90年代カルチャーを躍動感いっぱいに描く『mid90s』。

スケボー文化と街の脈動を、まばゆく蘇らせた青春映画。

『mid90s ミッドナインティーズ』

兄弟喧嘩で内気な兄（ルーカス・ヘッジズ）に負けてばかりの13歳の小柄な美少年が、スケボー少年たちとつるみ出す。兄が属するファミコンと音楽のマニア空間から、1990年代半ばのヒップホップ文化へと直に繋がるロサンゼルスの異世界へ。16ミリフィルムのざらついた質感、機動性の高い運動感、不測の事態がそれにブレーキをかける切断の鋭さ。性格俳優ジョナ・ヒルの半自伝的作品で、映画の鼓動が早鐘を打つような才気横溢の初演出だ。青春期の憧れが現実の残酷さに揉まれ、美少年の甘い顔相が精悍になることこそが美しい。

＊「フィガロジャポン」2020年10月号より抜粋

【関連記事】
天才子役とステージパパの痛みと再生。『ハニーボーイ』
『リトル・ジョー』が描く幸福と母性、クリエイション。