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現代フランス映画の流れがみえてくる横浜フランス映画祭。

時代を反映する鏡、ともいえる映画を通して日仏友好の絆ともいえる「フランス映画祭2022 横浜」が、12月1日から4日まで横浜で開催されるという。今年はその30回目という節目のせいか、例年にもまして、参加者、参加作品にも、選び抜かれた印象があるし、現代フランス映画の流れが垣間見えてくるようだ。

これまでカトリーヌ・ドヌーヴイザベル・ユぺールらが、フランスからの訪日ゲストの団長として目立っていたが、今年はむしろ日本側のミューズ、石田ゆり子さんが映画祭のミューズとして注目されていて、日本でより根深いものにしたいというフランス映画祭主催者側、ユニフランスの心意気を感じる。それにそうした役割には、石田ゆり子さんはぴったり。

ヨーロッパでの戦争、まだ終わらないコロナ禍、女性の権利の確立、または地球環境問題など、多くの問題を抱えたまま、時が過ぎていく混沌の中で生まれた映画作品は、どれも考えさせられものが多い。

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映画祭のオープニング作品は、19世紀末に途方もない設計のエッフェル塔を建ててパリ市民を驚愕させた、時代の革命児ギュスターヴ・エッフェルを、今やフランス映画を代表するロマン・デュリスが演じて、マルタン・ブルブロン監督がその実像に迫った『EIFFEL(原題)』(配給:キノフィルムズ)で開幕するという。

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これまでその素顔を描いた映画はまだあまりなく、現代でさえ斬新にみえるあのパリの象徴のタワーに傾けた彼の激しい情熱が、実はその傍らでのギュスターヴ・エッフェルの私生活での情熱的な恋とシンクロしていたという、いかにもフランス映画的なストーリーとして、話は展開している。
一部の熱狂的なシネフィルだけでなく、普段はあまり映画を観ない一般大衆まで巻き込みそうなスケールの作品に仕上がっているそうだし、見応えがありそうだ。

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ギュスターヴ・エッフェル役のロマン・デュリスの恋人を演じるエマ・マッキーも、この作品で注目されている。

実は私がパリで特派員をしていた頃、ギュスターヴ・エッフェルの孫娘ジャニーヌ・エッフェルをロング・インタビューしたことがあり、そのエピソードを聞いたエッフェル家の末裔サヴァン・イェットマン・エッフェルさんの妻、由紀子さんが鎌倉に会いにこられて、なんだかこちらも親しみを感じてしまい、上映を愉しみにしている。

主役のロマン・デュリスも来日、3月の封切りが待たれている。

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最近のフランス映画は女性監督の活躍が目覚ましいが、中でもヴェネッツィア映画祭で金獅子賞に輝いた『あのこと』(配給:ギャガ)の監督オードレイ・ディヴァンは、なんと監督デビューから2本目で世界が注目する賞を受け、今回のフランス映画祭の中でも、42歳とはいえ新たな時代を象徴する実力派の女性監督だ。

もともとパリの女性ファッション誌仏版「グラムール」の編集部にいたというから、その経歴も変わっている。

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60年代まだフランスでは中絶が禁止されていた頃、妊娠してしまった女子大生の苦悩の日々を描いたもので、その原作を書いたのは、先頃ノーベル文学賞を受けたフランスの女流作家、アニー・エルノーが、40年間秘めてきた実体験を書いた「あのこと」を映画化したもの。

日本でも「シンプルな情熱」などで、現代のマルグリット・デュラスといわれるエルノーのファンは、増えているようだ。主役の知的で繊細な雰囲気の女優アナマリア・ヴァルトロメイも脚光を浴びているし、今回とても観たい作品。

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日本でも人気の女性監督ミア・ハンセン=ラヴの『ワン・ファイン・モーニング』(配給:アンプラグド)も、監督の実体験を映画化したものだという。レア・セドゥ、パスカル・グレゴリー、メルヴィル・プポー、といった魅力的なキャスティングを迎えて、別れた両親の間で揺れ動きながら、老年を迎えた父親の世話をしていて、昔の恋人と再会するという、自然な流れのドラマになっている。娘にレア・セドゥ、別れた恋人にメルヴィル・プポー、父親をパスカル・グレゴリーが演じているが、パリの知性派を代表する新聞「ル・モンド」紙では、「パスカル・グレゴリーの演技には、驚倒させられる深みがある」と彼を絶賛している。

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2023年のアカデミー賞の外国映画部門に、フランス映画代表として候補に上がっているというし、見逃せない。
パスカル・グレゴリーもメルヴィル・プポーも来日するし、今回の映画祭の「マスタークラス」に登壇するようなので、映画界を目指す人には見逃せないプログラムだ。

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「フルタイム」も、「テレラマ」という映画評としては高く評価されている雑誌が、大絶賛している作品で、監督はエリック・グラヴェル、主役を演じるのは、ネットフリックスの「エージェント物語」で、控え目なのについ周囲を振り回してしまう娘役を演じて好評だったロール・カラミーが出演していて、うれしくなる。

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パリの豪華な宮殿ホテルでルーム係をしている女性が、パリのデモや子供の世話で疲れ果て、毎日フルタイムで孤軍奮闘するリアルな日常風景を描いたもので、何気ないテクノ音楽も絶妙で、「テレラマ」が、「新たなフランス映画の流れといえる新鮮な映像」だといっている。まだ観てみないとわからないが、働く女性応援のテーマだし、ヴェネツィア映画祭で監督と主演女優が金獅子賞を取っているのだから、今回絶対外せない一作となっている。  

その他19世紀の文豪オノレ・ド・バルザックの原作を映画化した「幻滅」やパトリス・ルコントの「メグレ」警視の新作など、どれも観てみたいものばかりだ。

チケットはすでに発売開始をしているようだし、完売したものもあるというが、ぜひ多くの方々に観てほしい。

【合わせて読みたい】
30周年のフェスティバル・ミューズは石田ゆり子! 今年も『フランス映画祭2022 横浜』の開催が決定。

フランス映画祭2022 横浜
Festival du film français au Japon 2022
会期:12月1日(木)〜4日(日)
場所:横浜・みなとみらい21地区を中心に開催
https://unifrance.jp/festival/2022

 

村上香住子

フランス文学翻訳の後、1985年に渡仏。20年間、本誌をはじめとする女性誌の特派員として取材、執筆。フランスで『Et puis après』(Actes Sud刊)が、日本では『パリ・スタイル 大人のパリガイド』(リトルモア刊)が好評発売中。食べ歩きがなによりも好き!

Instagram: @kasumiko.murakami 、Twitter:@kasumiko_muraka

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