フィガロが選ぶ、今月の5冊 間取りに引き出される、妄想を描いた13の物語。
Culture 2017.10.21
『間取りと妄想』
大竹昭子著 亜紀書房刊 ¥1,512
回廊のような細い廊下をくぐり、川に面して建つ三角形の部屋が、いつしか別の何かとなり、窓ガラスという薄い皮膜がなければ自分自身も溶けてなくなるような狂おしい肉体的な解放へと導かれる。「間取り」が、結界をひもとき「妄想」を引き寄せる装置になったのだろうか。想像力をかきたてられる。都市伝説とはこのようにつくられるのかもしれない。13の物語は、日常生活の場であるはずの部屋が異界への扉を開く瞬間を、ある時は官能的であり、またある時は、ふとした風の音にも虫の知らせを読み取ってしまう日本人のナイーブな感覚を、一片の静止画のごとく切り取っている。
*「フィガロジャポン」2017年10月号より抜粋
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