谷川俊太郎さんが語る、幸せについて。
ときどき思う、
死んでからヒトは、生きていたことが、
生きているだけでどんなに幸せだったか悟るんじゃないかって。
いきなり引用で始まりましたが、こんにちは、編集YUKIです。
これは詩人・谷川俊太郎さんの著書『幸せについて』(ナナロク社刊)の、表紙をめくるとすぐ目に飛び込んでくる言葉です。
先日、谷川さんのトークイベントに伺い、この本に出合いました。
銀座のSHISEIDO THE STOREのカフェ&コミュニティスペース、SHISEIDO THE TABLESが開催する「Beauty Reading Books~幸せをめぐることば~」。タイトル自体も素敵なこのイベントの、第1回のゲストが谷川俊太郎さんでした。
会場には谷川さんの著作の数々も。
イベントは、谷川さんの著作を多く刊行するナナロク社の編集担当の方との対談の形式で進行。和やかな雰囲気が客席にも伝わってきました。
谷川さんと資生堂さんのご縁は長く、1985年に第3回「現代詩花椿賞」を谷川さんの詩集『よしなしうた』が受賞しています。
いま、谷川さんには何とひ孫さんもいらっしゃるそう! そんな谷川さんはとても快活でユーモアいっぱいで、詩の朗読も交えながらのトークはとても楽しいものでした。
“美”や“化粧”についてのエピソードも。谷川さんは1960年代、アメリカとヨーロッパを訪れた時に、初めて中年女性の美しさを知ったといいます。強く、自我がはっきりと表れていて、主張するその姿が色っぽいと感じたそうです。確かに、当時の日本の価値観からするとかなり衝撃的だったのだろうと思います。
朗読した本の一冊『あたしとあなた』(ナナロク社刊)は、まさに「まるでお化粧のように、美しい本がからだも心も装ってくれるような、特別な体験を提供する」というコンセプトのこのイベントにぴったりの詩集。本当に美しいです!
右が『あたしとあなた』、左が『幸せについて』。
『あたしとあなた』は、ブックデザインを手がけた名久井直子氏が「紙から作りたい」と提案し、特注。水色の優しい風合いの本文用紙に、布の表紙、そこに金色と青、白の箔押し。そして特製しおりを開くと、こうした美しい本へのこだわりが記されているのも、心憎い仕掛けです。
サインも美しい!
電子書籍は便利だけれど、詩集はツールではなく、極端に言えば美術品だから、確固とした存在感を持ってほしいと語った谷川さん。まさにその言葉どおり、眺めているだけでもうれしくなるくらい素敵な詩集たち。
(本棚に余白があるのは、引っ越したばかりで本たちがまだダンボール詰めのままだからです)
そしてその本にのせられた言葉の数々は、すっと心に染み込んだり、ズシンと響いたり、はっと目が開くような思いをしたり。あらゆる言葉が氾濫するいまだからこそ、まさに言葉と触れ合う“幸せ”をめいっぱい感じさせてくれます。
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