【栗山愛以の2026年春夏パリコレ総括!】シャネル、メゾン マルジェラ、バレンシアガ......生まれ変わるビッグメゾンがもたらすもの。

Fashion 2025.10.17

栗山愛以

ミラノに引き続き、新クリエイティブ ディレクターによるデビューコレクションのお披露目が相次いだ2026年春夏パリファッションウィーク。交代のたびに取り沙汰される"ブランドらしさとデザイナーの個性とのバランス"はどうだったのか、振り返ってみる。

01
シャネル、メゾン マルジェラに見る「ブランドらしさ」のさまざまな解釈 

三部構成で発表されたシャネルは、メンズライクなパンツスーツからスタートして観客を驚かせた。どうやら、ガブリエル・シャネルが恋人の服を借りていたことが着想源となっているよう。シャネルともなれば、クリエイションだけではなく、創業者の佇まいも「ブランドらしさ」となると考えたのだろう。

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シャネル 2026年春夏コレクション

中盤からはこれまでのブランドイメージの延長線上にあるような華やかなルックも見られるように。ただし、ツイードは手編みのニットやシースルー素材などで表現され、アイコンバッグは「使い古された」感じを出すためにつぶされてライニングが露わになり、カメリアはシワ加工が施された他、爆発したような姿にも変容している。

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ガブリエルが愛用していたシャルべと共同で制作したシャツや、ショッパーをイメージしたというバッグなど、新アーティスティックディレクター、マチュー・ブレイジーらしいセンスも光り、一層モード好きを取り込むのは間違いない。一方で、既存の顧客はカール・ラガーフェルドが築いたシャネル像を愛する人々。その「ブランドらしさ」ともバランスを取っていかねばならないのかもしれない。

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メゾン マルジェラの新しい「ブランドらしさ」とは?

メゾン マルジェラほど、メゾン設立者が愛され、絶対視されているブランドはそうそうない。設立者が去った後も、各々「マルタン・マルジェラならどうするか」を念頭に置きながらものづくりを見てしまうのは特異な例だろう。そんなブランドを任されたグレン・マーティンスは、「ブランドらしさ」をどのように解釈したのか。

ファーストルックが登場してまず目に入ったのがマウスピースだった。もちろん、アイコニックな4本のステッチを表現していることはわかる。「表情に統一感をもたらし」「メゾン マルジェラの匿名性をさらに追求する」ためのアイテムなのだという。

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メゾン マルジェラ 2026年春夏コレクション

コレクションはブランドらしいテクニックや素材を用いていて大変魅力的であったのだが、モデルたちの決して快適ではなさそうな表情が気になって仕方がない。演出でインパクトを出すというよりもシンプルに服を見せる方がマルタンの精神に沿っているのでは......と戸惑ってしまった「メゾン設立者絶対主義者」たちもいたかもしれない。

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02
歴代クリエイティブ ディレクターにも敬意を払ったバレンシアガ

エレガントなシルエットを得意とするクチュリエである新クリエイティブ ディレクター、ピエールパオロ・ピッチョーリは、メゾン創業者、クリストバル・バレンシアガと親和性が高い。しかし、前任者のデムナとの作風の違いは歴然。ブランドイメージが激変することが予想されていた。

が、蓋を開けると創業者のアーカイブに加え、デムナ、さらにニコラ・ジェスキエールのクリエーションを思わせるピースが散見。極端な形のサングラス、ストリートウェアの要素、乗馬帽、花柄などにそれが感じられた。

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バレンシアガ 2026年春夏コレクション

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もちろん鮮やかな色使いや手の込んだ刺繍など、ピッチョーリらしさも表現されてはいるのだが、自然な移行をめざしてバランスを取ろうとしていたように思われたのだった。

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03
うまくバトンを受け取ったロエベ

ショー会場の入り口にコレクションを象徴するアートを掲げたり、おなじみのアナグラムを上半分のみにしたり、トロンプルイユのようにブランドが誇るレザーを用いたり、アイコンバッグのディテールをコートに施すなど、プレゼンテーションの仕方やシュールさは前任のジョナサン・アンダーソンのテイストを思わせた。しかし、新クリエイティブ ディレクタージャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスはそれまでのロエベ像を踏襲しつつも、スポーティでポップな持ち味を活かして、ただの焼き直しにはしていなかった。

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ロエベ 2026年春夏コレクション

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ショーにはパワフルな印象があり、アイデアが駆使された魅力的な靴バッグもラインナップしていた。

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04
ディオールとセリーヌは2回目のショーで方向性がフィックス

今年6月にお披露目された新生ディオールのメンズコレクションは、「オム」や「メン」を付けずブランド名は「Dior」のみだった。ジョナサン・アンダーソンの価値観を浸透させた一つの大きな世界を作り上げようとしていることが推察されたが、ウィメンズコレクションは、まさにその流れを汲んだものだった。

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ディオール 2026年春夏コレクション

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メンズと同じムードを共有し、ウィメンズはよりフェミニンさを加味。アンダーソンらしいシュールなテイストを薫らせつつも、歴代クリエイティブ ディレクターによるアーカイブを反映させ、既存の顧客が好むであろうエレガンスも漂わせた。

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セリーヌの打ち出した華やかな流れ

マイケル・ライダーによるセリーヌも、7月に開催されたショーの続きのようなイメージ。フィービー・ファイロ期にプレタポルテのデザインディレクターを務めていたライダーゆえに、フィービーチルドレンらしいシルエットに独自のポップなテイストを加味していた。

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セリーヌ 2026年春夏コレクション

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photography: Spotlight

ファッションをこよなく愛するモードなライター/エディター。辛口の愛あるコメントとイラストにファンが多数。多くの雑誌やWEBで活躍中。

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