
イギリスのおうちNo. 11 お泊まりできる小さなコテージ
以前、「ロンドンの文化屋雑貨店」で紹介したケンちゃんが『サツキ絶対好きだと思う!』とお勧めしてくれた場所。それは彼の友人キャサリンがイースト・サセックスの街、ライで営むビー・アンド・ビー「Dot Cottage(ドット・コテージ)」。
「イギリスで最も美しい街」ランキングの常連でありながら&私の鈍い運転で1時間ちょっとで来れる場所なのに、なぜか今まで足を伸ばしたことがなかった場所。私のテリトリーであるケントの外だからだろうか?
友人を誘って一泊二日の旅に出かけて来ました。
ロンドンの喧騒に疲れたキャサリンが、広い空を求めてこのライに引っ越して来たのは7年前。数ヶ月借りて住んだこのコテージにすっかり魅了されて、大家に交渉して購入に漕ぎつけたのだそう。
「ライは空がとにかく近いんです。ベッドに寝転がりながら、ダブルウィンドウ越しに空を眺められるのが至福の時間!」と笑うキャサリン。
まるで何世紀も前から変わらずここに佇んでいるかのように、しっくり来るインテリアが絶妙なドット・コテージだけど、聞いてみれば入居してから大々的に改装を施したというから驚き。
当時の写真を見せてもらうと、IKEA全開のキッチンと白い壁のモダンなリビングルームがひどくちぐはぐな印象で、このコテージが持つ本来の魅力が全く反映されてないではないの!(ビフォーアフターはこちらを参照)
「私は新しいものを買わない主義。蚤の市やヴィンテージショップで古いものを探して、ストーリーのある品物を見つけるのが好きなんです。キッチンの壁はビリヤード台を再利用したものだし、暖炉は足場板を使っただけ。家具類は、ロンドンに住んでいた時に使用していたのを持って来たものです。」
キッチンの改造 by Brewhouse Salvage
「キッチンを改装するときに巻き尺が見当たらなくて、そこら辺にあったリボンを使って採寸したの!笑っちゃうでしょ?キャビネットは間違って逆さまに取り付けてしまったままだし、いろんな箇所が完璧とは程遠いのだけど、不完全なところがこの家の魅力だと思ってます。」
赤ちゃんのうんち(!)みたいで嫌いだったと言う、リビングルームの壁の色(ファロー&ボールの『番茶』)は、友人に「あなたのナンセンスな雑貨たちの背景にピッタリじゃない!」と言われてストンと腑に落ちたと言う。
現在のドットは、どこを見渡してもまるで長い年月をかけて自然に育まれたかのような温かで居心地の良い空間。キャサリンこそ、独自の審美眼でこの建物が本来持っていた本来の魅力を丁寧に掘り起こして蘇らせた張本人だと言って間違いない。
「このコテージは、ドット(点)のように小さな別世界なの。泊まってくれたゲストのほぼ全員が、このコテージには魔法が宿ってるねって言ってくれるんです」
ドット・コテージは確かにマジカルな空間。扉を開けた瞬間から日常の喧騒をすっかり忘れてこの愛らしい"小宇宙"にすっと溶け込んでしまった友人と私。
西日が差し込むキッチンでパスタを作って、小さな中庭でピムズを片手にゆったりとディナー。陽が長く続くイギリスの夏、まだ明るい9時半まで散歩に出かけて、高台から海を眺める。何でもないことが、特別に感じられる時間...! (子供を置いて来た事実も勿論否めない)
ずっと読みたかった本をベッドでゆっくり読めたのも、この非日常の静けさと心地よさがあったからこそ。時間の流れまで優しくなるような特別な空気が、このドット・コテージには確実に流れているみたい。
去り際は、まるで大切な友人の家を後にするような名残惜しさ。『次回は二泊します!』と言い残して、私の鈍い運転で家路についたのでした。
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