栗山愛以の勝手にファッション談義。

だから、パリコレ取材へ!

2月27日〜3月8日まで、2023-24年秋冬パリコレクションを取材してきた。今季もフィガロのインスタグラムで現地からレポートやスナップをお届けしたのでぜひチェックしてもらうとして、こちらではそこで紹介できなかった個人的な思い出を綴ろうと思う。

先シーズンは下向き付けまつ毛に勇気づけられたとお知らせしたが、出発前に見たプラダの最新ランウェイでもまたヒントをもらってしまった。今季心奪われたのはカラフルなまつ毛。そこで以前眉用に取り揃えた蛍光色のマスカラをパリに持参して毎日取っ替え引っ替えしながら塗っていたところ、目元というのは視線を集めるようで、よく「すごい色だ」とコメントをもらった。

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ハイブランドも一通り見てみたものの、結局1,000円くらいの「パーティ・イベント用」が発色がいい。そろそろ買い足しに行かねばならない。

このようにショーではもちろんまず服を見るが、ヘアメイクも気になるもの。パリコレで真似したくなったのは、オフスケジュールでショーを開催していたキコ・コスタディノフのヘアだった。

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地毛の色とコントラストをもたせた前髪付きの部分ウィッグを用いていたよう。髪を痛めたくないのでここのところブリーチは避けている。ボリュームアップにもなるし、こんなウィッグが販売されたら即手に入れたい。

いつものように日中はショーや展示会を周り、ホテルに戻ったら原稿に取り組むという日々。今季もあまり寄り道ができなかったのだが、帰国日、前日から始まった年金改革法案の反対を訴えるストによる交通規制を用心しながらもガリエラ美術館で開催中の展覧会「1997 FASHION BIG BANG」だけはかろうじて行ってきた。よく街で見かけていたコム デ ギャルソンの名作、1997年春夏「ボディ ミーツ ドレス・ドレス ミーツ ボディ」のヴィジュアルを起用した広告が気になっていたのだ。

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「1997年が現代ファッション史における転機の年である」ということを訴えたい内容で、コム デ ギャルソンの他に取り上げられていたのは、ストックマンのトルソーをかたどったマルタン マルジェラ97年春夏や、黒いパンツ姿の男性モデルの裸の上半身にヤシをペイントしたラフ シモンズ98年春夏「Black Palms」など。ジャンポール・ゴルチエがオートクチュールに参入し、アレキサンダー・マックイーンがジバンシィ、ジョン・ガリアーノがディオール、エディ・スリマンがイヴ・サンローラン リヴ・ゴーシュ オム、ステラ・マッカートニーがクロエ、ニコラ・ジェスキエールがバレンシアガを手がけるようになったのもこの頃だった。

で、それらのサンプルが時系列に並んでいたので、そんなこともありましたね、実物を見られて貴重ですね、とは思うのだが、だんだんどの年をピックアップしてもこの程度のイベントはあったんじゃないかな?という気がしてくる。97年という特別感を出したいのなら、インターネットが普及し始めた影響とか、社会情勢と絡めたりもしてよかったのでは。そもそもメインヴィジュアルになっていたコム デ ギャルソンも、ブランドにとっては代表作のひとつだが、この時代だからこその表現、というわけでもないような。「クリエイティブ ディレクター」という肩書きが誕生したのは特筆すべき点だけど、トム・フォードがグッチを手がけるようになったのはちょっと前の94年だしなあ。なぜ97年が特別そんなに重要なのか、の説得力に欠ける感じがした。

美術館を出て、そんな風にもやもやしながら歩いているとバレンシアガのショップにたどり着く。ふらりと入るとアディダスとのコラボスタンスミスが目についた。すでにソールがすり減っているかようなフォルム。クラシックなスニーカーそういえば持っていないし、などと自分に言い聞かせ、買ってしまったのだった。

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お会計を終えると「今日は国際女性デーですから」とロゴ入りの試験管に入った紫のバラを一輪いただく。
本当に潔く電車が止まってしまうストもそうだけど、日本では遭遇しない出来事。
やっぱり毎回コレクション以外にも刺激を受けることがいろいろある。
来季もまた訪れよう、と決意して帰途についたのでした。

栗山愛以

ファッションをこよなく愛するモードなライター/エディター。辛口の愛あるコメントとイラストにファンが多数。多くの雑誌やWEBで活躍中。

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