Mame Kurogouchiを構成する本:「他者」と「私」の関係性を見直す4冊。

Culture 2021.10.14

ブランド創設10周年を迎えたMame Kurogouchi。これまでの軌跡を描いた本の出版に伴って、黒河内真衣子がセレクトした本から16 冊を厳選。いまの時代とリンクする4つのテーマで紹介する。

芸術家たちの人生、男女の恋愛、窓から見える景色……。「私」と対峙するものはすべからく「他者」であり、 「他者」を知ることはよりよく生きることに導いてくれる。


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『戸惑う窓』 堀江敏幸著 中央公論新社刊 ¥792
窓にまつわるエッセイ集。内と外、光と影、私と他者、生と死の境界線である窓をカメラ や絵画にたとえながら、主客がひっくり返る合わせ鏡のような装置について、私的体験談とともに語られる。筆者が暮らした生家や留学先のパリ、作家や画家が眺めた景色は窓を通すことで人類共通のノスタルジーを呼び起こす。思考の自由な羽ばたきをもたらす窓に 向かう時、私たちの魂は解き放たれるのだ。

『錦繍』
宮本 輝著 新潮社刊 ¥605
かつて夫婦だった男女が、偶然の出会いをきっかけに手紙のやりとりを交わすことで、過去の事件が明らかになる。心情をストレートに吐露する書簡というスタイルは語り手にと ってのセラピーの役目を果たしながら、男女の葛藤が祈りや慈悲へと昇華していくさまを伝える。過去・現在・未来という色とりどりの糸で織りなされた男女の物語は、切なくも 壮大なタペストリーのごとき結末を迎える。

『Charlotte Perriand and Photography:A Wide-Angle Eye』
ジャック・バルサック著 5Continents Editions刊 ¥9,350/ノストスブックス
フランスの家具デザイナー・建築家のシャル ロット・ペリアンが1927年から撮り始めた写真を編集した一冊。鉄筋の建築物や船の甲 板、雪山など、ダイナミックな構図の写真か ら魚の骨、石、漂流物、労働者のポートレートまで、近代化を遂げた20世紀における建築の役割が、ひとりの女性の視線を通して鮮やかに現れる。30年代の芸術活動アールブ リュットの関連性など、旺盛な活躍にも注目。

『Frida by Ishiuchi』
石内 都 写真 RM Verlag刊 ¥13,200/ノストスブックス
メキシコを代表する画家、フリーダ・カーロ 没後50年を経て公開された遺品を、石内都が財団から依頼されて撮影。色鮮やかな民族衣 装や不自由な身体を補うためのコルセットは何度も繕った痕跡が残されていて、情熱の画家の生きざまが伝わってくる。使いかけのレブロンのネイルやゲランの香水瓶をも愛情あふれる光で包み込んだ石内の写真には、紛れ もなくふたりのアーティストの魂が交錯する。

*「フィガロジャポン」2021年11月号より抜粋

photography: Masahiro Sambe styling: Yumeno Ogawa text: Junko Kubodera cooperation: ew.note, tmh.

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