「あの人にはもう関わらない」ブリトニー・スピアーズが批判する元マネージャー、ルー・テイラーとは何者か?

Culture 2022.03.05

会計士からセレブのマネージャーに転身したルー・テイラーは、成年後見人制度の管理下に置かれていた歌手ブリトニー・スピアーズを利用して財を成し、ロサンゼルスで成功したのではないかと言われている。

01-220304-britney-spears.jpg

ブリトニー・スピアーズの元ビジネスマネージャー、ルイーズ・"ルー"・テイラーは、ブリトニー・スピアーズのおかげで富を築いたと非難されている。(ロサンゼルス、2019年12月12日) photo: Abaca Press

「あの人には関わらないわ。噛み砕かれて吐き捨てられるのがオチだから!」Netflixのドキュメンタリー『ブリトニー対スピアーズ―後見人裁判の行方―』の制作陣がルイーズこと“ルー”・テイラーについて尋ねると、ブリトニー・スピアーズの元アシスタント、フェリシア・クロッタはそう答えた。トライスター社創業者であるビジネスマネージャーのルー・テイラーの名は、アメリカでは有名だ。2021年11月にブリトニー・スピアーズの後見が解除されたことでさらに知名度が上がったかもしれない。ブリトニーの成年後見制度適用にルイーズ・テイラーは重要な役割を果たし、そのおかげで財産と名声、金持ちの顧客を手に入れたと言われている。

---fadeinpager---

目標達成のための実践的なツール

56歳のルー・テイラーははニューヨーク州出身の元会計士だ。25歳の時にフロリダで雇われビジネスマネージャーとしてキャリアをスタートさせた。「顧客本人からビジネス、金銭までマネジメントすることが楽しくて、特にツアーの運営にのめり込みました。こうして、これが私の天職となったのです」と2017年にヴァラエティ誌に本人が語っている。1992年に独立、3人のアスリートを最初のクライアントとしてエージェント会社「トライスター」を設立した。2001年、テネシー州ナッシュビルに事務所を開設し、カントリーシンガーらと契約した。業務範囲は給与計算、財務・投資報告、ツアーの企画や住居の手配、制作予算等々。2008年、ロサンゼルスにもオフィスを開設した。

---fadeinpager---

怪しい借金

この年を境にルイーズ・テイラーの羽振りが良くなる。ちょうどブリトニー・スピアーズが落ち目になった年だ。当時のブリトニーはスターとなって20年が経ち、2児の母となり、苦しい状況にあった。彼女の精神的なトラブルはマスコミの格好の餌食となり、赤ん坊を落としそうになっただの、丸坊主になっただの、絶えずパパラッチから追い回されている状況だったのだ。

同年、ブリトニー・スピアーズの父親、ジェームズ・スピアーズは、娘への成年後見制度の適用を申請して承認を得た。成年後見制度とは自分で自分の面倒を見ることができない人のために法律で定められた制度である。こうして、歌手は自分に関する一切の決定権を取り上げられた。銀行口座、仕事、避妊するかどうかさえ、すべてを法務チームやマネージャーのサポートを受けた父親が管理する。サポートマネージャーのなかにはルイーズ・テイラーのトライスターも入っていた。ジェームスは以前から顧客だったのだ......しかも、ニューヨークタイムズの地道な調査により、この時期にジェームズはルイーズの会社から4万ドルを借りたことが明らかにされた。

---fadeinpager---

恩返し?

娘の後見人になった時点でジェームズはルー・テイラーに借りがあったのだろうか? 絶対にありえない、とルー・テイラーの弁護士は言う。しかしニューヨークタイムズ紙は、事がそう単純ではないことを指摘し、全米後見協会のアンソニー・パルミエリ会長の言葉を引用した。「後見人の決定は、被後見人の最善の利益に動機づけられているのだろうか、それとも、彼が借金をしているビジネスマネージャーの利益なのだろうか」と。要するに、ルー・テイラーは歌手の後見人制度を利用して、あるいは乱用して自分の財産を築いたのだろうか。

こうした疑問を抱いているのがマシュー・ローゼンガート、2021年7月にブリトニー・スピアーズが許可を得て選任した弁護士だ。トライスターは2020年にスピアーズ家との契約を終了しているため、マシューはいまのところその真相に迫るのに苦戦している。2021年11月にはトライスターに関する過去13年間の完全な監査を裁判所に申請したものの、ルー・テイラーのチームはただちに反対動議を裁判所に提出した。トライスター側の言い分は、後見人時代に裁判所の要請でトライスターが作成した年次会計報告書にスピアーズ家が異議を唱えたことはないというものだった。

---fadeinpager---

財産管理人

しかしながらルー・テイラーが、成年後見人制度適用の首謀者ではないかという疑いは晴れていない。後見開始後まもなく、ジェームス・スピアーズは娘を97回のコンサート・ツアーに送り出し、トライスターをそのマネージャーに指名した。同時に、ルー・テイラーが株式の半分を所有する資産管理会社のストーンブリッジ・ウェルス・マネジメントにブリトニー・スピアーズの口座が開設された。2009年12月にはブリトニーの大半の資産をルー・テイラーが管理するようになっていた。そしてこの資産から、ブリトニーの父親とその弁護団が後見人業務の対価を、トライスターがマネージメントサービスの対価を得ていた。

