることになってうれしい。

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今回は、仕事に子どもたちとのバカンスをくっつけて、2泊3日で大好きなミケーラのところにお邪魔した。行動派でダイナミックなミケーラの相棒キャンバーは、IKIGAIに乗って、あちこちドライブ。

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共通の友だちが最近オーナーになったこのヴィッラ。

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アートコレクターで、旅とガーデニングが趣味の80代の前オーナー、ジョヴァンナが何十年もかけて作り上げた庭園には、モネの絵を思わせるロータスの池に太鼓橋がかかっていたり、オリエンタルな雰囲気のエリアがあったり。

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どんなイメージを描いて庭づくりしてきたかが想像できて楽しい。

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2年前、このプールで泳がせてもらって、プール側にあったワニのフィギュアをもらった。新しいオーナーは、30代の若い女の子3人組。食、ウェルネスやカルチャーイベントをオーガナイズする彼女たち。この素敵なロケーションは、きっとたくさんの人を魅了するに違いない。

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夕方には海へ。本当は今夜はミケーラの夫のミルコが船を出してくれる予定だったけれど、海が荒れ気味だったで、また今度。

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ちょうど一年前、私とみうはこの船に初めて乗せてもらった。みうはマイクを持って、「これからクロアチアに出発しますよ、船長早く来てくださーい!」とアナウンス。

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船着き場のバールでドリンク片手に、ミケーラの友だちと仕事の話。

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子どもたちは砂浜で透明なナマコのようなものを見つけて大騒ぎ。

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夜はリミニのお城の広場にあるミルコのレストラン、ミ・ママでシーフードと野菜のフリット。

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オーガニックのジェラートを食べて。

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月明かりが照らすお城の広場の池を歩いた帰り道。もうすぐ満月。

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17歳になる小さなワンコ、ジョリーと、10歳のスパニッシュ・グレイハウンド、トリスタンは、ミケーラとミルコの相棒。ジョリーは耳も目も鼻も効かなくなり、それでもよちよちのんびりやっている。

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今回会えるのが最後かなぁといつも思う。それで、ジョリーのポートレイトを作ることに。

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もちろんトリスタンも。壁の文字は、以前ミケーラの馬に乗せてもらったときに作った、アラブのことわざ。「天国の風は、馬の耳の間を吹く風だ」。

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たえはナプキンに絵を描いた。

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帰宅したミケーラ、とっても喜んでくれた。

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リミニから帰ってすぐ、今度は北上してドロミテ山脈に。

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スキーリゾート地、コルティーナ近くのヴァッレ・ディ・カドーレに家族の山の家がある友だち一家に誘ってもらって、2泊3日、トレッキングを楽しんだ。

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みうとピエトロ、たえとアダは、同い年で、ボローニャの保育園の時からの友だち。ママのフランチェスカは私と同い年。何度も聞いた山の家にやっと来られてうれしい!

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すれ違えないくらい細い車道をくねくね上がり、いまは使われていない山小屋があるところからトレッキングスタート。向こうに見える山は、標高3,264メートルのモンテ・アンテラオ。

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山小屋アンテラオを目指して歩く。

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この教会まではずっと上り。先に着いた人から鐘を鳴らす。

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ここまでくれば、山小屋まではほぼ下り道。

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白く見えるのは残雪。アルプスの少女の気分。

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山小屋が見えてきた。

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スカッと気持ち良い笑顔のおじさんが迎えてくれた。

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ここまで休憩含めて3時間弱。フランチェスカたちは8月に来ることが多く、6月にトレッキングするのは初めてだそう。「春の花が綺麗だし、緑も生き生きしていて、ツーリストも少なくてよかった!」

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山と海、どちらか選ぶとしたら、きっと山。海が見える山だとより良い。

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こんなところにも、植物が根を下ろして花を咲かせているのを見ると、感激しなくはいられない。

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小さな生き物の視点になってみたり、ここを舞台に繰り広げられるファンタジーを想像してみたり。自然は好奇心をかきたて続ける。フランチェスカは子どもたちを歩かせるために、定番の妖精の話をはじめてくれた。「あるところに青い妖精アダと、緑の妖精たえがいました」。ふたりとも魔法の動物をお供に冒険の旅に出かける。参加型の物語、みんなのいろいろなアイディアを組み込みながら、物語は続く。話に夢中になって、アダもたえもどんどん歩いた。

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これはきっと呪文をかけると動きだし、魔法の世界につながる扉が開きそう。

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翌日は別の山に。

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今度は川沿いを登って行くコース。

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目指すは山小屋パドバ。

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澄んだ冷たい川に足を突っ込む。浄化されるようで大好き。

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みうはちびっ子ふたりを、お得意の即興ファンタジーを聞かせながらリード。

