是枝裕和&松岡茉優が登壇!「ウーマン・イン・モーション」完全レポート。<後半>

Culture 2022.12.05

去る10月31日に開催された第35回東京国際国際映画祭のオフィシャルプログラムであるトークセッション「ケリング ウーマン・イン・モーション」。是枝裕和監督と女優・松岡茉優が登壇して、映画界における女性が置かれた状況などについて対話が行われた。日本と、韓国やフランスの映画撮影事情の違いや女優の在り方に関して語られた前半に続き、後半では、#MeTooムーブメントやインティマシーコーディネーターと呼ばれる新しい役割について話が進んだ。

立田 話は変わりますが、2017年にハリウッドのプロデューサーのセクシャルハラスメント問題に端を発して#MeTooムーブメントというものが世界的に起こりました。当時は日本ではすごく反応が薄かったといいますか、たいして話題にもならなかった。その時の#MeTooムーブメントを、日本映画界で活躍しているお二人は、どんなふうに受け止めていらしたのでしょうか。

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松岡 私は海外に留学経験もないし、海外に親友がいるわけでもないから、他の国々で起こったことをリアルタイムでわかってはいないですけれども、日本に輸入されてきた#MeTooという言葉は、向こうで起こっている言葉とは違う意味で入ってきてしまったという印象があります。なぜか対立も生まれてしまっている。そうじゃない、みんなを助けるための運動なのに、なぜ対立しちゃったかな、と思う。その言葉だけがひとり歩きしたというか、SNSが発達した私たちの国で、いろんな誤解を生んでいることのひとつだと思う。その言葉だけを捉えて背景を見ていない、というか。

立田 あまり良い形では日本には入ってこなかったんじゃないか思っている?

松岡 海の向こうで起こっていることと違うんじゃないかな、という気がする。全員じゃないですよ。だけど、なぜか対立も生まれてしまった印象があります。喧嘩になっちゃっていた。そうじゃなくて、話し合うきっかけのものだったと思うんですけど。

立田 監督はいかがでしょうか?

是枝 自分の現場も含めて(#MeTooムーブメントを)捉え直そうという意識になったのは、やはりちょっと時間が経ってからだった。自分なりには、さっき松岡さんが言ってくれたように、なるべく民主的な現場にしたいと取り組んできたつもりではいるけれど、やはり自分がやりたいことをやり抜くために、誰かが無理をしているということは、やっぱり僕の立場的にもキャリア的にも考えなければいけないと考えるようになって、自分の現場だけではない取り組みを始めましたけれども。自省するのはちょっと遅れたなと思っている。もっと早く。具体的にはなかなか言いにくいけれども、映画を作っていて、あの現場でこんなトラブルがあったとか、こういうことをある監督がしてるらしい、みたいな話は耳には入ってくる。だけど、ひとりの監督として、友人でもない他の監督の現場で起きてる「らしい」という噂だけのものにコミットするというのはなかなかできない。自分の中でコミットすることを抑えてしまう状況がありました。多分日本では、映画の現場を監督の名前で“○○組”と呼ぶけれど、その責任を背負うだけの覚悟がある監督だけが監督業をやっているわけではないと思うし、立場的にそういう責任とか権利を全部持ったまま「○○組」と呼ばれている監督ばかりではない。それも含めて外からは見えにくいんですよ。だから、やっぱりシステムとして整えなければ。その活動を始めてから映連とかにも提言してますけど、外部にきちんとした第三者機関を作って、ハラスメント相談ができる、映画の現場のスタッフ間ではないところで窓口を作って、きちんとそこが審議する。そういう仕組みを作らなくてはと考えるようになってます。もちろん、自分の現場も含めて。第三者の目や、批判にさらされた時にきちんと答えられるような体制をどうとっていけるかが、問われてくるんだろうなと思います。

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遅れてやってきた日本の#MeTooムーブメント。

立田 “少し時間が経ってからだった”とおっしゃいましたが、ここ数年、映画界におけるパワーハラスメント、そして今年になって特に#MeTooムーブメントが日本でも遅れてやって来たように言われています。メディアでもよく取り上げられるようになりましたが、いまの状況について、改革が行われている過渡期として、肯定的に捉えていらっしゃいますか?

