光の知識、インド占星術で自分を知り、未来を読み解く。 インド占星術、ジョーティッシュを知っていますか？

出生時の太陽や惑星などの配置を読み解くことで、人生に起こり得ることを詳細に見ることができるジョーティッシュ（インド占星術）は、自分自身の探求や自己を悟るための知識だ。日本ではまだまだなじみが薄いため、理解するための基礎知識を、ジョーティルマヤ・インド占星術師 ARAKIに教えてもらった。

＞＞ 前編：ジョーティッシュを通して知る、日本のこれまでとこれから。

Q. ジョーティッシュ（インド占星術）って、そもそもどういうもの？

A. 自分自身の探求、自己を悟るための「光の知識」

「私たちはいったい何者なのか？」「人生の真の目的とは？」こうした哲学的な問いは、真上に見える空から宇宙の真理を知りたいという根源的な欲求と繋がるもので、古代から変わることなく人々の心に去来してきた想い。そうした宇宙の根本原理を解く学問、ヴェーダの中の6つの補助学（ヴェーダンガ）のひとつとして、5千年以上前に古代インドでまとめられたのが、インド占星術（ジョーティッシュ）だ。自然や宇宙を構成する生命エネルギーは、人（生物）の構成要素と同じもので、宇宙から生まれたそのエネルギーに私たちは操られているというのが、ジョーティッシュの根底にある思想。そのため私たちが生まれた場所と日時の太陽や月、惑星、影の惑星（ラーフとケトゥー）などの配置と角度が、人生において強い影響を与えるとされている。

また、ジョーティッシュの重要な考え方は、過去生での心残りやカルマ（過去生での行いにより、よし悪しにかかわらず今生で返ってくる行為・宿命）が、生年月日、時刻、出生場所から割り出されたバースチャート（出生図）に表れるというもの。経済的な成功、家族、精神性を高めるなど、今生のテーマは人それぞれ違うが、出生図を深く読み解くことで人生の妨げになるものは何なのか、逆にどのような行いが魂を満たし、幸せへと導いてくれるのかがわかる。出生図からは、仕事、病気、トラブル、結婚など、人生で起こり得るさまざまな物事や傾向が読み取れる。過去生からのカルマの結果、すでに8割近くの人生は決められているが、残り2～3割の「自由意志」と呼ばれるものにより、悪いカルマを積まない、解消する方法を選ぶことができるというのもジョーティッシュ特有の考え方。

バースチャート（出生図）例
左下に書かれた１という数字は牡羊座を、右どなりの2は牡牛座……となり、12は魚座を表す。バースチャートは12室に分かれていて、このバースチャートの場合、第9室に在住しているのが木星。木星がとてもポジティブな影響を与えていることから、よい先生に恵まれ、精神性の高さが備わっていることがわかる。

「カルマ」「過去生」といった言葉が使われることからもわかるように、ジョーティッシュは古代インドからの思想・宗教とも密接な関わりがある。人生の究極かつ真のゴールは、金持ちになることや物質的なものをどれだけ叶えたかではなく、行いの結果、どれだけよいカルマを積み、物質エネルギーからの解放を意味する「モクシャ」の境地にいたること。さらに純粋な愛を得ること。人間は大きく分けて3つの性質、「サットヴァ（純性）」といわれる純粋エネルギー（慈愛に満ちた言動）、「ラジャス（激性）」利己心・際限ない欲望、「タマス（貪性）」暴力的な行為や言葉といったエネルギーに支配されている。どの傾向が強いのか、本当に目指しているものが何なのかがチャートから見えてくる。もともとはサンスクリット語で「Jyotisha（ジョーティシャ）」といわれ、ヒンディー語で「Jyotish」となったジョーティッシュは、「光の知識」を意味する言葉。パンデミックや紛争、相次ぐ天災など、時代の大きな変化や困難を実感する出来事が続き、先行きへの不安を感じてしまうこともある現代において、ジョーティッシュは真の幸せへと導く“光”となり得るものなのかもしれない。

