Editor's Blog

青森の現代美術がすごい。<弘前編>

昨年末に訪れた青森のふたつの美術館。先に十和田市現代美術館の様子をお届けしましたが、十和田を堪能した後は、車で弘前れんが倉庫美術館へ向かいました。

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田根剛が建築デザインを担当、改修を行った。

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入り口部分のれんがのあしらいも美しいです。

建物自体も気になっていてずっと訪れてみたかったのですが、外観からしてやはり風情があり素敵です。

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入り口を進むと、まずは奈良美智の作品が。

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奈良美智『A to Z Memorial Dog』©︎Yoshitomo Nara

れんが倉庫で奈良美智の展覧会が開催された後、作家から弘前市に寄贈され倉庫の前のスペースに展示されていたもの。美術館の開館にあわせてこちらに長期展示されることになったのだとか。
さらに奥へ進むと……

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ジャン=ミシェル・オトニエル『エデンの結び目』

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ケリス・ウィン・エヴァンス『Still Life(in course of arrangement)』

オトニエルの作品が青森にも。そして、くすっと笑ってしまったのは、ケリス・ウィン・エヴァンスの作品『Still Life(in course of arrangement)』。よーく見ると、ターンテーブルの上に置かれた木が、ものすごーくゆっくりとしたスピードで回転しています。なんだか愛着がわきます。

私が訪れた際は、『りんご前線―Hirosaki Encounters』展が開催中(1月30日までの予定がコロナの影響による臨時休館に伴い、3月13日まで会期延長に。)でした。弘前とさまざまな接点をもつ幅広い世代の作家たちの作品を展示することで、土地とのつながりを通して彼らの活動を紹介しています。

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佐野ぬい『かくは入り口』

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佐野ぬい『カリブ・北北西』『ハイチ・北北西』『キーウェスト130マイル』

まずは弘前市生まれの佐野ぬいの展示スペースから始まります。佐野は「青の画家」として知られ、少女の頃は画家としてパリに渡ることを夢見ていました。パリの風景を思いながら弘前の街並みを描いた『かくは入り口』をはじめとした彼女の原点となる作品群を、1950年代以降の流れに沿って紹介。「青の画家」といわれるだけあって、彼女の生み出す青色の中を泳いでいるような、真っ青な異次元空間へ迷い込んだような、不思議な感覚に襲われました。佐野の「青」は、年齢を重ねるごとに色が明るくなる傾向があるそうです。

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会場を進むと、小林エリカの展示スペースへ。小林の祖父は戦時中、弘前の第八師団軍医で、彼女の父はこの弘前で生まれたそうです。家族の歴史をきっかけに弘前という土地に出合う個人的な旅がそこにはあります。

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小林エリカ『誕生

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小林エリカ『旅の終わりは恋するものの巡り逢い』

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小林の作品の奥に、ケリス・ウィン・エヴァンス『Drawing in Light(and Time)…suspended』が姿を表す。

美術館のだだっ広いスペースに吊り下げられているのは、ケリス・ウィン・エヴァンスの『Drawing in Light(and Time)...suspended』。ニュートンのりんご、惑星の軌道……弘前を歩き感じたことから着想を得て作品に仕上げたそう。

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『Drawing in Light(and Time)...suspended』はこちらの写真作品とあわせて一つの作品です。

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ケリス・ウィン・エヴァンスの作品の横、床一面にはまた別世界が広がっていました。

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斎藤麗『ウィンター・ドーナッツ/イワキサン』

パリを拠点に活動をしている斎藤の故郷は弘前。約一カ月の弘前滞在で生まれたインスタレーションは壮大です。石膏や金の文字など多様な素材が組み合わさって構成されています。

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展示は2階へと続きます。2階では村上善男、塚本悦雄の作品が並び、津軽という土地に根ざした展示となっています。

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村上善男『旗の丘』

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村上善男『無題』

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塚本悦雄『水槽の津軽錦』(一部)塚本悦雄は、一度は絶滅した津軽錦という金魚を描いた。津軽錦をモチーフにした彫刻も展示され、彼のアトリエを再現したスペースも。

ちなみに、2階からは1階の様子を見ることができるのですが、上から見るケリス・ウィン・エヴァンスと斎藤麗の作品は、なんとも圧巻です。

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弘前の土壌についての考察を促す展示スペースもあり、弘前に多数存在する前川國男の建築模型も展示されていました。
また、改修前から存在していた貯水タンクはそのまま館内の上部に設置されていて、その姿も見ることができます。

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中央ライトの奥にあるのが貯水タンクです。

2階の奥には図書スペースもあり、ここにもエヴァンスの作品があるので、音と光には注目を。
建築自体も見どころがいろいろある弘前れんが倉庫美術館。太宰治ゆかりの地というのも気になるし、前川國男建築も見て回りたい。あの、八角形の栄螺堂 や、歴史ある洋館も豊富で、街の建築ツアーもかねて、ぜひ再訪したい街です。

弘前れんが倉庫美術館
青森県弘前市吉野町2-1
tel: 0172-32-8950
開)9:00〜17:00
休)火(祝日の場合は翌日休み)
入場料:一般¥1,300(展覧会により異なる)
www.hirosaki-moca.jp

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