是枝 声を上げること自体はもっと必要だと思うし、その上げた方たちが孤立しないようにサポートする体制が全然足りてないとは思う。声を上げた人が不利益を被らないようにするサポートシステムをどう作っていくかということが大切だなと感じている。たとえば、リスペクトトレーニングというのもやってみたりしています。(『ベイビー・ブローカー』の撮影時に)韓国でもやりましたし、日本の配信ドラマの撮影時にも取り組んだりもしました。インティマシーコーディネーターに現場にも入っていただいて、脚本のチェックなども現在撮影している作品ではやっています。どういう人の視点が入ることで現場はどう良く動くのか、もしくはそうではないのか、ということも含めて検証をしている状況です。ただ、先程の“祭り”の話じゃないけど、その現場だけで形作られた濃密な空間と時間というものを、やっぱり監督と役者とカメラマンなどのスタッフで──プロデューサーもそうかもしれないけども──共有した実感というかさ、財産があるじゃないですか。それを、何かの発言の途中の言葉だけを切り取られて批判されたりすると、すごくこう…‥思い出を傷つけられたような感覚に陥ることも一方であるんだよね。もちろん、当事者だけしか声を上げる権利がないとは思わないけれど、そのあたりが非常に難しいと思っています。

立田 SNS時代の“キャンセルカルチャー”みたいなものが、本質的なものとは別に悪い方向で広がっている傾向もありますよね。

松岡 私自身、経験しましたよ。是枝さんとの仕事は信頼関係があったのに、間違って伝わっているものを目にしましたから。さっきの話に戻っちゃうけど、その言葉だけが切り取られることが怖い。私たちには信頼があったのに。別に気にしなきゃいいことなのかもしれないけど、そうした事実と違うことを言う「声」が大きくなるとびっくりする。リスペクトトレーニングもそうだし、インティマシーコーディネーターは日本でもっと人数も増えなきゃいけないと思うけれど、そういう方々を面倒くさいと思う人もいると思うんです、でも、面倒くさい人なんてどこにでもいるじゃないですか。なので、(インティマシーコーディネターが入ったり、リスペクトトレーニングをすることを)面倒くさいってしちゃうのは違うとは思います。

立田 インティマシーコーディネーターという言葉が出ましたが、これは比較的、新しい職業ですよね、日本の映画界においては。

松岡 日本には、二人しかいないんですって。

立田 是枝監督も松岡さんもインティマシーコーディネーターとはすでにお仕事されていますか?

松岡 私はまだないんです。

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是枝 僕は、この夏に撮っていた映画で現場に入ってもらいました。

立田 インティマシーコーディネーターは、デリケートなシーンの撮影の際などに、監督と役者などの間に入って、撮影を安全に進めるための職業ですが、実際にどのように映画の現場でお仕事をされるんでしょうか?

是枝 いろんなケースがあるとは思いますが、決して裸になるシーンだけをインティマシーシーンと呼ぶわけではない。浅田(智穂)さんというコーディネーターにお願いしたんですけど、感情的に負荷がかかるシーンに関して脚本を読んでいただいて、これはインティマシーシーンにあたりますねっていうことを判断していただいて、その撮影をなるべくスムーズに進めるためにどういうケアをするのか、時間帯を他の撮影とずらしましょうとか、セットをクローズドにしましょう、みたいなことを相談しあえる。僕はとても話しやすかった。ご存知の方がどのくらいおられるかわからないけども、SNSで『万引き家族』の現場でいわゆるハラスメントがあったのではないかというようなことが言われたケースに関しても、脚本を──もう5年前のことですが──見てもらって、このシーンはどういうのがベストだと思いますかって話を聞いたの。

松岡 いまになってですか?

是枝 今回の撮影でです。今回の作品がほぼ『万引き家族』のスタッフだったというのもあるんだけど。それで、今だったら、たとえば松岡さんの池松くんとのシーン。これはどういう形で撮ってますかと質問された。「撮影時間は夜遅くに設定して、なるべく人が周りにいないようにはして撮っています」と言ったら、「できればセットを分けたほうが良い、と私がこの現場に入っていたらそういうアドバイスをします」と。

松岡 二人きりのところはセットじゃないですか。

是枝 セット、セット。

松岡 そうじゃなくて、あの見学店ごとセットにするということ?

是枝 見学店のシーンはロケだからね。

松岡 家のセットと別のセットにするということですか?

