エリザベス女王「カミラを王妃に」の発言に、英国マスコミの反応は?

Culture 2022.02.09

カミラ夫人は、エリザベス女王にとってのフィリップ王配のような、チャールズ皇太子を支える存在になりうる」と2022年2月6日の「テレグラフ」紙は見出しに掲げた。同紙に限らず、エリザベス女王が在位70年にあたって発表した意外な内容に反応して、多くのメディアが各々の見解を表明した。

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ウィンザー城での式典に出席するエリザベス女王とカミラ夫人。(2018年6月18日) photo: Abaca

在位70年を迎えたエリザベス女王は声明を発表し、チャールズ皇太子の妻であるカミラ夫人が将来、王妃(クイーン・コンソート)になることを告げた。これに対する英国マスコミの反応は分かれた。

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2022年2月5日、エリザベス女王はコーンウォール公爵夫人、カミラ・パーカー・ボウルズがいつの日か王妃(クイーン・コンソート)となることを明らかにした。「やがて時が経ち、息子のチャールズが王になったとき、息子と妻のカミラ夫人にみなさまからきっと、私と同様の支持をいただけることでしょう」と、女王は続けた。チャールズ皇太子の再婚相手であるカミラ夫人は長い間不人気だったが、いまや彼女に好意的なイギリスメディアも多い。

「カミラ夫人の治世で王室は栄えるだろう」とまで言い切ったのは、2022年2月7日の「デイリーメール」紙だ。このタブロイド紙は、女王の決意を「素敵で素晴らしく、と同時に賢明で分別あるもの」と評した。さらに、ダイアナ妃の後を継ぐことは、カミラ夫人にとって「簡単なことではなかったが、その静かな威厳とユーモア、そして目に見える思いやりで、この難題に立ち向かった」と持ち上げた。「スペクテイター」誌も、長い不遇の時を経て、カミラ夫人の立場が徐々に良くなってきたことを称賛している。「カミラ夫人はいかにして冷遇された存在から脱したのか」と題する記事でピーター・ハントは、「かつてはありえない話だったのが、今は現実のものとなっている......女王の驚くべき介入のおかげだ」と述べた。

 

 

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「この結婚には3人が存在していた」

ピーター・ハントはさらに、「1995年11月、悲しくも有名になってしまったあのBBCの番組「パノラマ」のインタビューでダイアナ妃が『この結婚には3人が存在していた』と語った後、このような結末を予想できた人はいなかっただろう」と続けた。1995年、ダイアナ妃は、夫がカミラ夫人と不倫関係にあることを、イギリスのテレビではっきりと認めた。イギリス国民の間でカミラ夫人への反感が高まったのも無理はない。

「こうした国民感情、そしてカミラ夫人が王妃となることに反対する世論調査結果を踏まえて女王は時間をかけた」とピーター・ハントは語る。ダイアナ妃が亡くなってから8年後の2005年にチャールズ皇太子とカミラ夫人が再婚した際、チャールズ皇太子が王となった暁にカミラ夫人の称号が王妃(クイーン・コンソート)ではなく、国王夫人(プリンセス・コンソート)になることを王室が発表したほどだった。20年後の今日、王室記者のリチャード・パーマーは、エリザベス女王の今回の発表を「大きな方向転換」と評した。

 

 

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評判の回復

カミラ夫人にとって面白くない状況だったことは確かだ。そこで彼女は評判を回復するための作戦を開始した。まずはイギリス国民からだ。2022年2月6日の「テレグラフ」紙に「カミラ夫人はいかにしてイギリス国民の心をつかんだのか」という見出しが躍った。その答えは「17年計画、世論調査、説得力」。また、「メグジット」騒動の間、カミラ夫人は「王室の安定に陰ながら貢献した」と同紙は伝えている。

リチャード・パーマーによれば、「カミラ夫人は、1990年代から2000年代にかけて、チャールズ皇太子とダイアナ妃の結婚が失敗した原因として自分に向けられたイギリス国民の敵意を克服した」と言う。その一方で、世論調査では、カミラ夫人が王妃(クイーン・コンソート)になることにイギリス国民は「常に」反対してきたことも指摘する。そんな状況の中でカミラ夫人はイギリスメディアも含めて少しずつ支持者を増やしてきた。「カミラ夫人はうまく立ち回った。メディアと緊密な関係を保ち、とりわけ「デイリーメール」紙とは親密だ」とピーター・ハントは言う。

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「女王の評決を受け入れる」

しかし、同じ「デイリーメール」紙に掲載されたニュージーランド生まれのジャーナリスト、ダン・ウートンの論説はややトーンが異なる。「カミラ夫人が王妃になると思うと不安になる」という書き出しではあるが、それでも王室の地位はそれを継承する人の「善行と献身によって得られるという考えに基づいて、女王の評決を受け入れる」と続けている。さらに「ハリー王子とメーガン夫人はこれを見習うべき 」とまで言っている。

一方、作家のヒューゴ・ビッカースは、同紙のコラム欄で女王の決断を「妙技」と呼んでいる。「2005年のチャールズ皇太子との再婚以来、カミラ夫人が模範的な妻であり、王室の一員であることに疑いの余地はない。他の女性だったら過去に自分を批判した人たちに対して執念深く、復讐しようとまで考えたかもしれない。カミラ夫人はそのようなことはしなかった。女王は、カミラ夫人がチャールズ皇太子の伴侶としてこれまで果たしてきた、そして今後も果たしていくであろう重要な役割を認識していることを明確に示した」と語った。

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おとぎ話

「ザ・サン」紙は批判的だ。見出しには「家庭を崩壊させたカミラ夫人はいかにして未来の王妃となったか」とある。そして記事は「長年、公の場で物笑いの種になった挙句、ダイアナ妃の亡霊に取り付かれたロイヤルカップルは、ついに女王自身による究極の承認を手に入れた」と続く。「王室のおとぎ話を終わらせたと一般大衆の大半が非難した」カミラ夫人の「見事な」人気復活。カミラ夫人にとって今、本人のおとぎ話が始まろうとしている。

text: Chloé Friedmann (madame.lefigaro.fr)

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