大ヒットドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」(SATC)の続編「アンド・ジャスト・ライク・ザット.../ セックス・アンド・ザ・シティ新章」の配信が、日本でも2021年12月29日よりU-NEXTで開始となった。
90年代後期にスタートしたSATCが世界中の女性たちを虜にした理由のひとつは、ベテラン衣装デザイナー兼スタイリストのパトリシア・フィールドの存在だった。彼女のカリスマ的なファッションセンスで選び抜かれた衣装は今作でも期待されていたものの、続編ではパトリシアが衣装を担当しないことが早くから発表されていた。
理由は、彼女が現在手がけるネットフリックスのラブコメディ「エミリー、パリへ行く」の撮影とバッティングするからで、SATC新章に参加しないのはあくまでもスケジュールの問題だと報じられていた。
では、今回の衣装を誰が担当しているかというと……。パトリシア・フィールドの元アシスタントとして、ともにSATC時代に衣装を担当し、彼女が経営するブティックでも働いていたモリー・ロジャースが元同僚のダニー・サンティアゴとチームを組んで、パトリシア・フィールド色を踏襲。
モリーはある女性誌のインタビューで「SATC新章でも、主人公の彼女たちはGirls(可愛い女性たち)です。人生の後半戦だからといって、ファッションのスタイルを変えることはありません」と語っている。
ファッションについては評価する声が多く、12月9日の第1回配信から1カ月も経たないが、すでにインターネット上のファッションの消費行動や検索結果に影響を与えていることがわかっている。WWDによると「第1話の配信後すぐに、ドラマの中で出てきたファッションの検索数が急上昇した」という。
---fadeinpager---
第1話の冒頭、ミランダ、シャーロットとともにブランチをしている場面でキャリーは、クロード・モンタナのヴィンテージリネンのジャンプスーツにドリス ヴァン ノッテンの花柄のジャケットを羽織り、足元はサンローランのヒールというコーディネート。合わせたヴィンテージのメタルチェーンのバッグと羽根付きの帽子のインパクトも印象的なスタイルだった。
配信後このキャリーが着用した衣装が明らかにされると、ブランド名「ドリス ヴァンノッテン」の検索数が1150%、「リネンジャンプスーツ」という検索数は500%も増加したという。今後の配信後も「アンド・ジャスト・ライク・ザット」の衣装への注目はますますヒートアップしそうだ。
---fadeinpager---
肝心のストーリーには賛否両論。
一方、SATC新章そのものへの専門家の評価には賛否ある。たとえば、第4話の配信後ニューヨークタイムズのあるコラムニストは「SATCは成功、お金、幸運を手に入れることが中心に描かれていたが、続編はバーニーズ(倒産したデパート)、サマンサ役のキム・キャトラルやスタンフォード役のウィリー・ガーソン(昨年9月に死去)の不在など喪失に満ちている」と、しっくりきていないようだ。また多様性の欠如が指摘されたSATCの挽回を各シーンで図っているが、それが仇となっているとし「無理があり、再起動の試みがうまく機能していない」と低評価を下している。
ポップカルチャー系のニュースサイトAVクラブも、サマンサの欠員に加え、ビッグ役のクリス・ノースが実生活におけるセクハラで告発されるなどイメージダウンの要素を挙げ「続編というのはどんなドラマも成功するのが難しく、SATC新章もまだ軌道に乗れずもがいている」としている。
text: Kasumi Abe

在ニューヨークジャーナリスト、編集者。日本の出版社で音楽誌面編集者、ガイドブック編集長を経て、2002年に活動拠点をニューヨークへ。07年より出版社に勤務し、14年に独立。雑誌やニュースサイトで、ライフスタイルや働き方、グルメ、文化、テック&スタートアップ、社会問題などの最新情報を発信。著書に『NYのクリエイティブ地区ブルックリンへ 旅のヒントBOOK』(イカロス出版)がある。