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Q. ジョーティッシュは、どうやって生まれたの？

A. 古代インドで、学問として誕生。

もともと口伝されてきたもので、長い歴史がある。ジョーティッシュの起源についてはパラーシャラ仙がブラフマン（宇宙の最高原理で世界創造の根源。仏教用語では「梵、梵天」と訳される）から天啓を受け、弟子のマイトレーヤに告げたのが始まりとされている。それは実に5千年以上も前の話。ジョーティッシュは私たちが考えるような未来予測占いだけではなく、自分の根源（魂）に到達するために、人生の傾向や注意点を伝える「知識」として発展したものだという理解が、本来の意味に近い。

現代に生きる私たちにもなじみ深いヨガやアーユルヴェーダも古代インドで生まれたもの。ジョーティッシュと同じく、ヴェーダの一部である。ジョーティッシュでは身体の不調や病気の原因は惑星の影響によるものと考え、医療占星術として、その人の出生図から罹りやすい病や、身体の弱い、または丈夫な箇所などを読み解き、予防に役立てることもあるという。このことからも、ジョーティッシュがインドでは生活に深く関わりがあり、有効活用されていることがわかるだろう。

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Q. インド人の暮らしとの関わりは？

A. ヒンドゥー教徒を中心に、いまでも生活に根付いている。

ジョーティッシュを含む聖典「ヴェーダ」と深い関係のあるバラモン教は、広義でヒンドゥー教に含まれることから、現代でもジョーティッシュはヒンドゥー教徒を中心としたインド人の生活に溶け込んでいる。

もちろん地域性や生活様式の違いにより、取り入れ方の程度に差はあるが、特に結婚相手との相性を見てもらう時にジョーティッシュに頼る人々が多い。また、ジョーティッシュは、ヴェーダ暦（太陰太陽暦）「パンチャンガ」を用いて吉日を割り出すこともできるので、開業、結婚、引っ越しなどに適した日を選定することはもちろん、財布や服を購入した後、それを初めておろす日などをジョーティッシュで決める人もいるそう。

さらに、インドには占星術学校があり、教育に力を入れているほか、研究機関としての役割も担っている。

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Q. ジョーティッシュを通して、何がわかるの？

A. 今生で起こり得る、すべてが啓示される。

バースチャートから、その人の性格・傾向、向いている職業、才能、結婚相手や生まれてくる子どものこと、罹りやすい病気、事故やトラブルなど人生で起こり得ることについてと、人生のどの時期にどの惑星の影響を強く受けるのかで、あらゆる事象が判明するとされている。そのほか過去生で成就できなかったことへの想いやカルマ、守護神などについても読み解けるほか、根本原質のサットヴァ（純性・慈愛に満ちたもの）、ラジャス（激性・利己心）、タマス（貪性・暴力的な行為や言葉）の3つの傾向のうち、どの傾向が強いのか、カーマ（欲望・愛欲）、アルタ（富・実利）、ダルマ（義務・法）、モクシャ（解脱解放）といった四大事がどれだけその人の心を占めているのかもわかる。

また、詳細な日時と誕生地がわかっていれば、国や会社の性質・傾向、将来性などを見ることも可能だ。

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Q. ジョーティッシュは、どのように占うの？

A. 出生時の太陽＆惑星の配置や角度から導き出す。

出生図を出すには、生年月日に加え、正確な時刻と場所の情報が必要。誕生地の情報は「東京都○○区XX△丁目□番地」といったできるだけ詳細な住所が求められる。時刻も同様に分単位まで正確なものが必要。その理由は誕生時刻や誕生地によっては、わずかな差で星の配置が変わってしまうこともあるからだ。詳細が不明な場合は、これまで人生に起こった大きな出来事を、月日でいくつか提示することで読み解く方法もある。

出生図では人生そのものを表す第1室以外に、友人・家庭の第2室、努力と訓練の第3室、母親や家を表す第4室、教育の第5室、競争や試験の第6室、パートナーの第7室、苦悩・研究の第8室、ダルマ・宗教の第9室、父・仕事や今生のカルマに関する第10室、願望成就の第11室、損失や外国との縁などを表す第12室といったように、室ごとに詳細なテーマがある。太陽や惑星が入った室や星座との組み合わせ、ポジティブまたはネガティブな影響を及ぼしているのかどうかで、性質や傾向の詳細が表れる。