是枝 そう。同じスタジオ内に2つセットがあったわけだけけど、別セットを組むためのスタジオをもうひとつ準備しなくちゃいけなくなるじゃない? 予算に直結する話だから、なかなか難しいんだけどね。でも、(同じスタジオ内のセットでも)時間を切り分けてなるべく家の内部の撮影が終わった後にしたことは、評価をしてもらえたけれども。

松岡 そうでした。

是枝 裸のシーンでなく、膝枕のシーンだったけども、それでもスタジオは分けたほうがいいんじゃないかっていうアドバイスでした。そういう話を聞くだけでも、自分が次の現場に臨んだ時に、じゃあここはどうなんだろうか、ここはどうしたらいいかとか、女優さんがどこで負荷を感じるのかみたいなことは、多分いままで僕が感じていたものとは、また違うことを感じられる。なので、調整役で入ってもらうというのは必要だと思った。

松岡 話しにくいことがお互いありますもんね。

是枝 多分信頼関係があっても、おそらく直に僕に言いにくいことが……出てくるかもしれない。その時にいてくれたほうがお互いに助かるのかもしれない。せっかく築いた信頼関係を崩さずに済むという助けはあるように思えた。そういう学びをしました。

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女性監督という言葉は存在し続けるのか?

立田 今日は東京国際映画祭での開催ということで、ちょっと国際的な映画界についてもご意見をお伺いしたいと思います。女性監督が年々増えてきてるとは言われていますけれども、2021年のカンヌ映画祭ではフランス人女性監督のジュリア・デュクルノーが『TITANE/チタン』で最高賞のパルムドールを受賞し、ヴェネツィア(映画祭)ではオードレイ・ディヴァン監督の『あのこと』が最高賞の金獅子賞をしました。このように、国際映画祭のトップの賞を女性監督が受賞するようになっています。是枝監督も国際映画祭にたくさん行かれてますし、そういう場で、その女性監督たちの活躍、そして日本における女性監督たちがどのようになってらっしゃるのか、その辺はどんな風にご覧になっているか、ぜひご意見をうかがいたいです。

是枝 まだまだ相対的には少ないと思うね。監督の割合自体も少ないし、アメリカのアカデミー賞もね、女性監督が獲ったけど、獲ったのが女性であるということが特別視されるニュースにならないような時代がきてほしいですよね。それがニュースになるってことは、多分そこにある種の偏見があるような気がしますけど。女性の監督とか、性別で……いま聞かれて答えにくいなと思ったんです。あんまり性別で捉えたことが正直言うとない。ただ、それがないということは、僕がそこに意識的でないからなのであって、もっと意識的になるべきなのかもしれないけれども、実際あまりないんだよね。で、自分が立ち上げた分福という制作者集団があるんだけども、本当に面接して優秀な人を3年ごとに何人かずつ入れていたら、8割女性になっちゃったんです。あまりそこで性別を意識して現場というものを考えていないというのが実情で、それが良いのか悪いのかちょっと正直いま、わかんないな。

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松岡 人間を見て採用されたということですよね?

是枝 そうなの。たまたまなんです。でも、たまたまなんですって言うことが、いまは良いのか悪いのかと言ったら、わからない(笑)。女性監督だからって、何か特別な思いはありますか?

松岡 悲しいけど、女性監督に対してキツいな、って思うスタッフさんはたまにいますよ。それ、(相手が)男の監督だったら言わないよねってことを言う。もしかしたらそのスタッフさんにとって、若い人にはこうするべきって思っているだけで、男女で分けてなかったのかもしれないけど、それ(相手が)男の人だったら言ったかな?っていうようなことを言う現場を見たことはある。でも、演出を受けている側として、男性監督と女性監督との変わりはないです。

是枝 そうだよね。

松岡 すごく難しいですね。確かにおっしゃる通り、女性だからどうこうっていうのが間違ってるって思ってきたんだけど……でも……。

是枝 最近では “女性らしい細やかで繊細な……”みたいな表現がされなくなってきたけど。でも、まだ出てくるよね、そういう言葉って作品を評する時には。

立田 女性監督ならではの“細やかで優しい”という表現とは異なりますが、たとえば『TITANE/チタン』などは、むしろすごくアグレッシブだし、強くパワフルだから、逆に“女性ならではの強さ”という表現もあるかなと思うんですよね。

松岡 男女の区別ということでいえば、難しいのが、(女優が)“センシティブなシーンだけど、女性監督だからリラックスして演じられた”みたいなこともあり得るわけじゃないですか。でもそれって女性と男性を区別してるじゃないですか。どう思います?

