光の知識、インド占星術で自分を知り、未来を読み解く。

Culture 2022.08.01

古代インドで誕生したインド占星術「ジョーティッシュ」は、自己の悟りを開くものとして、後世へと残された知識のひとつ。物質的な利益中心の暮らしにそこはかとなく疑問を感じる人々が増えつつある現在、じわじわと注目されている占星術だ。インド占星術師、ジョーティルマヤ・ARAKIに、ジョーティッシュの意義と、何が読み解けるのかを聞いた。

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ジョーティルマヤ アラキ / Jyotirmaya Araki
会社員時代に感じたストレスがきっかけで、ジョーティッシュに出合う。ヴェーダを護り受け継ぐパンディット家系・ヒンドゥー神官でもある師よりジョーティッシュを学んだ後、インド占星術師として活躍、的確なリーディングで鑑定後の評価が高い。オンラインにて鑑定やインド占星術講座も行う。
www.jyotirmaya.jp

誕生時の正確な日付と時刻と場所から出生図を割り出し、その時の太陽・月・惑星・星座の位置や角度から人生で起こり得る出来事などを読み解くインド占星術(以下、ジョーティッシュ)。ヒンディー語の「Jyotish」とは「Jyoti(光)」と「Ish(神・知識)」が語源で、「光の知識」の意味。インドでは「神の目」とも呼ばれ、悟りへと導くために神から与えられた光の叡智とされている。

ジョーティッシュを通して知る、日本のこれまでとこれから。

ジョーティッシュでは、人の運命だけでなく企業や国の特性や運勢も読み解くことが可能。そこで、インド占星術師のARAKIに、日本の特性と2022年後半以降、何が起こり得るかを聞いた。

「現代日本の誕生は、サンフランシスコで調印された対日平和条約発効の日である1952年4月28日としています。出生図では、第1室(*1)に木星の影響を受ける射手座。これが意味する『道徳心の高さ』は、日本の重要な資質です。また第4室の水星がネガティブ(*2)な影響を受けていて、災害が起きやすい国土を表します。同時にここに金星があり、美しい国土であることを示しています」

第5室に木星と太陽があることは、教育レベルの高さを示しているそう。第9室には、第5室の教育の室でポジティブな影響を持つ太陽の影響を受けたケトゥー(*3)があり、精神性の高さや、スピリチュアルな性質があるとも。

「第10室で土星が逆行している影響と、火星とケトゥー(凶星)に挟まれ、政府は思うように国民に対して強制力を働かせることができない、独裁主義を取れないといった民主国家の特性も表れていますね」

*1 室:ジョーティッシュのバースチャート(出生図)では12星座を12ハウスに分け、これらの星座に番号をふる。1はアセンダント(東の地平線と太陽の通り道である黄道が交わった点)で、出生時に東の空にあった星座が特に影響を与える。そこを基点に反時計回りに12まで番号をふったのが、第1室、2室……となる。第1室はその人(または国や企業)そのものの性格、人生、第4室は母親や土地、第5室は才能や高等教育などを表す。
*2 ネガティブ:ある星がある星座に入ることで力が弱まること。
*3 ケトゥー:月の軌道と太陽の軌道の交点にある、実体のない影の惑星のことを、ラーフとケトゥーと呼ぶ。ジョーティッシュでは重要な天文学的特異点として扱われ、ケトゥーはスピリチュアルな影響を与える。

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では、日本に影響を及ぼす現在の天体の動きはどうなっているのだろう?