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Q. 西洋占星術との違いは何？

A. 採用する天文学の方式が大きく異なる。

西洋占星術では、春分の日に太陽がある経度を牡羊座の0と座標を決めている「トロピカル方式」を採用。それに対し、ジョーティッシュでは地球の地軸を座標に地球の歳差運動（地球が回転楕円体であるため、天球上で赤道の極が黄道の極の周りを約2万6千年で1周する現象）を考慮した「サイデリアル方式」を採用しているのが大きな違い。

座標が異なるので、西洋占星術とジョーティッシュでは、春分点の位置が約24度違い、72年に1度ずつ差が生じる。このため、西洋占星術では太陽星座が山羊座でも、ジョーティッシュではそうとは限らないということも。

この座標の違いから生じるズレがもたらす別の例をあげると、西洋占星術において2020年12月22日の木星、土星のグレートコンジャンクションから始まった「風の時代」は、ジョーティッシュにおいては当てはまらない。ジョーティッシュではまだ土星は山羊座（地の性質）の影響を受けており、世界を覆っているのは土星が在住する山羊座の「地」の性質が強いとされ（22年4月29日から７月12日までは土星が水瓶座に一時的に在住）、2023年1月17日から土星は完全に水瓶座に移動。「風」の性質が表れてくる、という考え方。

またジョーティッシュでは、誕生時に東の空にあった星座と惑星（西洋占星術ではアセンダントとされるものに近い）が最重要で、月がどの星座（西洋占星術でいわれる月星座）にあったのかも重視。ジョーティッシュにとって月が重要な理由は、月が地球にいちばん近い惑星（衛星）のため影響力が強く、月は思考やマインドを司る「表自体」だから。その月の軌道、ナクシャトラ（27の星宿）を考慮することで、魂を覆う心の動きや傾向をつぶさに読み解くことができるのも特徴。生年月日のみでその人の星座を割り出し、性質や月ごと・年ごとの運勢を占うこともできるが、ジョーティッシュでは誕生時の詳細情報から唯一無二の人生模様が詳細に導き出され、自分の本質に迫ることができる。長いスパンで見た人生の指針を知りたい、自分の根源とは……？　そんな迷いを感じた時、自身を見つめ直したい時にジョーティッシュを体験するべきかもしれない。

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Q. 的中率はどのくらい？

A. 優れたインド占星術師が見ると、的中率はかなり高い。

出生時の詳細情報がわかっているという前提で、経験を積んだ優れたインド占星術師に見てもらった場合、的中率はかなりのものだといわれている。このため、インドの政治家や実業家にはお抱えのインド占星術師がいるという噂も。 西洋占星術でも同じだが、観光客相手に悪いことばかり告げたり、鑑定に絡めて高価な宝石やお守りを買わせようとするインド占星術師には要注意！

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気になるあの人を、ジョーティッシュで見てみたら……？

世間で話題のあの人たち。彼らはなぜ、ニュースを賑わせ大成功を収めているのか。公開されている誕生データを基にARAKIが分析し、星の配置とともに、人生を読み解いた。ジョーティッシュで運命を読み解くと、この知識が長い間、人々のよりどころとなってきた理由がよくわかるはず。

