ガラパゴスな横浜に世界のアートがやってきた!

Culture 2017.08.24

開港のモダンな雰囲気が残る横浜で開催中の、国際芸術祭『ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス』。今年で6回目になるアートフェスティバルの会場には、ポップでカラフルだけれど、中に深いものを秘めたアートが並びます。密度の濃い展覧会の見どころを紹介します。

170815-yokohama08.jpg横浜美術館のグランドギャラリー。手前は鑑賞の合間にくつろいだり、トリエンナーレのコンセプトなどに触れられる「ヨコハマラウンジ」。

今年の『ヨコハマトリエンナーレ 2017』は、横浜美術館・赤レンガ倉庫・横浜市開港記念館(地下)の3カ所がメイン会場。横浜美術館と赤レンガ倉庫の間は無料シャトルバスが走っていて、アクセスも便利です。世界をさまざまに見るアーティストならではの視点が活かされた作品が並びます。

170815-yokohama01.jpg会場のひとつ、横浜美術館。ファサードにはアイ・ウェイウェイ(艾未未)の作品が展示されています。『安全な通行』2016年、『Reframe』2016年 ©Ai Weiwei Studio

横浜美術館のファサードを飾るのは、難民が海を渡るときに使う救命ボート。柱には、実際に使われた救命ジャケットがびっしりと取り付けられています。作者のアイ・ウェイウェイ(艾未未)は北京出身、現在ベルリンを拠点にするアーティスト。身近に見聞きした難民問題を扱った作品です。

>>無数の竹を使った、伝統工芸を重んじるアート。

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無数の竹を使った、伝統工芸を重んじるアート。

170815-yokohama03.jpg竹を使ったジョコ・アヴィアントの作品。横浜美術館の巨大なグランドギャラリーを占領する勢い。『善と悪の境界はひどく縮れている』2017年

横浜美術館のグランドギャラリーで出迎えるのは、インドネシア出身のジョコ・アヴィアントの作品。日本のしめ縄からヒントを得て、無数の竹を独自の手法で編んだものです。

現在、インドネシアでは日本と同様に竹などを使った伝統工芸が消えつつあるのだそう。自然の素材を暮らしに取り込む、そんな関係性が失われつつある現状も現しています。

170815-yokohama11.jpgミスター「ごめんなさい」展示風景。かわいいけど、どこかちょっと恐ろしいような気も。

今回のトリエンナーレのタイトルは「島と星座とガラパゴス」。ガラパゴスは、孤立し独自の進化を遂げながらも、海を介して他の大陸とつながっている日本の状況を暗示します。

日本のマンガやアニメが海外で熱狂的に受け入れられているのも、ガラパゴスで発達した独自の文化が海を渡っていくかのよう。

170815-yokohama12.jpgミスター「ごめんなさい」展示風景。ミスターは早くからこういった「萌え絵」的な作品を制作してきました。

本作品の作家ミスターは、早くからそんなオタクカルチャーをモチーフに制作を続けてきました。最近では、空間を丸ごとアートにしてしまうような大がかりなインスタレーションを作っています。

今回の出品作も、萌え絵を立体化させたような作品です。ただし、キャラクターも背景も何かによって破壊された跡を思わせて、ちょっと不穏な感じがします。

>>野生の動物をカラフルに彩る、神秘的な作品。

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野生の動物をカラフルに彩る、神秘的な作品。

170815-yokohama06.jpg熊をモチーフにしたパオラ・ピヴィの作品『I and I(芸術のために立ち上がらねば)』など。 Courtesy the Artist and Perrotin

野生の動物は特別な力を持っている。強力な武器を持たなかった昔の人々はそう考えて彼らを恐れ、畏敬の念を抱いてきました。なかでも熊は、ヨーロッパで特に神聖視されてきた動物です。紋章にも熊が多く登場するのはそのためです。

展示室に並ぶカラフルな熊は、パオラ・ピヴィの作品。黄緑、ピンク、紫などの羽根で覆われています。ふかふかしたぬいぐるみみたいで怖くはなさそうですが、タイトルは『I and I(芸術のために立ち上がらねば)』などという謎めいたもの。本来は強いはずの熊が可愛らしい見た目になっているのは、人間と自然のバランスについて示唆しているのでしょうか?