「2020年1月24日から土星が山羊座(地の性質)に約29年ぶりに移動し、ここに2年半ほど留まっています。同じく土星が山羊座にあった約30年前にはソ連崩壊(1991年12月)やバブル崩壊(91年に地価の下落が開始)が起きました。そして今回は新型コロナ感染症の大流行が発生しました(日本での初感染確認は2020年1月16日)。加えて、20年3月30日には木星と土星が山羊座の位置で接近。木星は経済や財政、道徳心などを表します。木星が山羊座に在住する時、過去にも経済的なダメージが起こっています。1997年アジア通貨危機(消費税引上げ、山一証券が自主廃業、デフレと低成長など日本経済の低迷の始まりとなった時期)、2008年リーマンショック、09年ギリシャ債務危機(欧州及び世界経済が失速)と、日本のみならず世界各国で経済、財政に試練と困難が広がります。20年4月7日に東京などで初の緊急事態宣言が発出され、経済活動が大きく制限されたことは、この木星と土星の山羊座での接近に関係があると考えます。ちなみに木星は22年4月13日に魚座に移動しています。魚座では木星はスピリチュアルな性質が強まり、信仰心の高まりや、自らの正義や思想、主義など自身が信じるものに対して忠実でありたいという純粋な思いが強まるので、思想や宗教観の違いから、個人間の分断、国家間の争いというものがいままで以上に顕著に。22年4月29日から7月12日までは土星が水瓶座に一時的に在住しているので少し状況が落ち着きそうですが、22年6月5日から10月23日まで土星は逆行し、22年7月12日から23年1月17日まで土星は再び山羊座に在住します。7月10 日の参議院選後から、年末に向けて世界で大きな変化や、“試練”を感じることがあるかもしれません」

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ただし、怖がりすぎないで。ジョーティッシュは困難な時期の対処法も示してくれる。

「時代の変化に備えて準備をしつつ、土星の試練を経験することは成長のチャンスでもあります。コロナ禍の流れを見れば悪影響ばかりでなく、リモートワークなど新しい働き方が生まれたのも土星が山羊座にある影響のひとつ。そして23年1月17日に土星が水瓶座に移動すると、水瓶座の特性である『自分らしさ』や『個性』が鍵に。それでいて多様性を認めながら調和していく流れも生まれるようです。23年1月17日から25年3月29日まで2年以上、土星は水瓶座に在住するので、この時期にハイテク化、リモートや通信、テクノロジーに関することの発展スピードがより加速すると思います。世界的にメンタルとマインドの可視化(デジタル化)、人とモノ、行動や金、リアルとバーチャルの境界がさらに曖昧になり、内面のことも目に見える結果として表れやすくなっていくでしょう。中央集権型から非中央集権型への動きが活発化したり、国家主導のデジタル通貨の流通が始まる可能性もあり得ます」

ジョーティッシュにおいて、時代の流れが変わるとされるのは土星が水瓶座に本格的に移動する23年1月17日以降。

「土星の元素は風。水瓶座の元素も風。それぞれが個性を発揮したいという願望が強まり、25年3月29日まで、水瓶座に在住する土星の影響が強まるので、人々が個性的なライフスタイルをより見いだしていくでしょう。エネルギーや資源、経済の仕組みの問題など、テクノロジーを生かし、新たな技術・価値観や、スピリチュアルとテクノロジーの融合によって新たな経済の仕組みが生まれていくでしょう。『個の尊重』『個性の発揮』『同じ考えを持つ仲間との活動』などそれぞれの思想や考えに固執し、多様化するので、いままで以上に情報があふれ、情報リテラシー教育が大事になってきます。大人も子どもも情報リテラシー教育はマストです。ただ、ジョーティッシュでは『物質的なもの』はあくまでも『結果』にすぎません。物質や肉体はいずれなくなりますが、根源である魂は永遠です。ジョーティッシュは、心が満たされていれば、過度に物質的なものを追い求めなくても幸せになれると考えます。ではどうすれば幸福を得られるのか、どうしたら自身の根源である魂の本質、自己を悟ることができるのか。なぜ足りないと思い不足が起こるのか。なぜ物質的なものを追い求め、自ら物質的な束縛の中でもがき苦しむのか。もともと私たちは『純粋で、知識、至福』に満ちた存在です。本当の私たちの姿、魂の本質への気付きをジョーティッシュは示してくれるのです」

後編:ジョーティッシュに関する、気になる基本情報。

*「フィガロジャポン」2022年8月号より抜粋
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text: Natsuko Kadokura illustration: Aya Mogami

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