時代の変わり目に読む、私のとっておきの一冊 転生しながら中国の歴史をたどる、圧倒的なおもしろさの大長編。
Culture 2022.01.02
書物からもらったメッセージで生き方や価値観が変わることもある。クリエイター32人が、いま読み直したい本、薦めたい本とは?
いしいしんじ
作家
圧倒的におもしろく、とうとうと流れる大長編。
↓
『転生夢現』上・下
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莫言著 吉田富夫訳
中央公論新社刊 各¥3,080
「1950年1月1日、閻魔大王に無実の罪を訴える“わし”は、ロバのくさい血を浴びせられ、気が付けばロバに転生している。その後も牛へ、豚へ、犬へと、語り手は転生を重ね、文革から開放へ、21世紀に向けて発展する、中国の歴史を目の当たりにし、動物のそれぞれの声音で物語る。こんな時代だからこそ、太い川のようにとうとうと流れる大長編を読んでみては。そのためには、ストーリーが圧倒的におもしろくあってほしい。本書は、その点、全世界の批評家のお墨付き。こんなふざけた、豊かな声の、胸打たれるノーベル賞作家はほかにいません」。人の心をもって6度の転生を重ねる、夢のような物語。
Shinji Ishii/『麦ふみクーツェ』( 新潮社刊)で坪田譲治文学賞。近著に『マリアさま』(リトルモア刊)、『よはひ』(集英社刊)など。現在は京都府在住。
*「フィガロジャポン」2021年11月号より抜粋
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