是枝 この性別に関していうと、本当にちょっと答えがないんだけど。(総演出家として関わっていた)ドラマの時に、インティマシーシーンに関してはクローズドセットにしたり、事前に説明して、どう(俳優の)許可を取るか……みたいなことを一生懸命やっているつもり。なんだけど、銭湯でお風呂に入るシーンがあった。裸を見せるわけじゃない。湯船に浸かっているから、肩のあたりまで見えます、という。

松岡 下はしっかり何か着てね。あれは裸でいるわけではないですからね。

是枝 そうそう。事前にこういうようにしますって説明する。で、担当ディレクターは女性だったんだけど、カメラマンと照明は男性だったんですよ。全部準備を整えて、本番は男性スタッフは全部出て、モニター1台だけにして、そこでのチェックだけにするっていうことを試みとしてしたんだけど、これが常識になっていくべきと思ってやっていたけど、やっぱり性別で分けていいのか……なぜそこに女性はいてよく、男性だから出なければいけないのかって。僕は、立場的には「出て下さい」と言った側なんだけどね。カメラマンとしては、本来、撮影の責任者だからそこにいなければいけないのに、男性だからということで現場にいられない。カメラマンがそう言ったわけじゃないですよ。男性スタッフたちは、「わかりました」と言って出てくれるんだけども、そこで性別で線を引くことが本当に正しいのかというのは、まだちょっと疑問なのね。

松岡 男性が現場から出ても、(女優が)この人に見られてるのは違和感があるって人がもしかしたら女性の中にもいるかもしれないですしね。

是枝 まだ自分の中でそれは、こうだからこうですっていうことがなかなか説明ができなくて。そんなに単純なことじゃないなと思ってはいます。

松岡 男女だけの問題じゃないですね。

立田 これから議論が色々出てくる、しかも現場でもいろいろ話し合われるべきテーマかと思います。

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松岡茉優のコメントする力。

是枝 そうですね。たぶんそうだと思います。(松岡に向かって)何か質問があったんじゃないの?

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松岡 私は、折に触れて、ちょこちょこ聞きたかったことを紛れ込ませられるタイプなんですよ。

是枝 さすがです。昔からそうだよね。最初、オーディションで会ったの十年ぐらい前だもんね。

松岡 落ちたの(オーディションの)ですね。

是枝 そうそう。その役にはまらなかったのだけれど、その時のオーディションでのトーク力が群を抜いていて、そこから注目したわけですよ、落としたのに。で、色んな作品に出てるのを見ながら……すごい、また成長したって。

松岡 『万引き家族』の時も、私は役に合っていないから落ちたと思っていました。だから(オーディションの時も)私、「今回はご縁がないと思いますけど失礼します」って言いましたもの。

是枝 役に合っていないんだけど、呼んでおこうと思ったわけ、やっぱり。会ったらさ、このタイミングでやっぱり撮ろうと思ったんだよね。

立田 今後の日本の映画界について最後にお聞きします。是枝監督は、深田監督や西川美和監督と一緒に「日本版CNC設立を求める会」(通称:action4cinema)を創設され、日本映画界を変えていこうとご尽力されてますね。これからどのように変化していくと良いとお考えでしょうか。

是枝 働き方改革は待ったなしなので、そこはいろんな意味で進んでいくと思うんですけど、進んでいったが故に、作られなくなってしまう映画とかが出てくる。ただ、手付かずで放っておいたら、たぶんもう十年日本の映画界は続かないだろうと思っている。続かないんじゃないかという危機感を持った監督たちが集まって提言している。それはやっぱりミニシアターをこのままにしておいたらもっとなくなってしまって、ミニシアター文化が多分なくなるだろうと思いますし、若手の人材が足りてないというのは、どの現場でも言われていて、若い人たちをどうちゃんと育てていけるかということにも、時間とお金をかけなければいけない。もう本当にギリギリですね、いまやらなければ(日本の映画界は)多分このまま縮小していってしまうな、と。で、配信の波に飲み込まれていくだろう、と。その危機感と課題と未来像みたいなものを、できるだけ広く、監督だけではなくてプロデューサーやスタッフ、役者の方たちとも共有して、意識を高めていくという活動をやります。いま、やってますし、来年以降もやっていきます。

