写真家・鈴木理策の『Water Mirror』展へ。
Culture 2018.01.19
© Risaku Suzuki, Courtesy of Taka Ishii Gallery
水鏡とは、水面に映り込む影のこと。写真家・鈴木理策の最新作品集『Water Mirror』は、木立に囲まれた湖や睡蓮の浮かぶ池など、水面に映し出された風景を捉えています。
なめらかでつややかな水面に浮かぶ景色は、はっとするほどみずみずしく澄みわたり、心を掴みます。どこまでが実像でどこからが虚像かあいまいで、見ているうちにぼんやりとさまざまなことが思い浮かんできます。
© Risaku Suzuki, Courtesy of Taka Ishii Gallery
水面にさざ波のようなブレのある写真は、別の世界の入り口が現れているよう。大判カメラによる精緻なディテールとブレやボケが混在する写真は、まるで京都の庭園を見ているかのような心地よく抽象的な気持ちを誘います。
「見ること」を純粋に追求する鈴木理策。ライフワークともいえる故郷・熊野の撮影、桜、雪のシリーズから一貫して、写っているものではなく、見るという体験に焦点を当ててきました。たとえば、代表作のひとつ『桜』では、花びらに埋もれるような、酔うような満開の桜の体験を視覚化しています。
今回の展覧会では、昨年刊行された同書をテーマに、オリジナルプリントがもつ鮮やかな色調がどう再現されたのかを明らかにするそう。思わず引き込まれてしまう、官能的なまでに美しい水の質感が作品の大きな魅力だけに、興味が尽きません。なにより見たことのない風景を閉じ込めた水鏡に浸ってみてください。
© Risaku Suzuki, Courtesy of Taka Ishii Gallery
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会期:1月20日(土)~ 2月24日(土)
CASE TOKYO SPACE
東京都渋谷区渋谷2-17-3 渋谷アイビスビルB1
tel : 03-6452-6705
営)11時~19時
オープニングレセプション : 1月20日(土)18時~20時
鈴木理策 x 田中義久によるトークイベント: 1月27日(土)17時~18時30分
texte : CHISA SATO