【前編】歴史に残る年に! カンヌ映画祭2021を振り返る。

Culture 2021.10.17

コロナ禍による中止を経て、2年ぶりの開催を迎え、お祭り騒ぎだった南仏の7月。28年ぶりの女性監督のパルムドール受賞や、記念すべき年の話題作をレポート。

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左から、歌手のアンジェル、俳優サイモン・ヘルバーク、女優マリオン・コティヤール、レオス・カラックス監督、俳優アダム・ドライバー、ロックバンドのスパークスのラッセル・メイルとロン・メイル。オープニング『Annette』(原題)のレッドカーペットにて。

2020年の年明けから猛威をふるい始めた新型コロナウイルスは、映画界にも多大な影響を与えているが、映画祭の最高峰であるカンヌ国際映画祭も例外ではない。昨年は、延期の末に中止。今年は、パンデミックの終息を期待して(期待通りにはいかなかったが)、早々に5月から7月に延期し、2年ぶりに無事にリアル開催を実現した。ワクチン摂種証明書やPCR検査の陰性証明の提示を義務づけるなど、コロナ対策を施しての開催となり、来場者も通常の約4万人から2万8千人ほどに減った。しかし、カンヌの街には季節柄リゾート客があふれ、スターたちも例年同様にレッドカーペットを闊歩していたので、ともすればコロナ禍だと忘れそうなほどの華やかさだった。

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コンペティション部門に選出された作品は24本。例年だと18〜22本なのだが、昨年の繰越分もあり、オープニングを飾る予定だったウェス・アンダーソンの『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』も含まれている。ほかにもジャック・オディアール、アピチャッポン・ウィーラセタクン、フランソワ・オゾン、ナンニ・モレッティなど、カンヌ常連の有名監督が名を連ねた。そうした大物監督たちを抑えてオープニング作品に選ばれたのは、フランスのレオス・カラックスの『Annette』(原題)だ。やはりカンヌのコンペで上映された『ホーリー・モーターズ』(2012年)以来、9年ぶりの長編である本作は、アメリカのロックバンド、スパークスの音楽を使ったアダム・ドライバーとマリオン・コティヤール主演のミュージカルだ。寡作のカラックスだが、映画祭の「復活」には、やはり天才監督の復帰がふさわしい。

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復帰といえば、昨年のコンペティション部門の審査員長を務めるはずだった米国の監督スパイク・リーも、スライドして今年の審査員長の座についた。審査員団は、ほかに、セネガル出身の女優で監督のマティ・ディオップ、アメリカの女優で監督のマギー・ギレンホール、オーストリア人監督のジェシカ・ハウスナー、フランスの歌手で女優のミレーヌ・ファルメール、フランスの女優で監督のメラニー・ロラン、フランスの俳優タハール・ラヒム、韓国の俳優ソン・ガンホ、ブラジルの監督で評論家のクレベール・メンドサ・フィリオの9人だ。この10年間、ジェンダーイクオリティはカンヌ国際映画祭でも重要なトピックスだが、9人のうち5人が女性という審査員の男女比は、最低限の基準をクリアしたにすぎない。というのもコンペ24作品における女性監督作品はたった4作で、半数にはほど遠いからだ。もっとも選定は作品の質重視で行われるべきで、政治的なバイアスがかかってはならない、という意見も根強くあり、コンペ作品の選定におけるジェンダーイクオリティ問題はまだ議論の余地があると言えるだろう。

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審査員長スパイク・リーは、最高賞を先に発表するというミスも!

しかしながら今年は、男女の格差是正問題について、ある意味、革命的な年になった。最高賞がジェーン・カンピオン『ピアノ・レッスン』(1993年)以来、28年ぶりに女性監督の手に渡ったのだ。受賞したのはフランスの新鋭ジュリア・デュクルノーの『Titane』(原題)。子どもの頃に交通事故で頭に金属(チタン)を埋め込まれた若い女性が主人公のホラー映画である。プレミア上映後は、その表現の過激さもあって評価が分かれたが、圧倒的な勢いで下馬評が高かった濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』やカラックスの『Annette』(原題)を退け、パルムドール(最高賞)に輝いた。さまざまな意味で、記念すべき年となった。

後半はこちら

*「フィガロジャポン」2021年11月号より抜粋

text: Atsuko Tatsuta

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