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川辺から1時間ほど歩いて山小屋に到着。

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アンティパストミストのチーズの盛り付け方が、薪の積み方っぽくておかしかった。

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いつ見てもすごいなぁと思う。

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8月に来ると、すぐ近くまで牛が放牧されているそう。ここでしばらく休んでから帰路に。渋滞もあり、車に着いてから家まで4時間ちょっとかかったけれど、子どもたちは思いのほか寝ることもなく、順番に好きな曲をかけてずっと歌っていた。動物がいるとなかなか家族旅行はできないけれど、4時間くらいで行ける場所ならそう無理がないことがわかったので、これから子どもたちを連れてあちこち行ってみたいと思う。

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6月21日、夏至の朝。朝日を拝みにいつもの場所へ。

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帰ったら、カードを引いたり書き物をしたりして、自分なりにセレブレーション。

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夕方、畑に水をあげたら、ボローニャまでドライブ。

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この週末は、ボローニャ中で音楽イベントがあった。

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坂の上の教会では、コーラスのコンサートが。

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歌手、コンポーザー、編曲家のロレンツォ・サンソーニは、イタリア各地でポリフォニー(多声音楽)のコーラスを指導していて、ボローニャでも月二回コースを開催している。

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身体はユニークな楽器で、自身の声を使って細胞レベルでチューニングできると思っている。近い将来ロレンツォのコースを受けようと思っている。

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コーラスが終わったあと、ハミングしながらピアッツァ・マッジョーレに。この広場は夏中、野外シネマになる。この日はスピルバーグの『未知との遭遇』を上映。

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その数日後は、チャップリンの『ゴールドラッシュ』を友だち家族と鑑賞。ジェラートを食べながら上映を待つ。日中39度にもなり、22時前でも広場の石畳は床暖房のように暑かった。

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無声映画のこの映画、贅沢なことに市のオーケストラの生演奏で楽しめた。

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指揮をとったのは、ティモシー・ブロック。無声映画の音楽復元に特化したコンダクターで、チャップリンの映画音楽もたくさん復元してきた。パートナーのチェチリアは、映画のアーカイブで世界的に有名なチネテカ・ディ・ボローニャのアーキビストで、チャップリンの映画や書物などをたくさんアーカイブしてきた。みうがひとり息子のセバスチアンと同じ幼稚園だったので仲良くなり、ティムがボローニャで指揮をとるときはいつも誘ってくれて、生演奏でのチャップリンやキートン映画鑑賞を楽しんできた。やっぱり生で聞く音楽は特別いい。

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思い出して、探したこの写真。9年前、ティムがおばあさんのレコードプレイヤーを持ってきてくれた時。30年代のもので、当時ピクニックにこれを持って行っていたそう。

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6月23から24日に日付が変わる頃、明日はサン・ジョヴァンニだということを思い出し、カゴを持って庭に出た。サン・ジョバンニ(聖ヨハネ)の日を迎える夜は、古くから魔法の夜とされ、魔除けや浄化の儀式が各地で行われてきた。23日の日没後、花やハーブを集めて、それをボールの水に入れ、一晩中外に置いておく。翌朝には魔法の朝露を含んだ水になり、それで手や顔を洗い、お清めをする風習がある。

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畑で花を摘んでいると、誰かの視線を感じた。照明を当てると、ノラに興味津津で見つめられていた。

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菊芋の円形の畑の中央に、クリスタルとともに花の水をセッティング。

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翌朝、聖なる水の出来上がり。

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なんともいい香り。いつもこんな香りにまとわれていたい。

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サマーキャンプに行く前に、たえとみうも顔を洗ってお清め。

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高校の補習から帰って来たゆまと、ボローニャから遊びに来た友だちのニコライにも半強制的にお清めをしてもらったら、顔を洗って「ニキビがなくなりますように!」というから笑った。ティーネイジャーのかわいい願い。

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世界の平和を望むなら、まずは自分の内なる世界を見直すことから。気付けば身のまわりにたくさんある豊かさに感謝して、大小いろいろ人生の冒険を目一杯楽しみたいと思う、夏のはじまり。

小林千鶴

イタリア・ボローニャ在住の造形アーティスト。武蔵野美術大学で金属工芸を学び、2008年にイタリアへ渡る。イタリア各地のレストランやホテル、ブティック、個人宅にオーダーメイドで制作。舞台装飾やミラノサローネなどでアーティストとのコラボも行う。ボローニャ旧市街に住み、14年からボローニャ郊外にある「森の家」での暮らしもスタート。イタリア人の夫と結婚し、3人の姉妹の母。
Instagram : @chizu_kobayashi

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