イーロン・マスク／実業家
火星の影響を受けた、意志の強い人物。

●誕生日…1971年6月28日
●出生地…南アフリカ共和国プレトリア

イーロン・マスクの出生時刻は不明なので、公表されている生年月日と出生場所で出生図を見てみると、「第3室にある火星が非常にパワフルです。火星は、重工業、電気、通信などを象徴するので、マスクの事業であるEV自動車製造やロケット開発、衛星通信はこれに結び付きますね。移動に関すること（車、ロケット、通信）に才能を感じます。この火星の影響で、性格的には意志が強くスタミナがあり、攻撃性もある人物だと出生図から読み取れます。また、通信を表す火星と同様に、双子座にある水星もポジティブですが、すべてがスムーズにという配置ではないです。困難にも直面すると思いますが、火星のパワフルな意志の強さで乗り越えていくでしょう。水星も通信やメディアと関係があるので、SNS事業にも関わっていくことは必然の流れです。SNSを単なるコミュニケーション手段ではなく、金融（暗号資産、ブロックチェーン、NFT、Web3.0、メタバース）やあらゆるサービスなど、国家レベルのインフラ事業として考えているのかもしれません。中央集権型から非中央集権型への新たな経済の仕組みに大きな影響を与えるでしょう。さらに金星がポジティブな影響を及ぼしているので、話力に長けていて、デザインや美的感覚にも優れています。美しさ、快適さを楽しみたい人なのではないでしょうか。そうした彼の感性は、テスラのデザインに反映されている気がします」

ツイッター社買収のニュースが4月に流れたが、5月には買収を一時的に保留に。「2023年8月下旬から火星の影響が強まります。彼の事業に関しては、来年秋以降にさらに大きな動きがあるかもしれません」

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BTS／アーティスト
成功を約束された「運命」のグループ。

●デビュー日…2013年6月13日
●結成場所…韓国ソウル市

「土星が天秤座の場所に在住しているのでポジティブな影響を受けています。名声は長く続くでしょう。芸術、音楽、娯楽を象徴する月もポジティブ、金星と一緒にいる水星もポジティブという状態の日にデビューしたので、音楽やエンタメ業界に影響を与えるのは“運命”。また、（初めてメンバー全貌が明らかになった）ティーザー公開の2013年5月26日も見てみると、この日も土星が天秤座に。つまり土星にとって最高に居心地のいい場所にあったので、通常は“試練の星”と言われる土星ですが、この土星がポジティブな働きを見せ、あらゆる試練を乗り越えると暗示。土星の強いサポートで、民衆からの支持を得られることもわかります。牡牛座に通信、メディアを表す水星と芸術、音楽、エンタメを表す金星がほぼ同じ角度で重なっているので、そのパワーがさらに強まっていました。ここまでひとつのハウスに星が集中するのはかなり珍しいのですが、マインドを表す月に対し、さらに木星、金星、水星、加えて太陽と火星も強く作用し合っています。BTSがこのタイミングで世に出たのは、霊的なレベルの支持を得られる、つまり人気を約束されたようなものだとこちらの出生図でもわかります。ちなみに土星が天秤座にある人は、長きにわたり民衆から支持を受ける人が多いのです。スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、マーク・ザッカーバーグ、日本人では宇多田ヒカル、安倍元首相、明石家さんまもそうですね」

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フィガロジャポン編集者 まりモグ（食＆旅担当）も見てもらいました！
いまの仕事は、果たして天職なのか……？

自分自身を表すという第1室。私の場合、ここに土星と火星があり、土星はポジティブなところにあるそうだ。土星は労働者の管理、火星は出版を含むクリエイティブ、マネジメント……となると、まさに編集者の仕事そのもの⁉　過去生ではどうやったら幸せに暮らせるか自分自身では理解していても、それを人々に伝えそびれてしまった。すでに叡智を与えられていて、遍く伝えるためにメディアや出版を表す第3室にポジティブな状態の木星が在住しているので、“伝える”という仕事の才能を与えられているとのこと。いまの仕事に就いているのもそれゆえだとARAKI先生は言う。美的感覚に優れ、ファッションやアートを好むと言われたものの、そこだけ腑に落ちなかった。幼少期にルーヴル美術館で西洋画のオーラに押しつぶされた経験から、アートに苦手意識があったからだ。しかしよく考えると、「美」食は私のライフワークで心から愛するもののひとつ。編集部でも約8年間、食や旅を担当してきた。初めてのジョーティッシュは、いまあらためて自分自身を見つめ直す機会になったのかも。

＊「フィガロジャポン」2022年8月号より抜粋
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