おしゃべりなうつわ

古いうつわが食卓に与えてくれるもの。

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これは古い秀衡(ひでひら)椀。同じ装飾の椀が三つ組になっていて1枚はフタにもなる。秀衡椀とは、東北南部とくに岩手県の平泉周辺に伝わる蒔絵漆器で、源氏雲とよばれる雲と金箔の菱形の文様と、地域により菊・松・鶴などを組み合わせた絵柄が特徴だという。古いものは三つ重ねで時代が下がるにつれて四つ重ねになると何かで読んだ。これはたぶん江戸時代後期のもの。とある骨董イベントで「書肆 逆光」の鈴木学さんから購入した。鈴木さんの漆器のセレクトがとても好きなのだ。美しい蒔絵の漆椀は、上流の家系やハレの場で使用されたからか綺麗なまま残っている上に、経年による柔らかさが加わり魅力的なことが多いのだという。この椀も、150年近い年月を経たからこそ宿ったであろうコックリとしたツヤと絵柄のカスレが相まって、落ち着きのあるいい佇まい。うつわが持つツヤ感には、時代ごとにトレンドがあると思うけれど、こうした経年した漆のツヤは、現代のマットな陶器や無垢の木家具にとても合うと思う。そういうものを求めての骨董市通いが楽しい。

[ある日のうつわ]

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メインのお皿を引き立てる場所で、いい仕事をしてくれる。華やかすぎないところが好き。

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それぞれに素朴なタッチで絵柄が描き込まれた三つ組椀。

250104_oldhidehira_utuwa_05.jpg古き美を知り新しきを合わせる時間は、感性をためされているようでワクワクする。トレーのように使ったプレートは岡崎慧佑作、蕎麦猪口は渡邊心平作。秀衡椀は1万円くらい、明治の小皿もすっごく手が込んでいるように見えるのに2300円くらいと、時代や意匠によって希少価値が異なり、価格帯がいろいろなのも骨董の面白いところ。

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作り手:骨董品
購入した年:2019年?
購入場所:骨董イベントの「書肆 逆光」のブースにて。

衣奈彩子

ライター/ 編集者

子育てをきっかけにふつうのごはんを美味しく見せてくれる手仕事のうつわにのめり込んだら、テーブルの上でうつわ作家たちがおしゃべりしているようで賑やかで。献立の悩みもワンオペ家事の苦労もどこへやら、毎日が明るくなった。「おしゃべりなうつわ」は、私を支えるうちのうつわの記録です。著書『うつわディクショナリー』(CCCメディアハウス)
Instagram:@enasaiko 衣奈彩子のウェブマガジン https://contain.jp/

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