映画『半世界』のいい男たち、取材現場から。 阪本順治の眼力。
Culture 2019.01.22
2019年2月15日より公開される映画『半世界』。本作に出演する、稲垣吾郎さん、長谷川博己さん、渋川清彦さん、阪本順治監督の、いい男たち4人にフィガロジャポン本誌3月号掲載記事のため取材した際の舞台裏を紹介。互いの印象も個別インタビューで語ってくれた素敵な男たち、第4回目は、いま日本映画界で注目される役者たちにと本作に、魂を吹き込んだ阪本順治監督。
そもそもこの企画を、「いい男たち」をキーワードにして行おうと考えたのは阪本順治監督の存在だった。フィガロジャポン2018年8月号の第一特集『ウワサの男。』にて、フィガロでの連載「活動寫眞館」を手がけてくれている齊藤工さんが「私が萌える映画人」のひとりとして名前を挙げたのが阪本監督だった。加えて、『半世界』の試写に訪れた時、その場にいた監督が「大きな世界を撮ってきた時間が続き、今度は日本の小さな世界を撮ろうと思った」という言葉に、すごく惹かれたのだ。
本誌掲載のインタビューでは、このことについて詳しく説明されている。
2018年11月某日。新宿駅から歩くには遠い稽古場にて取材は行われた。渋川清彦さんも同日に取材だった。
阪本監督のポートレートは、外の自転車置き場で撮影した。カメラマンが、その場所に漂う光の佇まいが好きだという理由からだった。
カメラマンからは少しだけしか言葉をかけず、あえて距離を置いて撮影するアプローチは、今回4人全員に対して共通にしていた。
カメラマンは監督に、今回の映画のタイトルである「半世界」のインスピレーション源となった、小石清という写真家の言葉について尋ねていた。
写真展などによく足を運ぶのですか?という問いかけに、「何か得ようと、行くこともあるけれど……」と監督。会話は短く終わった。
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稲垣吾郎さんのことを、「他者に対応することで、自分自身を表現できる人物」と評していた。稲垣さんは撮影の合間にずっと本を読んでいたそうだ。何の書物か尋ねると、「谷崎潤一郎です」。本作で共演した石橋蓮司さんが、稲垣さんのブログを読んで、「すごく文章が上手で内容もおもしろいよね」と阪本監督に伝えたエピソードも教えてくれた。以前、香取慎吾さんと映画を撮影していた時も、撮影の合間に香取さんが目をつむって鳥の声に耳を澄まし、いつまでもそうしていたことが阪本監督の心に残っているそうだ。
長谷川博己さん、渋川清彦さん含め、「俳優という職業は知力がなければできない。他者を解釈することが要求されるのだから」という監督の言葉が深く心に残った。
今回、事前にインタビュアーと打ち合わせして、尋ねたいと思っていたことがある。「監督はモテますよね?」
実際、女性映画ジャーナリストや、映画宣伝マンにもファンが多い人だ。女性からだけでなく、男性からも。実際、『半世界』試写後、監督のまわりに女性がむらがったのを見た。
結婚しないのは、「映画というものが気になりすぎて、それ以外のことに心を配ることができない」からだそう。本誌掲載のインタビューの終わりのほうでは、監督の人生についても触れられているので、ぜひ読んでいただきたい。
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『半世界』
●監督・脚本/阪本順治
●出演/稲垣吾郎、長谷川博己、池脇千鶴、渋川清彦
●2018年、日本映画
●120分
●配給/キノ・フィルムズ
●2月15日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国にて公開
©2018『半世界』FILM PERTNERS
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photo : MASAHIRO SAMBE(PORTRAIT)