栗山愛以の勝手にファッション談義。

「AND JUST LIKE THAT... / セックス・アンド・ザ・シティ新章」シーズン2に思うこと。

ドラマ「AND JUST LIKE THAT…/セックス・アンド・ザ・シティ新章(AJLT)」シーズン2が日米同時配信中だ(日本ではU-NEXTにて見放題で独占配信中)。言わずと知れた名作「セックス・アンド・ザ・シティ(SATC)」(1998〜2004)の続編である。

筋金入りの「SATC」マニアというわけではないが、いちおう一通りは観ていたので21年末〜配信されたシーズン1もチェックしていた。「SATC」では30代という設定だった登場人物たちは50代に。身近な人の死、更年期障害などが取り上げられ、時代の風潮を鑑みてか多様性を打ち出す内容になっていた。なんだか、年を重ねることについてのネガティブな表現が目につき、多様性の盛り込み方も不自然なような。「SATC」のウキウキ感があんまりなかった。

いやでも、シーズン2もエピソードがアップされるたびに世界中のファッションメディアがこぞって話題にしている。個人的な感想は別にして、教養として(?!)知っておかねば、と観ることにしたのだった。

現時点(23年7月27日)での最新は、キャリーの元恋人のカムバックで沸いている第7話。
これまでファッション的に話題になったトピックといえば、映画版「SATC」('08)でキャリーが着用したヴィヴィアン ウエストウッドのウェディングドレスの再登場や、2022年秋冬メンズ&ウィメンズプレフォールコレクションのショーで初めてお披露目されたJW アンダーソンの鳩クラッチバッグ、2019-20年秋冬1 モンクレール ピエールパオロ・ピッチョーリのドレス、キャリーの友人、不動産ブローカーのシーマのバーキンやブラウン系の色使い、シャーロットのママ友リサのヴァレンティノやルイ・ヴィトンといった華やかな服装といったところか。が、知っているアイテムを見つけると、「あの時のあれだ」とはっとするものの、それ止まりではある。

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21年末、「SATC」の制作者が手がけたNetflix「エミリー、パリへ行く」について、もやもやした、という思いを綴ったが、日常生活で実際に華やかな格好をする人々を追うリアリティ番組がたくさんある今は、そうした姿を描いたフィクションにもう心が動かなくなってしまっているのか。

そして心が躍らない原因として大きいように思うのは、登場人物たちにかつてほどの吸引力がなくなった、という点だ。「SATC」時代も派手な服装が似合っていた、とは言い難いが、服と着る人の関係がどんどん離れていっている。キャリーが長いブロンドをなびかせてきゃぴっとした服装をするのがもう素敵には見えない気がするのだ。決して歳を重ねたらブレーキをかけろ、と言っているわけではなく、年齢に関係なく自分に似合っているか、違和感がないかどうかの日々のチェックは必要で、髪型や体型、そしてお肌のコンディション等と服とのバランスを考えるべきなのではと思うのである。

毎回ゲストが豪華で、「ル・ポールのドラァグ・レース」('09〜)で審査員を務めるロス・マシューズの姿を見た時はちょっとうれしくなったりしたが、89歳の作家、政治&人権アクティビストのグロリア・スタイネムという人も出演していた。黒の上下に赤いジャケットを羽織っただけスタイル。それまでに歩んだ人生が滲み出ている感じがしてかっこよかった。レギュラー陣も彼女の姿勢を見習えばいいのになあ。

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年を経て出演者の風貌は変わってしまったのに、パトリシア・フィールドの精神を受け継いでいるらしい衣装デザイナー、モリー・ロジャースとダニー・サンティアゴによるスタイリングのノリが「SATC」とほぼ同じ、というのがあんまりよろしくないのかも。ドラマのカラーを守ろうとしてのことなのだろうが、服のことだけを考えて人とのバランスがあまり取れておらず、ファッションが素敵、という結論には至りにくいような。最終話でサマンサが出演する予定もあるようだが、サマンサ役のキム・キャトラルが主演を務め、パトリシア・フィールドが衣装を手がけたNetflix「グラマラス」('23)を観ると、やっぱりキムのギラギラした感じはかつてより薄れているので服との乖離があってパワーダウンして見えてしまった。

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かつて強烈なキャラで印象づけられた人はいつまでもそれを期待されて大変だ。そうではない自分は日々鏡を見ながらその時々の服とのベストな関係を探っていかねばなりませんね。
そんなことに思いを馳せることができたので、収穫といえば収穫なんでしょうか。
反面教師として最終話まで見届けるつもりではいます。

栗山愛以

ファッションをこよなく愛するモードなライター/エディター。辛口の愛あるコメントとイラストにファンが多数。多くの雑誌やWEBで活躍中。

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