サッカーのヘディングで認知症に? 元イングランド代表キャプテンが不安を告白

Culture 2017.12.04

from Newsweek

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Ⓒcaiaimage/amanaimages

シアラーが認知症診断を受診

サッカーのヘディングで認知症の危険性が高まる可能性をめぐり、イングランドのサッカー代表チームでかつてキャプテンを務めたアラン・シアラーが、認知症を抱える元サッカー選手たちを守るよう関係団体に訴えている。

シアラーは、英国公共放送BBCが放映したドキュメンタリー番組「Alan Shearer: Dementia, Football and Me」(アラン・シアラー:認知症、サッカー、そして私)に出演。自分が認知症になる可能性があるのか、脳のスキャンや血液検査などを受けた。BBCのスポーツ・サイトに掲載された検査の様子を伝えるビデオによると、シアラーの脳は全く異常がなかったとのことで、まずは一安心だ。

というのもデイリー・ミラーによると、シアラーはかつて現役時代、1日に最高で150回ものヘディングの練習を行なってきた。プレミア・リーグでシアラーが記録したゴール260回のうち、5回に1回はヘディングだったという。

2002年にはヘディングによる認知症の死亡例

サッカーのヘディングと認知症はかねてから関係性が指摘されてきた。イングランドの元サッカー選手、ジェフ・アストルが2002年1月に59歳で亡くなった時、検死官により結論づけられた死因は慢性外傷性脳症だった。「度重なるヘディングで脳に受けた損傷」が原因で認知症となり、これは職業病だと検死官に指摘された。ヘディングが原因の認知症で死亡したと公的に認められた最初の英国人サッカー選手となった。

アストルは生前、サッカー・ボールのヘディングはまるで「レンガが詰まった袋」をヘディングするかのようだと表現していた、とテレグラフは当時の記事で伝えている。

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>>何度か小規模な研究は行われてきた

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「英国で認知症に苦しむ人は85万人いるが、この中には多くのサッカー選手も含まれる」とシアラーはBBCに語った。とは言っても、サッカー選手の組合であるプロ・サッカー選手協会(PFA)でも、5万人の会員のうち何人が認知症を患っているか分からないとしている。デイリーメールによると、1966年のサッカー・ワールドカップで優勝した時のイングランド・チームで今も存命の9人のうち、3人がアルツハイマーを患っている。

「サッカー界は、認知症を抱えた高齢の元選手のことも面倒を見なければいけない。現役を引退したらお払い箱だという考え方を終わりにしなければ」とシアラーは訴えている。

「サッカーで脳に損傷が起こるとは...」

イブニング・スタンダードによると、イングランドのサッカー協会(FA)とプロ・サッカー選手協会(PFA)の共同委託により、元プロ・サッカー選手に認知症などの病気が多いのかを包括的に研究する団体が近々立ち上げられる予定だ。

元サッカー選手と認知症の関係について、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンでの調査などこれまで何度か小規模な研究は行われてきたが、本格的なものはまだ行われたことがない。

シアラーは番組内で、「プロとしてサッカーをプレイするなら、後年で膝や足首、腰に問題が出てくるだろうとは分かっているもの。私もそうだ。でもサッカーと脳の病気が関連するなんて思いもよらなかった」と語り、さらなる調査の必要性を述べている。

FAの医療責任者はミラー紙に対し、現役を引退したプロ選手を対象に研究を行い、できるだけ早く結果を出すようにする意向だと語った。また、脳に損傷が起こるとの証拠が出てくれば、子供のヘディングを禁止する可能性もあるとも話している。

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ニューズウィーク日本版より転載

文:松丸さとみ

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