ケイト・モス、ウェルネスの教祖に転身⁉ ウェルネス事業に踏み込んだ理由とは。

Culture 2022.11.30

スーパーモデルがホリスティックなプロダクト「コスモス」を立ち上げた。ウェルネスの巫女ことグウィネス・パルトロウが先駆けて進出した分野に一石を投じるか?

 

 

過去にはジェニファー・ロペス、アリシア・キーズ、セレーナ・ゴメス、最近ではナオミ・ワッツ、さらにブラッド・ピットまで。セレブが続々とコスメ市場に進出している。このマーケットに新たに参入したのは、ケイト・モス。ロンドンに続き、パリのサマリテーヌでもブランド「コスモス」のお披露目を行った。パリではサマリテーヌでプロダクトが独占販売される。

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かつてツイッグ(小枝)の愛称で知られたケイト・モスが立ち上げたのは、単なる美容ブランドではなく、心身の健康をサポートするためのウェルネスブランドだ。「体調がいいと、間違いなく表情に現れると確信しています」と彼女は主張する。ウェルネス事業にはアメリカ人女優グウィネス・パルトロウというセレブがすでに進出済み(席巻しているといってもいい)で、この分野の教祖として君臨している。

 

 

サイトGOOPでスキンケア製品を展開する彼女の試みは見事に当たった。ブロンドヘア、キャリア、誰もが憧れる人生(離婚さえうまく切り抜けている)。その人となりが、彼女が自ら作り出したライフスタイル帝国の完璧なショーウィンドウの役割を果たしている。インスタグラムとGOOPのフォロワー数(それぞれ810万人、170万人)がその成功ぶりを物語る。2018年のニューヨークタイムズ紙によれば、同ブランドの市場価値は推定2億5000万ドル。健康に関する根拠のないアドバイスを流布しているとして医療関係者たちから非難されたりヴァギナの香りのキャンドルを発売するなど、失策を犯したり、悪い評判が立ったことがあったにもかかわらずの数字だ。

「グウィネス・パルトロウはほとんどアンタッチャブル。何をやっても許される。失笑を買うこともありますが、売り上げ高を見ると、脱帽するしかありません」とネリー・ロディ社のトレンド分析家ヴァンサン・グレゴワールは話す。

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優等生vsランウェイの反逆児

 

 

バランスのとれたライフスタイルを追求する完璧な優等生のイメージは、あらゆる点で過剰さを体現してきたモデルのケイト・モスのイメージの対極にある。ランウェイのアイコンであるケイトは、私生活でもジョニー・デップやピート・ドハーティと交際し、一筋縄ではいかない恋愛遍歴で注目を浴びてきた。全速力でロックな人生を駆け抜けてきた女性だ。「デビュー当時といまの自分と何が変わったか」という問いに、彼女は笑ってこう答えている。

「いろいろあります。以前は自分のことをまったくケアしていなかった。食べたいものを食べ、栄養学などに関する知識もほとんどありませんでした。健康にとって何が重要か、本当に何も知らなかった。いまは違います。努力しています……」。

変化し、新境地を開く前のケイトは、かつてともに活躍したモデル仲間がほとんど引退する一方で、2000年代になっても世間を魅了し続けていた。ブランドの広告キャンペーンにもひっぱりだこで、若い世代が台頭する隙さえ与えなかった。そんな折、コカインを吸引する写真がタブロイド紙に掲載され、さすがにこれはやりすぎとスキャンダルに。この失態でトップモデルは一時期、威信を失った。しかし彼女はミスから立ち直ることができる女性だ。2016年にモデル事務所「ケイト・モス・エージェンシー」を設立した彼女は、いま、「Cosmoss」という絶妙なネーミングのブランドを立ち上げ、ウェルネス界の巫女の座を狙っている。

