
ラグジュアリーなグラスを日常に使う、選び方のコツ。
これは西垣聡さんのグラス。
切子の技法でスタッズのような凹凸を彫りこんでいるラグジュアリーなグラスだ。伝統的な切子文様もガラス面に対して削りを斜めに入れるのでスタッズ状ではあるのだが、あくまでも平面に削りを入れる「陰刻」の表現。対して西垣さんがやっているのは、平面の上にスタッズが突起として並ぶ「陽刻」の表現で、ガラス面にスタッズを施したのち、それ以外全てを削り落とす。つまり、削る量もかかる手間も半端ないお仕事が生むとても贅沢な作品なのだ。
同じシリーズでロックグラスもショットグラスもあるのだけれど、背の低いこちらにひかれたのは、ライフスタイルショップで手に入るボデガグラスとサイズが揃うことに気づいたから。うちには、高さ6センチのボデガがふたつある。ボデガは500円程度で買えるのに対して、このグラスは当時の価格で確か10000円(初個展だった)。値段は20倍も違うのだけれど、高さが同じならば、食卓の上に一緒に並べたときに調和するはずだと思ったし、その食卓で、朝食の水にも、日中のどが渇いた時のお茶にも、夜中の梅酒ロックにも使ってみたいと思えた。すでに世の中にあるものと形を揃えたことで、装飾性の高いうつわが生活のなかで孤立せず、取り入れやすくなった好例だと思う。
スタッズだけに一見ワイルドなのだけれど、本体を直線的なデザインにしているからか、ガラスがもともと持っている気品が際立ち、エレガント。そして当たり前の話だけれど、スタッズはひとつひとつ小さなガラスの塊なわけで、光の反射も半端ない。ダイニングにふと光が差し込んだ時に、テーブルの上に落ちる影なんて本当に綺麗です。気軽なのにそういうところを夫が思いのほか気に入っていて、食器棚からしょっちゅう取り出し、ビールにも水にも愛用している。私が入り込む隙はもうないくらいに。
[ある日のうつわ]
西垣聡さんのHigh Lights シリーズ、ボデガ、高橋工芸の木製Kamiグラスが整列する光景が、かわいくてとても好き。
生活の中にふと現れる光と影の景色がまさにアール・ドゥ・ヴィーヴル。左も西垣さんの作品。
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作り手:西垣聡 @satoshi1984ng
購入した年:2016年頃
購入場所:Oz Zingaro
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