英国王に代々伝わる、王冠にはめ込まれた「呪われたダイヤ」とは?

Culture 2022.02.09

エリザベス女王在位70年にあたってサプライズで発表した声明により、チャールズ皇太子の妻には王妃(クイーン・コンソート)の称号が与えられることになった。イギリスのクイーンの王冠は、伝説のダイヤモンド、「コ・イ・ヌール」をはめ込んであることで有名だ。

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伝説のダイヤモンド、「コ・イ・ヌール」がはめ込まれたギリス王室の王冠。photo: Tim Graham Photo Library via Getty Images

イギリス王室が所有する数多の財宝の中でも、最も有名なのがこの王冠だろう。それはロンドンの名所、ロンドン塔に展示されているからという理由だけではない。1937年、イギリス王室御用達ジュエラーであるガラード社(ダイアナの婚約指輪も同社が手がけた)がジョージ6世の依頼で制作し、1953年にはエリザベス女王が戴冠式で着用したこの王冠には2800個ものダイヤモンドが目もくらむばかりに散りばめられている。そしてその中央に燦然と輝くのがペルシャ語で「光の山」を意味するダイヤモンド、「コ・イ・ヌール」(105.6カラット)なのだ。

「コ・イ・ヌール」はこの王冠に使用されている大半の宝石同様、植民地時代のインドからヴィクトリア女王に贈られたものだ。このダイヤモンドは常に人々の羨望の的だった。もっとも、男性に不幸をもたらすという言い伝えがあることから迷信深いヴィクトリア女王は着用するのは王族の女性のみというルールを定めた。

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ロンドン塔

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1953年のエリザベス女王の戴冠式。photo: Hulton-Deutsch Collection/CORBIS/Corbis via Getty Images

この伝説のダイヤモンドはいま、イギリス政府とインドとの間で争いの種となっている。インドは同国の歴史の一部であるこの宝石がロンドンにあるのはおかしいと返還を請求しているからだ。もっともそのはるか以前からインドの一地方が、いやインド大陸全体が「コ・イ・ヌール」をめぐって争ってきた。

このダイヤモンドは1739年にムガル帝国からペルシャ王に渡り、1800年代始めにはシク王国の君主、ランジート・シングの手に渡った。ランジート・シングは宝石を狙うイギリス東インド会社から守ろうとしたが彼の死後、イギリスと戦ったシク王国は敗北し、1849年にラホール条約を締結、イギリスはついにこのダイヤモンドをシク王国最後の君主のドゥリープ・シングから手に入れることになった。ヴィクトリア女王はその後、1855年にヴェルサイユ宮殿で行われたナポレオン3世の舞踏会など様々な機会でブローチやティアラとしてこのダイヤモンドを何度も着用した。その後、前述のように王冠にはめ込まれたのだった。

これまで進展のなかったインドの返還要求だが、数日前にエリザベス女王によってカミラ夫人の将来の称号に関する直々の発表があったことから再び注目されている。2002年のクイーン・マザーの葬儀以降、ロンドン塔の展示室から出ていないこの王冠を、チャーズル皇太子の戴冠式に果たして彼の妻は着用するのだろうか。あるいは、外交上の配慮で遠慮するだろうか。

text: Anne-Sophie Mallard(madame.lefigaro.fr)

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