身近な電子レンジにまつわる"嘘、本当"。

Culture 2017.12.06

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電子レンジは私たちの食事に危険?Photo : iStock

哺乳瓶を電子レンジで温めるのは正しい? 食べる前に10分待つべき? 電磁波には危険があるの? 
いまやなくてはならない電子レンジについて、専門家とともに、すべての疑問にお答えします。

電子レンジの歴史を遡る

まずはじめに、電子レンジの発明は第二次世界大戦末に遡る。当時、軍事レーダー製造工場の労働者たちの間では、部品のひとつである”マグネトロン”で手を温められることが知られていた。1945年、レーダー関連のトップ企業、レイセオン社の社員であったアメリカ人技術者パーシー・スペンサーがこのテーマに取り組み、コンセプトを採用、実験の末に、”マグネトロン”を金属製の箱の中に納めることに成功する。電子レンジの誕生である。

1980年、販売が開始され、1990年にはフランス家庭のほぼ大半が電子レンジを備えるようになった。2017年、電子レンジは私たちの現代的なキッチンに欠かせない要素となっているものの、疑問は増える一方――。健康に害があるのでは? 野菜の栄養価に影響は? 味は変わらない? そんな疑問について、CRNS(フランス国立科学研究センター)の元研究員であり、ボーヴェの理工科大学UniLaSalleで料理と健康を専門に研究する科学者、ドクター・フィリップ・プイヤールとともに、真偽を確認していこう。

電子レンジで調理すると、食べ物の栄養価が減る?

これは間違い。
「一般的に、野菜や果物を筆頭に、どんな食べ物も、調理法はどうあれ、加熱すれば栄養価の一部は失われます」。フィリップ・プイヤールはこう指摘する。「加熱調理をすることで、ビタミン(とりわけビタミンC)と抗酸化物質が損なわれるからです」。実は、食品を大量のお湯の中で加熱すると、栄養素が湯の中に溶け出す傾向がある。もし、野菜のあらゆる栄養素を最大限に摂取したければ、沸騰したお湯で茹でる“イギリス式調理法”は避けるべき。そしていちばんいいのは電子レンジ。「電子レンジ加熱は調理時間が短く、水もそれほど要りません」。最高の方法は? との質問への答えは、「電子レンジで蒸すことです」!

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≫電子レンジで調理すると料理の味が変わる?

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ラタトゥイユの火の通り加減が均一によるよう、全体をかき混ぜる。Photo : iStock 

 

ラタトゥイユの火の通り加減が均一によるよう、全体をかき混ぜる。電子レンジで調理すると食べ物の味が変わってしまう?

これは、正しくもあり間違いでもある。
「じゃがいものソテーや、肉をフライパンで焼いたときの、こんがり茶色い焼き色。これはメイラード反応と呼ばれるものです」と氏は説明する。「これは、食品が熱源に直接触れる時に生じる、どことなくカラメルを思わせる風味のもとですが、電子レンジで調理する場合、この味は出ません。残念なことに、メイラード反応は、ビタミンを著しく減少させる原因でもあります。ですから、風味と調理法という二つの観点から見たら、一長一短なのです」。電子レンジの場合、この損失が比較的少ないというのが、CRNSの元研究員でもある氏の指摘するところ。また、「他の食材、例えば野菜を蒸したりするような場合は、味の違いはありません」。では、栄養素を失わずに、肉をおいしく調理するには?フライパンで数分焼き色をつけてから、電子レンジで加熱すること、だそう。


電子レンジで食べ物を温め直してはいけない?

これは、間違い。
「ただし」、と免疫栄養学の専門家でもある氏はすぐにこう付け加える。「生鮮食品でも冷凍食品でも、店で購入したものを温め直すときと、調理済みの料理、つまり冷蔵庫や冷凍庫に保存した食事の残り物を温め直すのは別問題。冷凍食品や、スープや牛乳といった生鮮食品を電子レンジで温めることには、何の問題もありません」。一方、冷蔵庫や冷凍庫で保存された調理済み食品に関して気をつけるべきことは、残り物を保存する際の規則を守ること、それだけ。ところが、「残り物を保存するときの注意が徹底されていないことが実に多いのです、その結果、作った料理を温め直すと味がなくなるという印象が残ってしまう」。規則が守られていれば、失われるものも、作りだされるものもなく(細菌という厄介者が増えるのは避けられないけれど)、なんでも温めることができる、というわけだ。


電子レンジで調理すると細菌が死滅?

これは正解。
「電子レンジで調理すると、細菌やウイルスは死滅します」。フィリップ・プイヤール氏の話によると、電子レンジを実験器具の殺菌に利用している試験所もあると言う。しかし、注意しておきたい。ここでも氏は、調理された食品と温めた食材の違い、生鮮食品や冷凍食品と調理済み食品を冷凍した場合の違いを考えて、と念を押す。何度でも言うが、食べ物の残り物を保存する際の決まり事と、それぞれの調理時間は、絶対に守らなくてはいけない。


電子レンジで調理した料理は、10分間置いてから食べるべき?

正しくもあり間違いでもある。
「電子レンジで調理した料理をすぐに食べることのリスクはやけどだけ。この件についてインターネット上に書かれていることの大半は、噂や固定観念の域を出ません。一方で、電子レンジで調理した後には、かき混ぜる方がいい場合がある。料理によっては、調理時間が異なる食材が使われているからです」。例えば? ラタトゥイユの場合、いちばん火が通りやすいのはトマト、次がズッキーニ、そしてなす。火の通り加減を均一にするためには、全体をよくかき混ぜるのが正解だ。

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電子レンジはがんのリスクを増やす?

これは間違い。
「知る限り、どんな研究からもそうした報告はなされていません。私は毎日、医師や研究者と仕事をしていますが、みな、仕事でも、日常生活でも、電子レンジを利用しています」。

電子レンジでプラスチックを温めてはいけない?

これは正解。
「とにかく、プラスチックを温めてはいけません。プラスチックには、環境ホルモンを筆頭に、好ましくない生成物が含まれています。料理をプラスチック容器に入れて温めることは危険です。プラスチックに含まれる成分が加熱されて料理に移る危険性があります」と氏は注意を促す。陶器、ファイアンス、ガラス、あるいは磁器製の、装飾のついていない皿(金や銀の縁取りのあるものだと、火花が飛ぶ危険がある)を選ぶようにしよう。

しかし、電子レンジが満場一致で支持されているわけではないということにも注意を払っておきたい。家庭電化製品に関する研究と客観的な判断が不足しているといって科学者たちを批判する、電磁放射線研究情報センター(Criirem)のような団体も存在している。

カバーは何に使うの?

電子レンジがトマトソースまみれになってしまった経験は誰にでもある……。フィリップ・プイヤールは微笑みながら、「カバーは主に、液体が飛び散るのを防ぐために使うものです」と話す。「場合によっては、蒸すのと同じような効果も多少ありますが」。

電子レンジで赤ちゃんの哺乳瓶を温めてもいいの?

「もちろん、問題ありません。ただし哺乳瓶はガラス製のものに限ります」。ちなみに、哺乳瓶の乳首は間違えて入れないように!


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texte : Anne-Laure Mignon(madame.lefigaro.fr)

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