
秋を待ちわびる、我が家のどんぶり四兄弟
これは我が家のどんぶり四兄弟。どんぶりや飯碗、匙や箸のようにご飯を口に運ぶ道具についてつくづく思うのは、欲しいと思った時に探すのではちょっぴり遅くて、なんでもない時に出会ったものが最良だったりするということ。自分の身体にしっくりくる重さや、手に吸い付くような持ちやすさみたいなものは、本当にふと、ごくたまに、目の前に現れるものなのだ。だからこそ自分にとってよりパーソナルで大切なうつわにもなりうる。
そんなふうに親密につきあえるどんぶりを探している人は多いと思うけれど、作家の個展でどんぶりを見かける機会は実はそんなに多くない。シンプルがゆえにバランスよく作る力量が試されるからか、大きいがゆえにちょっと値が張るからか。最初にうちにやってきた、四兄弟のいわば長男は、寺村光輔さんの直線的なラインのどんぶり。梨の枝を燃やした灰を使う灰釉の緑がかったベージュがおしゃれで気に入っている。次男は、志村睦彦さんの三島手。ふちまで薄造りで上品。三男は、田村文宏さんの安南手(ベトナムの染付)。フォーやガパオライスもいいけれど、容量少なめのサイズが冷凍うどんにちょうどよく、卵とじのふわふわ感を損なわずに美しく盛ることができる。最後に仲間入りした末っ子は、尾形アツシさんのヒビ粉引。このテクスチャーには、カレーうどんが私的ベストな相性だ。
兄弟と呼ぶのは、みんな灰釉をまとっているから。ほんのり黄味がかった釉薬は、休日の昼に人数分パパッと作るインスタントラーメンを、手をかけた料理に見せてくれてお得感がある。形のちがうどんぶりでも色が揃うと統一感がでるし。
【ある日のうつわ】
梨の灰釉がさらりとしたベージュがきれいな寺村光輔さんのどんぶり。
寺村さんのやや緑がかった灰釉はケールのグリーンにもよく合う。
志村睦彦さんのどんぶりは三島手の象嵌模様がインスタントラーメンを格上げする。
志村さんのどんぶりは、ふちが薄く反っているので盛り映えもする。
田村文宏さんの安南手のどんぶりは女性にうれしい小さめサイズ。
尾形アツシさんのヒビ粉引は深さがあるので、熱々のカレーうどんをどんぶり内でふうふうしやすいわけです。
作り手:寺村光輔、志村睦彦、田村文宏、尾形アツシ
年代:2012〜2021年
購入場所:銀座 日々、mistoo、千鳥 UTSUWA GALLERY、kahahori
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