170815-yokohama05.jpgオラファー・エリアソンの“作品”はみんなでグリーンに光るライトを作る、というもの。「Green light - アーティスティック・ワークショップ」

棚やテーブルが並ぶ、どこかのアトリエのような部屋はオラファー・エリアソンの展示室です。ここで展示されている作品は「Green Light - アーティスティック・ワークショップ」というもの。ランプを組み立てる作業を通して、コミュニティや人間関係のあり方を考えるアートなのです。

彼はこのプロジェクトを、紛争地域から逃げてくる難民と、もとからの住人の間で緊張関係が高まるヨーロッパで始めました。ヨコハマトリエンナーレの会場でも、随時ワークショップが開かれます。

難民に限らず、環境問題、エネルギー問題に目を向けた彼の作品は、自然との付き合い方をもう一度考えさせてくれます。

>>砂漠でビール!? その裏側に見える社会問題とは。

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砂漠でビール!? その裏側に見える社会問題とは。

170815-yokohama07.jpgザオ・ザオ(赵赵)『プロジェクト・タクラマカン』2016年。美術館に突然現れた冷蔵庫。つい開けてみたくなります。

砂漠の真ん中で冷えたビールを一杯。そんな、一見楽しそうなアートを作ったのは中国・新疆ウイグル自治区出身のザオ・ザオ(赵赵)。会場には、タクラマカン砂漠で彼がビール・パーティを開いたときの写真と、冷蔵庫が置かれています。

風紋が美しいロマンティックな砂漠ですが、資源を巡って民族間の反発もある地域です。そう聞くと、のんびりビールを楽しむ気分もちょっと複雑なものになってきませんか?

170815-yokohama10.jpg風間サチコさんの『ぼんやり階級はんこ』。

170815-yokohama09.jpg風間サチコさんのはんこを捺してみました。

会場にはんこがあったので押してみました。風間サチコの『ぼんやり階級はんこ』という作品です。消しゴムを削って作った素朴なはんこですが、「ゆとり」「リア充」などネットスラングを含む自虐的な言葉が並びます。試しに「エゴイスト」と「ぼっち」をスタンプしてみたら、ちょっと情けない気分になりました。

>>ひとつひとつに物語のある、ジオラマを探し歩いて。

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ひとつひとつに物語のある、ジオラマを探し歩いて。

170815-yokohama02.jpgマップオフィス『飼い慣らされた島(日本)‑ 戦争の島』。海にまつわるものでできていて、タイトルとは裏腹に、この季節にぴったりな気がします。

日本文学や映画の断片から着想したというジオラマは、マップオフィスのインスタレーション『飼い慣らされた島(日本)‑ 戦争の島』の一部。

横浜美術館のアトリウム脇にある大階段に、このようなジオラマが点々と置かれています。島といっても単調なものではなく、いろいろな顔があることを教えてくれます。

170815-yokohama04.jpg中央はマウリツィオ・カテランの『無題』。つり下げられているのは作家自身です。右奥に見えるのは同じカテランの『スペルミニ』という作品。

今年のヨコハマトリエンナーレは、社会問題や政治にまつわるものが多く、全体にちょっとシリアスです。かといって、ある主義主張を押しつけるようなことはありません。

くすっと笑えるような作品も含めて、「こんな考え方もあっていいんだ」という多様性と自由さがあります。ちょっと奥まで見てみると面白い景色が広がる芸術祭です。

『ヨコハマトリエンナーレ2017』はこの横浜美術館のほかに、横浜赤レンガ倉庫1号館、横浜開港記念会館でも開催中。横浜赤レンガ倉庫1号館、横浜開港記念会館での展示はこちらをご覧下さい。

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ヨコハマトリエンナーレ2017 島と星座とガラパゴス
開催期間:開催中~11月5日(日)
開催場所:横浜美術館、横浜赤レンガ倉庫1号館、横浜市開港記念会館地下ほか
開場時間:10時~18時(最終入場17時)
※10月27日~29日、11月2日~4日の6日間は20時30日まで会場。(最終入場20時)
休)第2、4木曜
料金:一般¥1,800(ヨコハマトリエンナーレ 2017 鑑賞券)

横浜美術館
神奈川県横浜市西区みなとみらい3-4-1

●問い合わせ先:
tel:03-5777-8600(展覧会について)
tel:045-478-6090(チケットについて)
www.yokohamatriennale.jp

photos & texte:NAOKO AONO

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