立田 ありがとうございます。松岡さんはいかがですか。

松岡 このお話をいただいてから、女性スタッフさんに話を聞かなきゃいけないと思って。良くも悪くも、まあ悪くも悪くも、女優って、現場ではすぐに椅子を用意してもらえたり、寒いですかって常に聞いてもらえたり、手厚い対応していただけるんですね。だから、女性スタッフさんに話しを聞きたかった。特に男性が多いと私が認識している部署にいる女性スタッフさんにお話を聞いたんですけど、やっぱり、先ほどもお話したけど、朝5時くらいに出発して、(午後)11時に終わればいいほう、なんていう現場が多々ある。そんな中で、女性が自分の今後を考えた時に、子どもを考えたい、でも育休制度がないことが多いし、育児で休んでる間にお金がもらえる制度もないから、(仕事か子どもを持つか)どっちかしか選べない。これは、映画界だけじゃなくて社会全体の話だけど、どうしても子どもを育てる舵取りを女性が担うことがまだまだ多いから、話を聞いた女性は、「いずれは家庭を持ちたいけど、同時にバリバリ仕事がしたいが叶わない、どっちかになってしまう」と。ある人は、助っ人として関わるとかショートフィルムだけ、CMだけじゃなくてフルの現場のスタッフとしてやりたいけど、できるかどうか。お付き合いしている人と結婚したい、家庭を持ちたいってなった時に、現場に居続けられるかがわからない。不安だし悔しいと言っていました。ギャランティや拘束時間や期間のことも含めて、女性男性問わずお子さんを持った人が休めて、休んでいる間にもお金がいただけて、子どもが少し大きくなったら、預けられる場所がある。撮影って、朝焼けのシーンは午前2時から準備して、午前4時ぐらいに撮り始めたりする。その時に預かってくれる場所がないと、育てながら働くことはできない。だから、スタッフさんも俳優も、子どもを持った時、育てながら働ける環境作りをしていかないといけないから、それはどうやったらできるのか、一生懸命考えたいと思います。

立田 ありがとうございます。では、最後に、ご来場のみなさんにご挨拶をお願いできればと思います。

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いろんな意見があっていい。したいのは喧嘩じゃなくて「対話」

松岡 本当に来ていただいてありがとうございました。私の話は、いち俳優としての意見で、違う考え方の人もいると思うので、記者の方が書いてくださった文を読んで、それは全然違うと思う同業者の人もいると思います。だから皆さんが受け取ってくださったのも、それはどうかなって思うこともあったと思うんですけど。でも、人にできることは話し合いだと思います。喧嘩じゃなくて、話し合える映画界であってほしいと思うし、この記事を読んだ方々が、「それ、おかしいだろう?」じゃなくて、「それってどういうこと?」って、お互いに耳を傾けられる世界でありたい、自分もそうでありたい。誰かが自分にとって驚くようなことを言っても、なんでそう言ったのかを話し合い、それを知りたいと思います。だから今日は皆さんは聞いてもらう一方でしたが、皆さんのお話も聞ける機会があったらいいなと思います。今度一緒に話し合いをしてください。1時間もありがとうございました。

是枝 映画の作品から離れた話が多かったので皆さんがおもしろかったって言っていただけるのかわからないところがあるんですけど。今日、橋本愛さんと話をして、で、松岡さんと話して、若い役者の方たちが自分の考えをきちんと表に出し、違和感も含めて話せるようになってきたことはとても素晴らしいことだなと思いました。本当に、僕ぐらいの世代までの女優さんとかって、そういうことを口にすることすら憚られると思われる状況が長く続いていたから、それだけでもとても勇気がある。

松岡 でも今もこんな感じ。(物陰に隠れるような素ぶりで)「いいですか?」って感じですよ。

是枝 頑張れ。

松岡 頑張る!

是枝 そういうことをぜひ応援していただいて、映画を愛するが故にやむを得ずやっていることだったりもするから、きっと。僕も「映画監督なんだから自分の映画だけ撮ってろよ」っていう声が色んなところから降ってくるんですけど、(映画も)撮ってるわ〜と思っています(笑)。

松岡 私もです。

是枝 もらったものを少しでも恩返ししたいなという気持ちも芽生えてきているので、自然と。頑張ってやってきますので、ぜひ、映画を観て下さい。映画を観に見に来ていただけることがいちばんの応援だと思います。ぜひこれからも映画を応援してください。今日はありがとうございました。

ケリング・グループ
ウーマン・イン・モーション
www.kering.com/jp/group/kering-for-women/women-in-motion/

text: Atsuko Tatsuta

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