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栗山愛以の勝手にファッション談義。

写真家のピーター・リンドバーグ。

写真家のピーター・リンドバーグが9月3日に74歳で亡くなった。

まだまだ第一線で精力的に仕事をしていたようだし、2017年に来日したピーター氏にFIGARO.jpの記事のためにインタビューをしてそのソフトな人柄にほんの少しだけ触れたこともあったので、かなりショックを受けた。あのピーター氏に会えるなんて!と、興奮し、記念写真をお願いしてしまったのを思い出す。

インタビューでカラーとモノクロの違いについて聞いたら「モノクロがNGの媒体も多いからね……デジカメで撮る時はカラーだね」とおっしゃっていて、いろいろな事情があるのかもだったが、やはり「作品の80%はモノクロ」とのこと。そこで今回はピーター氏追悼にあたり、オマージュを捧げて、イラストもモノクロにしてみようと思う。彼の写真をイラストにしてしまうというのがそもそも無謀な気がするんですけど……!

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ピーター氏のことは、私がコム デ ギャルソンでPRとして働いていた時によく耳にしていた。ごくたまに海外でコレクションを撮りおろしてもらう機会があり、パオロ・ロベルシ、サラ・ムーンなどとともによく名前が挙がったものだ。80年代の「黒の衝撃」を象徴する「穴あきセーター」を着用している写真が有名で、コム デ ギャルソンとの付き合いは長い。「コム デ ギャルソンを正しく表現してくれるカメラマン」というイメージがあった。

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スーパーモデルブームの先駆けと言われている写真のように、群像ももちろん構図のバランスなどにいつも感嘆するのだが、私がいちばん気になるのは女性の見え方だ。モデルでも、女優でも、彼の写真に収まった女性たちは皆凛としている。そして、彼の写真には、女性はこうあってほしい、という押し付けがましい男性目線はまったくなく、女性のこうありたい、という内から滲み出るような意志が感じ取れる。彼がドキュメンタリーっぽく撮る、と言われている所以か、姿だけではなく、内面も写真に写し出してしまうのだ。「写真はモデルとの対話のようなもので、彼女との間にあるカメラはいつのまにか消え去ってしまうんだよ」といったことが本当に起こってしまうのだろう。

パンツスーツを着たショートカットのステラ・テナントがタバコをくゆらす姿も、見た目やしぐさはまるで男性のようだが、ステラの女性としての内面が伝わってくる。コム デ ギャルソンも、露出が少なく身体のラインもわからない黒い服を女が強い気持ちで着る、ということをそのまま表現してくれるからピーター氏を信頼していたんだろうなあ。

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ところでこの時のステラは40代で、よく見ると目に小じわがある。FIGARO.jpで取材した写真集『Shadows on the Wall』に載っているシャーロット・ランプリングのポートレートもすごい。しわはもちろんのこと、たるみや手のシミにおばあちゃん感満載。がしかし、どちらもとってもかっこよく思われる。

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修正はせず、メイクについても「厚塗りはモデルと僕の間に壁を作ってしまうから避けてもらうようにしている」らしかった。いろんな若作りをして不自然で痛々しい姿になるより、堂々と老いを露わにする方が潔い。そしてピーター氏はその姿勢を讃え、美として表現した。

ピーター氏は、女性のありのままの姿を肯定して、その人と着ている服がますますよく見える、ということを実現させたカメラマンだった。モデルも着せ替え人形ではなく、ひとりの人間として撮影に臨む必要があっただろう。

ファッションを上っ面だけではなく、人と服との関係性で捉えてくれる人がいなくなるのは本当に残念です。
心よりご冥福をお祈りします。

栗山愛以

ファッションをこよなく愛するモードなライター/エディター。辛口の愛あるコメントとイラストにファンが多数。多くの雑誌やWEBで活躍中。

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