
口あたりを想像して、マグを選ぶ。余宮隆さんの一品。
これは余宮隆さんのマグカップ。コーヒーとそれから即席スープにちょうどいい容量なのでよく使う(底が丸いからめちゃめちゃ混ぜやすい)。
マグカップは見た目で選ぶことが多いけれど、こちらは、使ってみてさらにその良さにのめり込み、後日もう一脚追加したほど。カップのふちにあるほんのすこしのくびれのおかげで、口当たりがものすごくいいのだ。飲みものの温度が唇にのっかるイメージといったらよいだろうか、心からリラックスできる。
余宮さんは、釉薬がダイナミックに流れるドラマティックなうつわを手がけ、多くの人を魅了してきたのだけれど、数年前に作風に変化があって装飾を抑えた無地で静かなうつわも増えていった。
と同時に、このマグ(特に縦縞のほう)はあまり作られなくなったけれど、シンプルになったことで、ろくろ仕事のうまさが際立つ薄手の小皿や小鉢にも、私はひかれるようになった。マグとはまた別の、和食のシーンで愛用している。
作家さんがそのとき作るものは、その人の心境や生活環境の変化を反映していたりする。それが個展でお買い物する醍醐味だし、作る人が「提案したいこと」と、使う人の「欲しい気持ち」が心地よく出会った結果として、ものが売れていく世界は、とても美しいと思う。
[ある日のうつわ]
ほんのすこしのこのくびれと絶妙な厚みが、とんでもなく心地いい口あたりをもたらします。
マグは、指を入れるところのくびれが自分の手に合うかどうかも、重視したいポイント。こちらは私の指にジャストです。
小皿と小鉢も、縁がキリッとして美しい。
ミニいくら丼にちょうどいい深さで嬉しかった日。美味しさも増し増しに。
うつわディクショナリー#04 余宮隆さん、うつわに景色を描く
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作り手:余宮隆 @yomiyatakashi
購入した年:2019〜2021年頃
購入場所:千鳥 UTSUWA GALLERY @utsuwa.chidori
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