スパに足繁く通い、リトリートを実践しながら、セレニティを発見した彼女にとって、これは当然の帰結なのだ。「マッサージやフェイスケアだけではなく、グリーンジュース療法など、健康や栄養に関するグローバルなサポートが受けられる場所に、年に3回滞在しています。頭が空っぽになり、調子がよくなるのを感じる。私にとってなくてはならないものです」

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トレンドと歩調を合わせて

元バッドガールがウェルネスのアンバサダーに転身。ストーリーとしては申し分ないが、説得力の点では?「彼女はいつもちょうどいいタイミングでぴったりの場所にいる。彼女にはシャーマンのような部分があります。自分の直感、自分のエネルギーに従って、Z世代を引きつけるホリスティックで秘教的なトレンドに対応している。いわば意味を求める時代の超能力者です」とグレゴワールは分析する。

 

 

「それに彼女はヘルシーを前面に出して、説教を垂れるようなことはしません。彼女のプロダクトはとても彼女らしい。CBD入りのセラムもありますしね!」自分自身に忠実である彼女は、自らのブランドイメージをスタイルでも表現している。取材当日、彼女はクリスタルのペンダントとお守りリングを身につけていた。「ドルイド尼僧や、新しい時代の魔女を思わせるところがあります」とグレゴワールは付け加える。「彼女はつねに非合理的な、狂気に近い部分を持ち続けてきた。いずれにせよ、自分が納得できる生き方を貫いてきた人。その彼女が新たな時代、成熟、再生の時代に移行した。そして、筋の通った方法で新分野に進出しようとしているわけです」

ケイトが製品開発のために協力を仰いだのは、ホメオパシストのヴィクトリア・ヤング。ケイトは4年前から定期的に彼女の元に通っており、その支援のおかげで「人生のバランスを取り戻す」ことができたという。「彼女にこの冒険に参加してもらいたかった。私のことを熟知しているから。シャーマンのようなところがある、とても聡明な女性です。クリスタルのボールの中で様々な香りを混ぜる。ムスクに他の香料を加えて、信じられないような香りを生み出すの」――つまり神秘的、ということ?

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再生と幸運

というのも、コスモスでは香水とは言わずに「聖なる霧」と呼び、セラムには「ゴールデン・ネクター」という神々しい名称が与えられているからだ。プロダクトを使用する際にも儀式がある。早朝と夕暮れのケアは、ハーブティーを煎れ、瞑想を行いながら。パンデミック以来、これが彼女の日々の習慣になっている。

「毎朝、時間をとって、空や大地、私たちを取り囲むあらゆるものに宿る美を鑑賞します」。もちろん、化粧品にはクリーンな成分だけを使用している。時代の空気と調和し、20歳になる娘のリラ・グレースのような新世代の顧客の要望に応えるためだ。

娘は化学的な成分が含まれているクリームは絶対に使いません。私も彼女をお手本にするようになりました。

私のブランドは必然的にこうした要求に応えるものでなければなりませんでした」。そう話す彼女が構想したニューエージ風のケアシリーズには、100%天然成分を使用したヴィーガンプロダクトもラインナップされている。ブランドの立ち上げを発表したときから、彼女はこうした方向性を明確に打ち出していた。インスタグラムに掲載された動画には、一糸まとわぬ姿で池のなかに入って行くケイトの姿が映し出される。そして私の宇宙についていらっしゃいとユーザーに向けて誘い掛けている。

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前述のグレゴワールによると、「禊の儀式のような雰囲気があります。ケイト・モスはこれまでも華麗な転身を遂げてきました。人生の浮き沈みに左右されることは彼女にはないようです。彼女はいつも幸運の星の下にあり、何かに守られているかのよう」。彼女が立ち上げたウェルネスブランドのロゴに使われている星々がこれからもずっと彼女に幸運をもたらしてくれるかどうか。そして、新しい世代だけでなくトップモデル時代の彼女に熱狂した世代がコスモスの信条に共鳴するかどうか。それがわかるのはこれからだ。

https://shop.goop.com/login
https://www.instagram.com/cosmoss/

Text: Justine Feutry(madame FIGARO.fr)

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