明日パリに発ちます。ジェーン・バーキンの葬儀に。
喪服は和服にしよう、と決めた。いくら場所がパリのサンロック教会の葬儀だとしても、日本を愛してくれたジェーン・バーキンのために、日本人として私にできる最大限の装いで見送りたい、そう思ったからだ。
だがあまり違和感になってしまうのも気になるので、一応喪主のシャルロット・ゲンズブールにショートメールで意見をきくと、大喜びだった。
いつも頼み事ばかりしていたジェーン、いつかは自宅のガーデンパーティに誘ってくれたジェーン、想い出の品で溢れ返った居間で紅茶を淹れてくれたジェーン、ある時は点滴棒を持ちながら、台所でランチを作ってくれたジェーン、そんなジェーンに、精一杯のお洒落をして、パリで別れを告げてこよう。せめて私にできることといったらそれくらいだ。
明日パリに発ちます。
つい先月もいってきたのに、またパリへ?
隣人たちは不思議そうな顔をしている。コロナで4年間も海外へはいけなかったのに、今度は立て続けに2回もいくの?
普段の私なら滅多にしないことだ。だけど偶にはその日常性の殻を破ることも大事だと教えてくれたのは、ジェーンだったのかもしれない。退屈で、つまらない人生にしているのは、あなた自身よ、そんな声がきこえるようだ。小さな日常のデテールには驚きがいっぱいよ、ある時はそういって庭先の蟻たちの引っ越しを眺めていた。
16年間の闘病生活、大変だったでしょう。辛かったでしょう。痛みや苦しみから解放された安らかなジェーンに、別れを告げてこよう。
明日パリに発ちます。
2018年自宅で、最後の一枚。photography: Kasumiko Murakami
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