その後のブリトニー・スピアーズは3枚のアルバムをリリースし、ツアーも頻繁に行った。2013年から2017年にかけてはラスベガスに滞在しながら約250回の公演を行った。ざっと見積もって約100万枚のチケットを販売し、1億円以上の収入を得たことになる。ルー・テイラーがこれらのコンサートで提供したサービスや得た手数料によって正確にどのぐらい儲けたかは、ルー・テイラーも彼女の弁護士も正確な数字を公表したことはない。ニューヨーク・タイムズの記事は、5%という数字を提示しているが、それが何に該当しているのかは定かでない。ひとつだけ確かなことは、成年後見人制度の下に置かれたブリトニー・スピアーズの13年間は、儲かったということだ。ルー・テイラーの弁護士は、それがトリスターのおかげだと主張する。ルー・テイラーがビジネスマネージャーとしてブリトニーに「忠実に仕えた」結果、歌手が6000万ドルの財産を築くことができたのであり、「あらゆる面で成功といえるでしょう」とニューヨーク・タイムズに語っている。

---fadeinpager---

働くことを強制された

02-220304-britney-spears.jpg

#FreeBritneyの集会で、「It's been Lou Taylor all along(最初からルー・テイラーだった)」の看板を掲げるデモ参加者。(ニューヨーク、2021年9月29日)photo: Getty Images

ただし、働かされた本人はそう思っていないようだ。2021年6月、成年後見人制度の解除を求めたロサンゼルスの法廷でブリトニーは、ルー・テイラーらマネージャーや後見人によって絶えず働かされる一方で、怠けているとか熱心さが足りないと非難されたことを語った。しかも言うことを聞かせようとより強力な新しい治療薬を処方されたとも。つまり、ブリトニーはルー・テイラーや自分の家族が、本人の意思に反して自分たちの利益のために、自分を稼ぐマシーンに仕立てたと告発しているのだ。さらに11月には、マネージャーと自分の母親が、マイク、カメラ、電話監視ソフトを駆使して自分を監視下に置いたことを非難するインスタグラム投稿した。ニューヨーク・タイムズのドキュメンタリー『Controlling Britney Spears(ブリトニー・スピアーズを管理する)』を撮った監督、サマンサ・スタークも同じ主張をしている。

トライスターは弁護士を通じてこうした一切の非難をすべて否定している。しかし、この時期にトライスターもルー・テイラーも潤ったことは確かだ。スピアーズのマネージメントをしていたおかげでルー・テイラーの評判は上がった。一時期はスピアーズ家の代理でテレビ出演していたこともあってルー・テイラー本人が有名となり、結果としてカーダシアン一家や女優のプリヤンカー・チョープラー・ジョナスなど、一流のクライアントを獲得している。ルー・テイラーはアメリカンドリームを体現したエンターテインメント界のアイコンとして2019年、エンターテインメント業界情報誌の「ハリウッド・リポーター」誌から「ビジネス・マネージャー・アイコン」に選ばれ、各誌はルー・テイラーを野心あふれるCEO、女性特有の「ガラスの天井」を突き破った成功者である一方、ハリウッドや業界で女性をバックアップしたいという熱い思いを持った人情派としてもてはやした。

---fadeinpager---

教会の資金

信仰心篤いルー・テイラーは教会の活動も熱心に行い、2001年、夫のロブと国際的な福音主義プロテスタントのコミュニティであるカルバリー・チャペルの支部をテネシー州に設立した。ロブは牧師に、ルイーズは女性問題責任者に就き、それ以来、夫妻の住所録には、ビジネスと宗教が混在し、それはジェームス・スピアーズとの関係においても見られた。

同じニューヨーク・タイムズ紙の記事によると、2010年、ブリトニーの慈善活動から数万ドルがテイラー夫妻に近しいキリスト教のカウンセリング団体に寄付されたという。このグループの創設者は、レズビアンに自分の性的指向を否定するよう奨励していることを自慢しており、ブリトニーがLGBTコミュニティと親密な関係にあるのとは真逆に思える。同記事ではさらに、ジェームズ・スピアーズが一時期、成年後見人制度の適用で得た収入の10%をテイラー夫妻の運営する教会に支払っており、その額は合計で約600万ドルになると付け加えている。ブリトニーがこれを知っていたかどうか、ましてや承認していたかどうかは不明である。長年沈黙を守ってきたブリトニーはようやく声を上げることにしたようだ。13年間彼女を外部から遮断し続けてきた人たちに報いを受けさせたいのだろうか。6月にロサンゼルスの裁判所でブリトニーは「あの人たちは刑務所に入るべきです」と語った。

text: Sofiane Zaizoune (madame.lefigaro.fr)

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

2025年春夏トレンドレポート
中森じゅあん2025年年運
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
パリシティガイド
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories

Magazine

FIGARO Japon

About Us

  • 広告掲載
  • お問い合わせ
  • よくある質問
  • ご利用規約
  • 個人の情報に関わる情報の取り扱いについて
  • ご利用環境
  • メンバーシップ
  • ご利用履歴情報の外部送信について
  • Twitter
  • instagram
  • facebook
  • LINE
  • Youtube
  • Pinterest
  • madameFIGARO
  • Newsweek
  • Pen
  • Pen Studio
  • 書籍
  • 大人の名古屋
  • CCC MEDIA HOUSE

掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CCC Media House Co.,Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.