見知らぬ国を旅するような経験を......冬の訪れを感じる、今月の新譜3選!
Culture 2021.11.01
いま世界で話題の3組新譜をご紹介! エモーショナルなロックやジャズ、名曲にオマージュを捧げたラップが、イヤフォンを通じてあなたを旅路に誘います。
新しい扉を開く情感豊かなニューフェイス。
『バウハウス、ラパートメント』/ジュリア・バルドー
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イタリア生まれ、英国マンチェスターを拠点に活動する話題のアーティストが、ついに初のアルバムを発表。乾いたギターの音色と、シンプルなバンドサウンドをベースにした楽曲群は、エモーショナルなメロディやアレンジも相まって、USインディーロックやオルタナティブロックに通じる。しかし、凛としたボーカルが際立っているため、どこか品のよさを感じられるだろう。過去のトラウマやメンタルヘルスの問題なども歌詞に折り込みながら、まるで自叙伝を綴るように淡々と歌う姿からは、歌い手としての芯の強さが滲み出ている。
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オリエンタルな響きと歌で神秘の世界へ。
『ベッカ・スティーヴンス&ザ・シークレット・トリオ』/ベッカ・スティーヴンス&ザ・シークレット・トリオ
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ジャズシーンのみならず、ロックやフォークなど、さまざまなジャンルを横断して注目を集めるシンガーソングライターの新作は、中東の音楽へ再接近。ニューヨーク在住のトルコやアラブの音楽を奏でるミュージシャン3人とコラボレートしている。クラリネットに加え、ウードやカーヌーンという民族楽器の調べが新鮮で、繊細なメロディと緻密なコーラスワークが美しく融合。異色ながら、確固たるボーカル作品に仕上がっているのがさすがだ。浮遊感に満ちたエキゾティックなアンサンブルに乗せて、見知らぬ国へ旅するような感覚にさせてくれる。
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いま最も注目を集めるカルチャーアイコン。
『サムタイムス・アイ・マイト・ビー・イントロヴァート』/リトル・シムズ
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ケンドリック・ラマーやアンダーソン・パークが絶賛し、メディアの評価もずば抜けて高い。女優としての一面も持ったUKの音楽シーンで常に話題沸騰中のラッパーの新作は、予想以上に濃厚な作品となった。最新のビートを駆使すると同時に、ソウルクラシックから大胆にサンプリングを施すなど、サウンド面の充実ぶりは文句なし。社会的な側面と内省的な情感をミックスしたライムを構築し、高速のラップを矢継ぎ早に繰り出していく。時には暴力的な表現も取り入れたスリリングな世界を、安定した音楽センスで包み込んだ圧巻の大作だ。
*「フィガロジャポン」2021年11月号より抜粋
text : Hitoshi Kurimoto