フィガロが選ぶ、今月の5冊 サリンジャーが遺した、瑞々しい9つの短編。
Culture 2018.12.01
サリンジャー最後の作品を、日本限定のアンソロジーで。
『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース16、1924年』
J・D・サリンジャー著 金原瑞人訳 新潮社刊 ¥1,620
大人になってサリンジャーを読むのに勇気がいるのは、あの頃の気持ちをまだ覚えているか試される感じがするからだろう。入手困難な短編9編を集成した日本限定のこの作品集では、『ライ麦畑でつかまえて』のホールデンが相変わらず行き場をなくして苛立っているし、自殺したグラース家のシーモアの手紙を読むこともできる。そして、これがこの作家の最後の作品になった。イノセンスとは、少年期の一過性のピュアネスではなく、その後も続く長い旅の始まりなのかもしれない。
【関連記事】
吉本ばななが食べることを通して綴る、家族について。『切なくそして幸せな、タピオカの夢』
柴崎友香が、東出昌大を文学小説にキャスティング。『つかのまのこと』
*「フィガロジャポン」2018年11月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI
BRAND SPECIAL
Ranking