大きなお腹はあえて見せる⁉ Newマタニティファッションがブーム。
Culture 2022.08.06
文・さかいもゆる
妊娠した大きなお腹を隠すマタニティルックは過去の産物に。膨らんだお腹をあえて強調するようなファッションが、セレブにブームだ。
エルメスのケリーバッグは、女優からモナコ王妃になったグレース・ケリーが妊娠中のお腹を隠すために考案されたもの、というエピソードが有名だけど、いまや「隠す」という発想自体がアウト。大きなお腹を露出するデザインの服を着て、妊娠期間中にしかできないファッションを謳歌する、というスタイルが主流になっているように思う。中でも、5月にラッパーのエイサップ・ロッキーとの間に第一子となる男児を出産した、リアーナのマタニティファッションは、いまの時代の「ボディ・ポジティブ」を象徴するかのような着こなしが話題を呼んだ。
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今年1月に妊娠したことを自身のインスタグラムアカウントで公表した際には、シャネルのショッキングピンクのロングアウターのウエストの部分のみをボタンを外して、ふっくらしたお腹を披露。その後も、臨月期間は真冬の寒い時期だったにも関わらず、ローライズのデニムにウエストが剥き出しになるクロップドトップスを着てアウターの前をはだけさせたり、オスカーのパーティでは上半身がシースルーのドレスアップを纏ったりと、妊婦ならではの体型を活かしたコーデに次々挑戦。パリのファッション・ウィークで、ディオールのショーに現れたときには、ディオールの全身シースルーのドレスにランジェリーという、センシュアルなルックがニュースに。
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こうしたリアーナのファッションについて「妊婦のくせに肌を露出するのはやめて」という一部の批判もあった。これに対し、リアーナはこう答えている。「妊娠期間は9~10ヶ月と長いから、できるだけ楽しもうと思います。なぜなら、ファッションは私の好きなことのひとつだから。私は妊娠することや、母性とは何かという意味さえ、覆そうとしています。おしゃれをして素敵に見えると気分も良くなる。それは、本当にそう。今日はソファに横になって過ごしたいと思うときもあるけど、おしゃれすると『私って最高にクール』って思えるもの」。これぞ、ボディ・ポジティブ・ムーブメントの根源にある、「セルフラブ」マインド!
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身体を冷やしては母体にも胎児にもよくない、という医学的意見はさておき、ママだからという理由で「肌を見せてはダメ」と言われる筋合いはない。先日夫のセバスチャン・ベア=マクラードとの離婚が報じられたばかりの、エミリー・ラタコウスキーもリアーナと同じ意見のよう。去年3月にセバスチャンとの間に息子シルヴェスター・アポロを授かったエミリーは、2020年10月に妊娠を公表してから、かなり大胆でセクシーなマタニティルックを身につけて来た。
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白いシャツのウエスト部分のボタンを開けてお腹を見せたり、サイドがカットアウトになったデザインのボディコンシャスなドレスを纏ったり。妊娠期間中、「妊婦でもセクシー」を実践し証明し続けたエミリーからは、「女性は母になることと引き換えに、何かをあきらめるべき」という社会からの無言の圧には屈さない、という強い意志を感じる。
精神的にも肉体的にもストレスフルな変化が多いマタニティ期間を、少しでも楽しく乗り切れるように。お腹が大きくなった体型を誇らしげに見せるセレブたちは、女性たちをエンパワーしてくれる、頼もしい存在。
text: Moyuru Sakai