England's Dreaming

松明の灯が行進する、英国の地方に伝わる冬の風物詩。

イギリスで冬の到来を告げるイベントといえば何と言ってもガイ・ホークス・ディだろう。(この日については以前に書いた『世界は愉快』の記事をご参照を。)

当日の11月5日だけではなく、その前後にはあちこちで大きなかがり火が焚かれて花火が打ち上げられる。でもそれに加えて私の住むサセックス州と隣のケント州の一部では松明をもった人々による迫力満点のパレードがある。リンドフィールドという小さな町のガイ・ホークス・デイのお祭りもその一つ。

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ごうごうと燃え上がる松明が闇を照らす。

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サセックス州(とケント州の一部)のガイ・ホークス・デイが他とはちょっと違うのは、ガイ・ホークスの謀反未遂事件以前に起きた血なまぐさい出来事に由来するという。

カトリック教徒だったメアリー1世統治下だった1555年から1557年の間に、サセックス州の町ルイスではプロテスタント教徒への弾圧で17人が火あぶりの刑に処された。しかしメアリー1世のあとに王位に就いたエリザベス1世は前女王の時代から一転してプロテスタントを国教に制定。そののちの王ジェームズ1世もプロテスタントを受け継いだ。ガイはカトリック教徒だったので、ジェームズ1世が気に食わず殺害を企てるが失敗。だからガイの計画が頓挫して王が守られたことを祝うこの日には、かつてルイスで処刑された17人の追悼の意味も込めて松明の行列を行うらしい。

ちなみに当の地であるルイスは、特に盛大なガイ・ホークス・デイで有名だ。そのお祭りのために当日は午後から翌日の早朝までルイスに続く道すべて封鎖されて駅に電車も止まらず町は封鎖される。実は一度行ってみたいのだけれども、交通手段がないので部外者の私はなかなか踏み入れる事ができないでいる。

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日が暮れてから車でリンドフィールドに向かう。ここでもやはり中心部の道が封鎖されていたので、町外れに駐車して歩くこと30分。ハイストリートにたどり着くと巨大なガイ・ホークス人形が飾られていた。

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立派な人形からも町の人々がこのお祭りに並々ならぬ力を注いでいるのがわかる。

パレードが始まると鼓笛隊を先頭にリンドフィールドを始め近隣の町の人々がそれぞれのグループごとに松明を手に行進していく。圧巻!

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ヴィクトリア時代の服装を模した人々の行進で、今が21世紀であることを忘れてしまいそう。

彼らが着ているお揃いのストライプのガンジーセーターに白のボトムスという格好は、その歴史を1850年代まで遡る。この頃のガイ・ホークス・デイは乱痴気騒ぎで、全員が同じ格好をしていれば騒動の中心人物を警察を特定するのが難しいとしてこうなったとか。ストライプの色は町ごとに違う。

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松明の行列はハイストリートを抜け、町外れの広場を目指して延々と歩いていく。

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松明の灯の列がドラマチック。それに続いて人々も広場に向かう。

広場には巨大な櫓が建てられていて、ハイストリートにあったガイ・ホークス人形もその横に移動。そしてパレードを終えた人たちは松明を投げ込み、櫓は巨大なかがり火となって燃え上がる。それと同時に、花火が打ち上げられて歓声があがる。

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燃え上がるかがり火。炎の左端にガイ・ホークス人形の影が見える。

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そして花火!

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イギリスでは花火は冬のもの。それはきっと夏は日が長くて夜11時くらいまで空が明るいから適さないんだと思う。だからこうして闇夜に広がる花火を見ると、寒くて暗い季節がまたやって来たんだなと感じる。

ガイ・ホークス・デイが終わると、次の行事はクリスマス。

実は私はガイ・ホークス・デイの朝に今年のクリスマスケーキを焼いた。イギリスのクリスマスケーキはずっしり重いフルーツケーキ。これから毎日ブランデーひと匙を染み込ませていけば、12月25日には香りを嗅いだだけで酔っ払ってしまいそうな芳醇なケーキになっている、はず!

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現在は見た目が冴えないケーキ。でもクリスマス当日にはマジパンとアイシングシュガーをまとった純白のケーキとなる。

坂本みゆき

在イギリスライター。憂鬱な雨も、寒くて暗い冬も、短い夏も。パンクな音楽も、エッジィなファッションも、ダークなアートも。脂っこいフィッシュ&チップスも、エレガントなアフタヌーンティーも。ただただ、いろんなイギリスが好き。

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