
4人家族の手になじむ、4種の漆椀。
これは中野知昭さんの漆椀、家族4人分。
中野さんは、越前河和田漆器の塗師職人の家系に生まれながら、職人ではなく作家として活動している。伝統的な漆器産業では、製作するうつわのデザインに合わせて、木地を轢く人、漆を塗る人、販売する人が分業するけれど、中野さんのような作家は、お椀や皿、盆などのかたちを自らデザインして木地師(木材から椀型を作る人)にオーダーし、その木地に漆を塗って作品として提案する。
中野さんの漆器は、いまの暮らしに使いたいすっきりとしたデザインもいいし、なんといっても塗りが柔らかくなめらかで、しかし甘い雰囲気になることなくすっきりとしているところが私のツボ。溜め塗りと黒漆の椀のうち、黒いのは息子たちのものだ。
我が家では中学にあがると漆椀が与えられる。
毎年12月に青山の「うつわ謙心」で開催される個展に連れて行って、作り手の中野さんと少しお話してから「これ」という一椀を選んでもらうのだ。「もっと幼い頃から本物の漆を与えよ」という考えもあると思うけれど、私は、大人になるまでずっと使えるサイズが手になじむようになる頃を目安に。12歳というタイミングは、ものづくりする人に会ってお話するにもいい年齢なのではないかと思っている。
長男は2019年に、厚みのある「丸美椀」を「僕の手にはこれがしっくりくるよ」と即決し、次男は2021年に、深さのあるスタイリッシュな「柳椀」を「この大きさなら白飯もいけるよね」とさっと選んだ。二人とも時間にして数分。手のひらの情報を頼りに直感で選ぶって素晴らしい。新学期を前にすると、その矜持に思いをはせる。
[ある日のうつわ]
朝食は、ごはん&味噌汁派で漆椀は毎日使うから、いい色つやに育っています。
うつわディクショナリー#21 作り手の顔が見える中野知昭さんの漆器
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作り手:中野知昭 @nakanotomoaki85
購入した年:2014年頃〜2022年
購入場所:うつわ謙心
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